51話 呼び出し
「はあ……行きたくねえ」
デスティニーでラヴリュス先輩らしき人とマッチングしかけた翌日。
オレは聖国軍内にある第6師団の待機施設へとやってきていた。
第6師団はエルフ族7割、残りがハーフエルフと人間族で構成されている魔法部隊だ。
衛生部隊以外では珍しく女性隊員が多く所属しており、師団長のラヴリュス先輩も二人しかいない女性師団長の内の一人である。
軍が8つの師団として編成される前は『魔術戦闘隊』という名前で活動しており、亜人族中心の部隊ではあるが軍の中でも古株として一目置かれている。
コンコン。
「ラヴリュス先輩、ルイソンです」
「入れ」
「失礼します」
ガチャリ。
…………。
き、気まじぃ~……
これ絶対マッチングの件だもんなあ。
「久しぶりですねルイソンさん。最近はどうですか? 第8師団のほうは」
「ま、まあなんとかやってます。また勉強会、参加させてください」
「ええ、いつでもお待ちしていますよ」
…………。
「ところで、こちらの『ルイ』という人狼族のお方についてなのですが」
「すいませんでしたァッ!!」
ラヴリュス先輩が見慣れたマッチング魔道具を取り出してオレのプロフィール画面を見せてきた瞬間、オレはジャンピング土下座で謝罪した。
このスピードこそオレが『瞬撃の鎧騎士』と言われる所以……って、それはさすがに情けなさ過ぎる。
「やはり、あなたがルイさんだったのですね」
「ということは、ラヴさんは……」
「拙者です」
…………。
「いや、あのー……オレはですね、ラヴリュス先輩がマッチング魔道具やってるのを知られるのは嫌だろうなあと思って、お互い見なかったことにした方が良いだろってことでマッチングを拒否したのであってですね」
「黙れ」
「はい」
これが齢ウン百年の貫禄。
見た目はおしとやかなお姉さんって感じなんだけどな……
「まさかルイソンさんもデスティニーを利用しているとは思いませんでした」
「あの……なんでルイがオレだと分かったんですか? 結構カモフラージュしてたと思うんですけど」
「この横顔と毛色には見覚えがありましたから。後はまあ、こちらからスタンプを送ったら即拒否されたのでそこで確信しました」
やはり許可するのが正解だったか……でもそこでメッセージのやり取りして変な感じになっちゃっても嫌だしなあ。
「まったく酷いものです。それなりに容姿には自信があったのですけど」
「いやラヴリュス先輩はお綺麗だと思いますよ。ウチの団員からも評判良いです」
エルフ族自体が容姿の整った人が多いので、第6師団の女の子は年齢関係なく聖国軍の男どもからチヤホヤされていたりする。
実際、ラヴリュス先輩も聖国軍内の一部の団員に熱狂的なファンがいるらしい。
「貴様のところの副団長と拙者、どっちが男性人気高いと思います?」
「えっウチの副団長? ハルバードのことですか? アイツ男ですよ?」
「好きになるのに性別は関係ありませんから」
第8師団の副団長である、ハーフエルフのハルバード。
中性的で可愛らしい見た目も相まって、服装によってはほぼ女子に見えるレベルではある。
ハルバードもハルバードで軍の中に熱狂的なファンがいるらしい。
大丈夫か聖国軍……あ、でも帝国軍もメリアスみたいなヤツがいるから一緒か。
「まあ、たしかにアイツも謎に人気ありますよね……一緒に遊んでるとただの生意気なガキなんですけど」
「それではルイソンさん、拙者ともデートに行きましょう」
「分かりました、ラヴリュス先輩とデートに……」
…………。
「えっ? オ、オレとデートですか?」
「デスティニーをやっているということは、ルイソンさんも女に飢えているのでしょう?」
「いやその言い方ちょっとどうにかなりませんか。出会いを求めてたとか」
それだとラヴリュス先輩も男に飢えてるってことになるんだが。
「出会いを求めるもの同士、仕事のことは忘れて1日遊んでみませんか」
「まあ、オレは別に良いですけど……」
「ふふ。楽しみですね、聖国軍お忍び幹部デート」
「その言い方はなんかやましいのでやめてください」
というわけで、何故かラヴリュス先輩とデートすることになってしまった。
———— ――――
面白かったら★とリアクションをいただけると執筆の励みになります!
———— ――――




