42話 対等な関係
「うーん、どうしたものか……」
メリアスと食事をして以降、彼女からデートのお誘いメッセージが無限に届くようになった。
ちなみにこれ、デートとは言ってるけど金は全部こっち持ちだからな……実質営業だ。
「浮かない顔だな。ルイよ、なにか悩み事か?」
「ん、まあちょっとな」
隣に座るカーミラから覗き込まれたのでさりげなくデスティニーの画面を隠す。
今日はアニスター共和国の観光都市セブニングにある酒場でカーミラと飲んでいる。
ここはオレとカーミラが初めてデートした日に行ったところだ。
あの時のカーミラはまだ猫を被っていたというか、少し荒っぽい素の性格を隠して接していたんだよな。
「ははっ……」
「なんだ、浮かない顔をしたと思えば今度は思い出し笑いなぞしおって」
「いや、そういえば最初に会った頃のカーミラって自分の事『私』って呼んで口調も敬語だったのに、今じゃあ『我』だもんなあと思って」
「最初から今みたいにくだけた感じでいくほど図太い神経しとらんわ。それよりほれ、少し頭を下げるのだルイ」
「ん? わかった……なんだ、頭に埃でも付いて」
チュッ。
「って、おい! いきなりなにすんだ!?」
頭を下げてカーミラに顔を近づけた瞬間、口に柔らかな感触とチョコのような甘みが広がる。
「ん~ふふ。チョコレートリキュールだよ」
「いやあんたの飲んでる酒については聞いてねえよ」
どうやらカーミラはそこそこに酔っぱらっているらしい。
こいつ、前にストーカーヴァンパイアのガルリックと縁を切るために一芝居打ってからだいぶスキンシップが過剰になってきた気がするな。
あの場ではパートナーとして振舞ったけど、現実のオレたちは特になにか進展しているわけでもなく、普通……より若干仲の良い飲み友達だ。
いやまあ、カーミラが知らないとはいえ敵国の幹部同士で仲良くしてるのは普通ではないのだが。
「最近はどうなんだ? ガルリックからちょっかいかけられてないか?」
「あれから何もないな。ルイが厳しめに対応してくれたのと、やはり十三邪将の名を出したのが効いたのだろう」
カーミラにお熱だったガルリックは、エビルムーン帝国に住むヴァンパイア族の中でも名の知れた貴族。
その家の権力を使って色々してきていたのだが、カーミラのことを『帝国軍十三邪将の鮮血のカーミラの知り合いのミラさん』という設定にしたことでさすがに手出しが出来なくなったようだ。
「というか、別に自分が鮮血のカーミラだってバラしても良かったんじゃねえか?」
「帝国軍の幹部がマッチング魔道具なんぞ使ってると思われたくないだろう」
まあそれはそう。オレも一部の人以外には隠してるし。
「それにデスティニーにいる『ミラ』が『鮮血のカーミラ』だと知れたら、熱狂的なファンなどからマッチング希望が大量に送られて、ルイみたいにちゃんと我を見て会ってくれる人が埋もれてしまうだろ?」
「なるほどな……対等に見てもらえる相手と出会いたいもんな」
「そういうことだ」
カーミラも色々と考えてんだな……それに対して、この間会ったメリアスは全くもって真逆の使い方してるのもおもしろいな。
アイドル売りして金と魔力を吸い上げて自分の糧にしてるもんな……いつかガルリックみたいなとち狂ったやつに襲われないか心配ではあるが。
「ところでルイよ。ひとつ聞きたいことがあったのを思い出した」
「ん、なんだ?」
「実は先日、帝国軍の知り合いからとある情報を聞いてな?」
「と、とある情報?」
さっきまで酔っぱらってふにゃふにゃしてたカーミラが、まるで獲物を追い詰めるような笑みを浮かべてこちらに顔を寄せる。
「その知り合いは、『ルイ』というイケメンの人狼族にごはんを奢ってもらったと言ってこの写真を見せてきた」
「そ、それって……」
カーミラが見せてきた写真は、オレが1000エル払ってメリアスと撮ったツーショットだった。
メリアスの正体を探るためにラァ子にも見せたやつだ。
「なあルイよ。我は別に、飯を奢って欲しいとかそういうことを言いたいわけではないぞ」
「はい」
「でもな、こやつには奢ったのだろう? それはつまり、この女の方が我より上だと思っているということか?」
「いやそういうことじゃないんですよ」
オレはメリアスと会った経緯をカーミラに洗いざらい話した。
あと今日の酒代も奢った。
男って、辛いな……
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