39話 アイドル営業
「へ~、それじゃあルイさんはアニスター共和国で警備兵をしてるんですねえ、だからそんなに逞しい体つきなんだあ」
「ん、そうか? 自分じゃよく分からんが」
食事を楽しみながらしばらくメリーと談笑する。
とにかくオレの事を肯定して褒めてくれるメリーの話し方は、人によっては色々と勘違いして入れ込んでしまうというか、かなり熱狂的なファンになってしまうかもしれないな、と思った。
「そういえば、メリー……ちゃんに少し聞きたいことがあるんだけど」
「はいはいなんですか~?」
しばらく喋って話し方もくだけた感じになってきたところで、気になっていたことを質問してみる。
「メリーちゃんと1日デートしたら帝国軍の十三邪将のチェキが貰えるとかなんとかって言ってたけど……あれってどういうこと?」
「お、良い質問ですねっ! 実はあたし、ちょ~っと十三邪将の皆さんとコネがありまして。ほらこんな感じでご一緒にお写真撮らせてもらったりっ」
メリーが見せてくれた数枚の写真には、恐らく帝国軍の本拠地である魔王城のどこかでメリーと一緒に写る帝国軍十三邪将の面々が。
オレも全員知ってるわけじゃないが、数人の見覚えがある帝国軍の実力者たちが満面の笑みを浮かべるメリーと共に写真に写り込んでいた。
「アニスター共和国出身のルイさんは分からないかもしれませんが、十三邪将といえばエビルムーン帝国内じゃあ大人気のヒーローなんですよっ」
「へ~そうなんだ」
いやまあ知ってるけどね。
オレ本当はアニスター出身じゃないし、十三邪将に知り合いいるし。
「というわけで、あたしとの1日デートプランを申し込んでくれたらお好きな十三邪将の方とあたしのツーショットチェキをプレゼントしちゃいます! なんとサイン付き!」
「あ、オレが十三邪将と一緒に写真撮れるわけじゃなくて、メリーちゃんと十三邪将のツーショットなのね」
「あははっ! さすがに十三邪将の方にルイさんを紹介するのはあたしでも無理ですよ~。というか、十三邪将って結構女の人多いんですから、あたし妬いちゃいますよっ?」
「焼けたら大変だな、アルラウネ族だし」
「は? つまんな……」
「えっ?」
「なっなんでもないでーす。と・に・か・く! どうですかルイさん? 今度あたしと1日デート、行きませんかっ?」
「まあ、気が向いたらね……」
そんな感じでメリーちゃんとの食事を終えてその日は解散となった。
お食事デート、90分で5000エル。食事代、交通費別途支払い。
うーん……良い商売だなあオイ。
―― ――
「というわけで、ラァ子の知り合いか? こいつ」
「……そ、それを聞くためだけに呼び出したんですかあ? さすがルイさん、鬼畜王ですぅ」
「名誉棄損で訴えるぞ」
メリーと会った後日、オレは『ちょっと会いたくなった』と言ってラァ子を遊びに誘い、メリーとの関係を問いただしていた。
「というか、このルイさんとのツーショットチェキは何なんですかあ?」
「あー、なんか1000エル払ったら一緒に撮ってくれた」
メリーと食事をした日、『オプションであたしと一緒にチェキ撮りませんかっ?』と言われたので、ラァ子に見せる用として1枚撮ってきた。
これ1枚で1000エルか……どうなんだ? ファンからしたら妥当な金額なんだろうか。
「……ず、ずるい。わたしもルイさんとチェキ撮りたいですぅ」
「1000エルくれるなら良いぞ」
「……ぜ、全然払いますぅ。1万エル払えばもっとすごいチェキ撮ってもらえますかぁ?」
「なんだよすごいチェキって。というかそういうサービスはしていない」
オレに金払ってどうすんだよ。
あなたエビルムーン帝国でヒーロー扱いされてるんじゃないの?
「それで、ラァ子はコイツの事知ってるんだろ? メリーのプレゼント用とはいえ一緒にチェキ撮ってるくらいの間柄なんだし」
「……ま、まあ。一応知ってますけどぉ」
オレと一緒にチェキに写る営業スマイルを浮かべたメリーの顔を何とも言えない表情で見つめるラァ子。
「……こ、この人はですねえ。帝国軍十三邪将の『偶像のメリアス』ですぅ」
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