50話 何やってんすか先輩
「うーん……どうしたもんかなこれは」
こんにちは、ルイソンです。
オレには今、ちょっとばかし悩みがあります。
「いやでもこれ、多分本人だよなあ……」
マッチング魔道具『デスティニー』をなんとなしに触っていると『マッチング地域指定機能』というものを発見したので、試しにサンブレイヴ聖国内を指定し、多分人間族とはマッチングしても向こうから拒否られる可能性があるので亜人族に限定して絞り込み検索を行ったところ、とあるエルフ族の女性とマッチしました。
『拙者はラヴ! 聖国軍所属のエルフです! 管理職やってます! 一緒にいて安心できるような男性募集中です! 年収、年齢の条件ありません! よろしくお願い申し上げる!』
「よろしくお願い申し上げるってなんだよ」
プロフィールにはマスクをした金髪センター分けの女性の写真が載せられていた。
エルフ族を自称している通り、特徴的な細長い耳も髪の間から見えている。
そして左目の下には個人的に見覚えのある泣きぼくろ。
「聖国軍のエルフで管理職……古風な一人称に目元の泣きぼくろと真ん中分けの髪型……これって、ラヴリュス先輩だよなあ……」
サンブレイヴ聖国軍、第6師団長・ラヴリュス。
聖国軍にある8つの師団の中で、亜人族が率いる特殊戦闘部隊が3つある。
オレが所属する第8師団、ケンタウロス族のカッシートが率いる第7師団、そしてエルフ族の魔法部隊で構成される第6師団だ。
ラヴリュス先輩は、この第6師団の師団長を任されているエルフ族の女性で、『聖愛の大賢者』の異名を持つ大魔法使いとしても知られている。
「あの人、今何才だ……? サンブレイヴ聖国が出来る前からこの辺りに住んでたとか聞いたことあるぞ」
人間族よりも遥かに長い寿命を持つエルフ族は発達した魔法技術を持っており、魔法戦においては多くの魔人族で構成される帝国軍が有利と言われる中、このラヴリュス先輩率いる第6師団の活躍により押されることなく善戦できている。
オレよりもずっと昔から師団長の任務を任されてきた先輩として、たまに師団運用の心得などを教えてもらったりしている。
「しかし、さすがエルフだな。見た目だけで言ったら人間族の20代半ばの女性くらいに見える」
亜人族は食物からの栄養と魔力を両方エネルギーに変えることが出来る、人間族と魔人族のハイブリッドのような食性なのだが、エルフ族は魔力の割合を高く摂取することで見た目がほとんど変化しなくなるという。
中には1000才超えで子供のような見た目をしている、いわゆるロリババアエルフもいるんだとか。
一体どういった方々に需要があるんですかね……
「いやあ、でもどうすっかなこれ……さすがに気付かなかったフリをするのが正解か?」
オレのほうは一応名前や出身、職業なんかを諸々誤魔化してるし、向こうからバレるってことは無いと……
ピロンッ♪
『ラヴさんからマッチング承認のスタンプが送信されました』
「…………」
え、なんで……もしかして、この絞り込みやったら向こうにも検索した情報がいくってことか……?
「いやでも、オレの正体はバレてないだろさすがに……いやどうかなあ」
マジでオレだって分かってて送ってきてるんだとしたらマッチング拒否するのが怖すぎる。
口止めで亡き者にされるかもしれん。
「とはいえメッセージのやり取りすんのも何かボロが出そうで怖いなあ……」
よし、向こうからはバレてないという予想に賭けよう。
ていうかあれだな、自分からスタンプ拒否すんの初めてかも……なんか緊張するな。
「よし……マッチング、拒否!」
『ラヴさんからのマッチング承認を拒否しました』
「ふう……ひと仕事終えた気分だぜ」
ティロ~ンッ♪
「……えっ?」
デスティニーでラヴリュス先輩(仮)からのマッチングを拒否した瞬間、聖国軍で使っている通信魔道具のほうにメッセージ受信の通知が。
いやまさか、そんなことないよな……
『ルイソンさん、話があります。明日出勤したら第6師団長室に来い』
「…………」
あっやべ、完全にプレミでしたわ。
———— ――――
面白かったら★とリアクションをいただけると執筆の励みになります!
———— ――――




