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30話 懇親パーティー


 ドレスコードに着替えたオレたちはエビルムーン帝国の帝都ヘルゲイトにある、とある高級ホテルの最上階フロアへやってきていた。

会場内には立食形式のパーティーの準備が整えられ、帝国に住む魔人族の貴族と思われる人たちが思い思いに過ごしていた。



「親愛なるエビルムーン帝国の皆様、我がドラキュレル家の懇親会へようこそいらっしゃいました。今宵の満月が輝きを失うまでどうぞごゆるりとお楽しみください」



 パチパチパチと拍手を受けてパーティー開始の挨拶を行なうヴァンパイア族の男性。

どうやら彼が今回の懇親会を主催したドラキュレル伯爵家の当主、そしてカーミラに粘着している男の父親らしい。



「……お、いたぞルイ。アイツが件の男……ガルリックだ」



「アイツか」



 オレの背後に隠れつつ、主賓席のようなところでふんぞり返って肉を貪る太ったヴァンパイアの男を指さすカーミラ。

アイツがマッチング魔道具でカーミラにしつこく迫ってきているガルリック・ドラキュレル……なんだろう、ヴァンパイアというよりオークとかゴブリンみたいだが。



「立食パーティーなのになんでアイツだけ座ってんだ?」



「あの身体ではただ立っているのも一苦労というわけだろう。まったく、あんなのと同じ種族だと思うと情けない」



「まあ、デブなんてどの種族にもいるだろ」



 一応主催の息子ということもあり、彼の元へ挨拶に行く貴族たちも見受けられる。

しかしガルリックは食事に夢中なのか、だいぶ適当にあしらっていた。



「……若そうなお嬢様方が全然挨拶に行ってないのはやっぱあれか、気に入られたくないからか」



「まあそうだろうな。いくら玉の輿だと言っても、相手があんな豚玉みたいなやつじゃあ気が滅入る」



「ぶっ、豚玉……っ! おい笑わすのはやめてくれって」



「すまんすまん」



 ガルリックは今のところ腹を満たすのに夢中で参加者には興味が無さそうだ。

オレたちが彼の元に挨拶に行ったらひと悶着起きて会場から締め出されるかもしれないし、今のうちに食事を楽しんでおこう。



「お、これ美味いぞカーミラ」



「ん? なんだそれは」



「多分ヤギの血を使った炒め料理だな……普通は豚の血を使うことが多いんだが、やはりこういうところのは本格的だな」



「そうか。でも我はヤギの血なんかよりもお前の血が飲みたいぞ♡」



「全然ときめかねえよそのセリフ」



 サイコパス彼女かよ。



 ―― ――



「ふむ、このヴィンテージワインは250年物らしい。我より年上だな」



「大丈夫かそんなの飲んで」



「う~ん……」



「どうだ?」



「よくわからん」



 そんな感じでしばらくパーティーを普通に楽しんでいたオレとカーミラが、なんかもう高級レストランでデートしてるくらいの感覚で目的を見失いそうになっていた時だった。



「カッカカカ、カーミラさん!」



「……ん?」



 ドス、ドス、ドスと会場を揺らしながら慌てた様子でこちらに近づいてくる一人のオーク系ヴァンパイアの男。



「ききき、来てくれたんですね! も、もっとはやく挨拶に来てくれてよかったのに!」



「あー……」



「そういやすっかり忘れてたぜ」



 オレ達に近づいてきたのはこのパーティーの主催者であるドラキュレル伯爵の息子で、マッチング魔道具上でカーミラに好意を寄せているガルリックだった。

ガルリックが来たことでオレ達の周りにいた貴族のお嬢様方がそれとなく距離を取り、謎の空間が出来る。

スラムで喧嘩商売してた頃の人間リングを思い出すな……こうやって人に囲まれて、中の二人が決着つくまで殴り合って、周りのやつはその勝ち負けに金賭けたりしてな。



「さ、さあさあカーミラさん! パパに紹介するからこっちに来てください!」



「パパに紹介だとよ、カーミラ」



「何を勘違いしておるんだこやつは……」



「えっ……?」



 オレと話すカーミラを見て状況が理解できず、呆けた顔でオレたちを交互に見比べるガルリック。



「えー、こほん。ガルリックさん、本日は素敵なパーティーにご招待いただきありがとうございます」



「あ、はい……」



「今回は私の愛するパートナーと一緒に参加させて頂いてますっ」



 そう言ってカーミラはオレの右腕に抱き着いた。



「どうも、カーミラのパートナーのルイです。以後お見知りおきを」



「えっ? ど、ど、ど、どういうこと……?」



 戸惑いの表情を隠せないガルリックに、カーミラは素を隠さず周りの野次馬たちにも聞こえる声で言い放った。



「彼氏がいるからもう絡んでくるなって言ってんだよばーーーーーーか!!」



 

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