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44話 立場逆転



「すみませんでしたぁっ……!!」



「いや、あの……とりあえず土下座はやめてくれ」



 カーミラと飲んだ翌週。

オレは再びメリーちゃんこと、帝国軍十三邪将『偶像のメリアス』と会っていた。

しかし今回は前の時と違い、オレは食事を奢ったりお小遣いをあげたりはしていない。

なんとメリアスの方から『お金払うので会ってください本当ですお願いします』と懇願されて、まあ、それなら……ということで、前回来たエビルムーン帝国のレストランで会うことになったのだが……



「ま、まさかルイ様が十三邪将とお知り合い……というか『鮮血のカーミラ』様と深い仲のお方だったとはつゆ知らず、無礼をはたらいてしまいましたぁっ……!!」



「もういいから、オレ別に怒ってないし迷惑だとも思ってないから」



「こ、こちら前回のお食事の際に立て替えいただいた代金になります……! ご査収くださいませぇっ……!!」



「だからもういいって! 金も払わなくていいから! 財布仕舞え!」



 この間の接待スタイルというか、アイドル営業ぶりとは打って変わってとにかく下手に出るメリアス。

なんだろう、普段は帝国軍内でクレーム対応でも担当しているんだろうか。



「なんともったいないお言葉! さすがカーミラ様のご愛人を務めるルイ様でございます……!」



「務めてねえよ。あと様付けもしなくていいから。てか君も十三邪将なんだろ? なんでカーミラに様付けしてんだよ」



「カーミラ様は十三邪将としての在任歴があたしのような新人とはケタ違いに長く、実力も一、二を争うカリスマ的存在なのです」



「あいつ、そんな強かったのか……」



 そういえば昔、聖国軍の将軍であるインロック義父さんからもそんな話を聞いた気がするな……

たしか『ルイソンよ、カーミラの相手はお前にしか任せられない』とか言われた。

てっきり夜間の戦闘が得意な人狼族だからって理由かと思ってたが、あれはオレの実力を見込んでの事だったんだな。



「それにカーミラ様のあの美しい御身体! 齢200を超えて、染みひとつなくパールのように輝く白い肌、全女性が羨む小柄な体躯、ビスクドールのような整ったお顔……すべてが完成されつくしているのですっ……!!」



「ただの熱狂的なファンじゃねえか」



 ファンというか、女性として憧れているという感じだろうか。

とにかく、メリアスがカーミラのことを敬愛しているというのはよく分かった。



「いやもう本当にすいませんでした。まさかルイさんがカーミラ様の男だったとは。あ、このことは誰にも言いませんのでご安心ください。もちろん鮮血教の方々にも秘密にいたします」



「せ、鮮血教……?」



「カーミラ様の非公式ファンクラブです。勿論あたしも入ってます。ルイさんもどうですかっ?」



「いや、遠慮しとく……」



 カーミラお前、自分の知らない所でアイドルにされてんぞ。



「というか、オレはマジでカーミラの愛人とかそういうのじゃないからな。ただの飲み友達だ」



「十三邪将でもないのに、あのカーミラ様と対等に接することが出来る人狼族の男性……やはりやることはやっていると推測されます」



「推測されねえよ」



 とりあえずこいつが清楚系アイドルではないことは理解した。

てかあれだな、カーミラはプライベートでメリアスとあまり関わりがないとか言ってたけど。こりゃあメリアス側がカーミラを神聖視しすぎて上手く絡みにいけてないだけだな。



「そ、それでですねルイさん。実はひとつお願いがありまして……」



「お願い?」



「ルイさんはカーミラ様とよく二人でお遊びになられているのですよね?」



「まあ頻繁にってわけじゃないが、たまにな。遊ぶっつっても大体飯食って酒飲んで解散だが」



 なんだ? もしかしてメリアスも一緒に遊びたいとかだろうか。

二人きりだと緊張するからオレも入れて……みたいな。



「ルイさんがカーミラ様と会ったときにこう、うまいこと言いくるめてちょっと煽情的なポーズの写真を撮っていただいて、それをあたしが言い値で買い取るという契約を結んでいただけませんか?」



「結んでいただけねえよ」



 その後も色々と交渉され、とりあえずメリアスとはお互いにカーミラと会ったときのオフショット的なものや話を情報交換するということで落としどころをつけた。

帝国内で熱狂的なファンを持つアイドルの裏側は、別のアイドル(?)の熱狂的なファンか……偶像のメリアス、意外と面白いやつかもしれない。



「あ、もしカーミラ様の裸体を激写した際には高値で買い取らせていただ」



「いただかねえよ」



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