48話 ほらこれだよ
「え~ルーナちゃんじゃなくてルイソンくんがシュークリーム~? 相変わらずのお子様舌なんだから~」
「ほらこれだよ」
結局あの後、ルーナの参加していたお見合いパーティーの終了予定時間まで酒場で時間をつぶしていた。
そろそろ終わったはずだということで、店を後にしてヘルゲイト駅に向かって二人で歩いていたところを前回会った竜人族の護衛に見つかり、ルーナは勝ち誇った顔で屋敷に帰っていった。
親に怒られないといいんだが……と思っていたら、護衛の人に『さすがですルーナ様』とか言われてたので多分問題なさそうだ。
お見合いパーティーから逃げきって褒められるのか……やっぱ変だな、ルーナの家。
「それにしてもルイソンくん、いつの間にかエビルムーン帝国のアイドルとも親密なご関係ですか~。これはもう聖国軍とか関係なく敵認定されちゃったね~。帝国のアイドルオタクくんたちから」
「いや、2人で会ったときはメリアスも変装してるし大丈夫だろ……」
「変装なんてすぐに見破られるのが定石だよ。目元を隠してたって、探偵界隈のファンが本気出せば顎のラインとか鼻の形とかで特定されちゃうんだよ~?」
「恐ろしいな探偵界隈」
てか探偵界隈ってなんだよ。
本業じゃないならストーカーなんじゃないのかそれは。
「ハチェットちゃ~ん! エールおかわり~!」
「は~いっ! ルイソンくん、本当に気を付けてよね? エビルムーン帝国で捕まって正体ばれたりしたら大変なんだから」
「ああ、分かってるよ」
バータイムの喫茶ハロゥで、忙しなくお客の相手をするハチェット。
いつもならこの時間はマスターだけで営業しているのだが、今日は常連会社の二次会の予約が入って人手がいるため、昼の喫茶店営業を終えた娘のハチェットもヘルプで入っている。
まあハチェットは普段から営業後はここで酒飲んでくだ巻いてるし、そのままマスターの仕事も手伝ってるから忙しくも楽しそうではある。
「ハチェットちゃん、良いよな~」
「喫茶ハロゥ……スラムのオアシスに咲く、一輪の花って感じだよな」
「…………」
ダメだ、笑うなオレ……お客さんからしたら元気で愛想の良い看板娘なんだから、そういう評価にもなるだろ……
「エールのおかわりお持ちしました~! ……ルイソンくん、なに笑ってんの?」
「笑ってないが?」
ウェイトレスをやりながらもちょいちょい一人で飲んでるオレに構いに来てくれる。
まあ構いに来てるというか、ちょっかいかけたいだけだと思うがな。
「な、なあルイソン、ちょっと話聞いてくれよ」
「ん、どうしたんだ?」
カウンターの端でちびちびとブランデー……をかけたアイスクリームを食べるオレに人間族の男性が二人話しかけてきた。
こいつらはスラムで活動する、とあるマフィアが経営する会社の若手連中だ。
さっきからハチェットが忙しくしている理由でもある。
アンダーグラウンド御用達の喫茶ハロゥ。二次会のご利用にも是非どうぞ。
「おいやめとけって、ソイツに聞いたらもう負け戦だぞ」
「うるせえ、ここはもう背水の陣ってやつだ。コイツに頼るしか勝ち目はねえんだ」
「なんなんだ一体……」
この男性二人は最近喫茶ハロゥでよく見かけるようになった顔見知りだ。
普段は昼のランチタイムに来て飯を食っている。
まあ、なんとなく目的は昼食だけではなさそうだったが。
「……来週、ハチェットちゃんの誕生日があるだろ?」
「ん、ああ……そういえばそうだったな」
何が欲しいか聞いたらお茶会用のケーキスタンドとか言ってた気がする。
さすがにあれはネタだと思いたい……安いのなら全然買えるが、この店の食器って結構アンティークもので揃えてて金かかってんだよなあ。
「俺、ハチェットちゃんの誕生日に彼女を食事に誘おうと思ってんだよ……そこで、告白するんだ」
「おおマジか。健闘を祈るぜ」
こいつ、やっぱハチェットのこと狙ってたのか。
いつも食事の度に店の中でも高い紅茶頼んでたし、その割には紅茶の銘柄とかはあまり詳しくなさそうだったからな……
「ルイソン、あんたハチェットちゃんの昔からの知り合いなんだろ? 彼女が喜びそうな店とかプレゼント、教えてくれないか?」
「だからやめとけって、ルイソンに頼ったら……」
「ハチェットなら美味い酒でもあげりゃあご機嫌になるだろ。オレは大体いつもそんな感じだぞ」
「…………」
「ほら、ルイソンじゃあ参考にならねえよ」
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