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46話 12才の逃避行



「お見合いって……ルーナ、お前まだ12才になったばかりだろ? さすがにまだ3、4年は早くねえか?」



「ルイもそう思うだろう? やはりルイは吾輩の味方なのだ」



 お見合いパーティーの会場から一人で抜け出してきたというルーナ。

エビルムーン帝国の貴族事情はよく分からないが、サンブレイヴ聖国では貴族令嬢がお見合いパーティーなどを含む舞踏会にデビューするのは15才になってからだ。

子供の頃でも生誕祭やホームパーティーに参加することはあっても、15才の成人を迎えるまでは実質的に『お見合い』という意味合いを含む舞踏会には参加させてはならないとされている。



「お見合いとか結婚とか、そういうのは吾輩にはよく分からないのだ」



「まあ、オレと漫喫行ってカップルシートで何も気にせず爆睡してる内は分からんだろうよ」



 ルーナはどう見ても子供だ。

12才にしてはだいぶ聡明で肝が据わっているところもあるが、恋愛だってよく分かっていないし、結婚ならなおさらだろう。

勿論、貴族の娘なら結婚するというのは恋愛以外の目的があることも教えられるのだろうが……

それでも政略結婚なんてこのご時世、だいぶ少なくなってきてるぞ。



「12才の誕生日に家を追い出されたり、お見合いパーティーに参加させられたり……ルーナの家はちょっと変わってんだな。あ、別にバカにしてるわけじゃないからな」



「大丈夫なのだ。吾輩の家は普通におかしいのだ」



「いや自分でおかしいとか言うなって」



 もしかして今までにもそういう変なしきたりとかやらされてきたんだろうか。

自分のこと吾輩とか言う女の子も珍しいしな。



「それで、ルーナはこれからどうしたいんだ?」



「お見合いパーティーが終わる時間まで、ルイと一緒にいても良いのだ?」



「ああ、オレは構わないぜ」



 メリアスと別れてからアニスター共和国あたりで飲み直す予定だったし、話し相手がいるならここでも良いだろう。

といっても、エビルムーン帝国の貴族令嬢と何を話せば良いんだ……? 流行りとか分かんねえしなあ。



「ルーナって、家だとどんな料理食ってんだ?」



 いや話題の引き出ししょぼすぎるだろオレ。

天気デッキと食べ物デッキで子供の相手は務まらないぞ。



「吾輩の食事か? そうだなあ……ブタを焼いてな、外のパリパリのところだけ食べるのだ」



「中身はどうするんだ?」



「ポチの餌なのだ。あ、ポチっていうのは吾輩の家で飼ってるペットのケルベロスでな」



「…………」



 ケルベロスって帝国軍でも使役されてるあの頭が3つあるくそデカい狂犬だよな……

あいつ苦手なんだよなあ……オレ人狼族だし、噛まれたらなんかヤバい病気になって死ぬ気がする。

てかポチの餌贅沢すぎるだろ。ブタの丸焼き食ってんの?



「そうか、魔人族は魔力だけ吸収出来ればいいから、食材の栄養とかは気にしてないんだな……」



「もぐもぐ……む? 何か言ったのだ?」



「いや、なんでもないよ」



 オレのような亜人族や人間族は食材から栄養を摂取して糧とするが、魔人族は食材に含まれる魔力をエネルギーとして吸収する。

魔力には糖質やたんぱく質のような栄養素の違いは無いので、食事のバランスなどは気にしなくても問題が無いという訳だ。

まあオレも亜人族だから正確には栄養素半分、魔力半分みたいな感じで体内の代謝吸収を行なっており、人間族よりは栄養の偏りに気を付けなくても大丈夫ではあるのだが。



「ルイはいつもなに食べてるのだ?」



「オレか? オレはまあ、こういう酒のアテになるようなのを食ってるな……人狼族だから野菜も食えるが、まあ肉が好きだな」



「お酒うまいか? 吾輩も飲んでみたいのだ」



「ルーナにはまだ早いよ」



 酒には魔力が多く含まれていて、魔人族は好んで飲むと聞く。

サンブレイヴ聖国やアニスター共和国と違って15才から酒を飲むことが出来るエビルムーン帝国だが、ルーナはまだ12才だ。

最短でもあと3年は酒を飲むことが出来ない。



「お前が15才の誕生日を迎えたら、是非とも一緒に酒を飲みかわしたいね」



「それは本当なのだ!? ルイ、約束だぞ!」



「お、おう……」



 半分冗談で言ったのだが、どうやらこのお嬢さんはオレと3年経っても仲良くしてくれるらしい。

随分と懐いてくれたもんだな。



「それじゃあ、このポップコーンシュリンプに誓って約束しよう」



「我らシュリンプ同盟なのだ!」



「エビってるじゃねえか」



 3年後までに、エビルムーン帝国と和平が結ばれてることを祈っておこう。




————  ――――


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