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27話 私がヒロインだったらどうする?



「あ、それなら私も読んだことあるよ~。島流し令嬢のやつだよね」



「島流し令嬢ってなんだよ……今どきの女子の流行りは分からんな」



 学校帰りのフランキスカと鉄馬に乗ってしばらくツーリングをした後、結局彼女が食べたがっていたホテル・ドルチェスタの『恋人限定トリプルハートワッフルパフェ』とやらを奢ってあげて二人で食べてきた。

まあ、最近かまってやれていなかったし、たまには良いだろう。

ちなみに恋人限定トリプルハートワッフルパフェは4、5人で食べる用じゃないのかってくらい量があって、運ばれてきた時はテンション最高潮だったフランキスカも『夕食が入らなくなってお母様に怒られてしまいますわ……』とか言いながらも二人でがんばって完食した。



「そういえば、恋人限定トリプルハートワッフルパフェって頼むときに店員さんの前で恋人の証明をしなきゃいけないって聞いたことあるけど、それはどうしたのかな~?」



「ニヤニヤしてんじゃねえよ」



 フランキスカを家に送り届けた後、口直しにやってきた喫茶ハロゥで塩辛いツマミを食べつつ酒を飲んでいると、いつものようにハチェットが絡んでくる。

一応、成人してからのオレはオブシディアン家の中でなんちゃって一人暮らしのような状態で、屋敷の離れに個室を貰って生活している。

執事やメイドは付けず、身の回りのことは自分でやって、食事に関しても週に一度、家族全員での食事会の時以外は自由だ。



「それでそれで? もしかして店員さんの前でフランキスカちゃんとちゅ~したの? ちゅ~」



「してねえよ。あとそのふざけたキス顔をやめろ」



「ふざけたキス顔ってなにさ~!」



 いやふざけてるだろ確実に。



「フランキスカをお姫様抱っこしたらオッケーもらえたぞ」



「おお、意外とロマンティック」



 もしかしたらキスくらいしないといけなかったのかもしれないが、オレにお姫様抱っこをされたフランキスカがいつものお兄様呼びじゃなくて『ル、ルイソン様ぁ……!』ってめちゃめちゃ照れながら言ったら、店員さんが『あまずっっっぱあああああああい!!』って叫びながら即OKを出してくれた。

そんなに甘酸っぱかったか? お姫様抱っこ……今になって思うとだいぶ恥ずかしくなってきた。



「でも良かったじゃん。若い女の子の間では人狼族の男の人は憧れの王子様みたいなものってことでしょ?」



「あくまで今流行ってる物語の中の人狼族がってことだろ。魔王連中を一人で打倒していく勇者は現実には存在しない」



「魔王の幹部とマッチング魔道具で知り合ってイチャコラしてる聖国軍の師団長はいるけどね~」



「…………」



 まあ、現実は小説より奇なりってやつだな。



「っておい、オレは別にイチャコラなんてしてねえぞ」



「ナーガ族の女の子の脱皮手伝うのはイチャコラに入ると思いま~す」



「ぐっ……」



 いかん、そういえばこいつにはラァ子とのことを話してたんだった。

いやでもあれは仕方ねえだろ、ナーガ族の生理現象なんだから。



「それにしても、無人島で人狼族と二人きりの生活かあ……ねえルイソンくん、私が島流しにされた貴族のお嬢様で、ルイソンくんが元傭兵の人狼族だったらどうする~?」



「ん? ああ、小説の話か……まあ、オレたちが無人島に行ったらとりあえず……」



「とりあえず?」



「お前を囮にして魔物でも捕まえて食料確保するんじゃねえか?」



「しょっぱなから主人公兼ヒロインを狩りのエサにすな! 急に女学生に流行りの胸キュン小説からキッズに人気のギャグ漫画になっちゃうじゃないの~!」



「ははは、それは確かに」



 ハチェットと無人島でドキドキ胸キュン生活ねえ……全然想像つかねえや。



「まあ、ハチェットが無実の罪で島流しにされそうになったら、オレが裁いた連中を全員ぶっ殺してやるよ。それでエビルムーン帝国にでも逃げようぜ」



「ルイソンくんらしいっちゃらしいけど、逆に愛が重すぎるわね~……」



「ファミリアの絆は命よりも固いからな」



「それスラムにいるギャングの家訓じゃないの」



 どうやらオレたちには甘酸っぱいパフェのような胸キュン展開は似合わないみたいだ。




————  ――――


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