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24話 脱皮



「ほ、本当にやるのか……?」



「……は、はいぃ。ゆっくり尾の先に向かって剥いていってほしいですぅ」



 ナーガ族のラァ子が下半身の脱皮をするということで『ファミリーサウナ・スチームランド』にある少人数用の低温サウナ室を2時間ほど貸し切ったオレたち。

ラァ子から脱皮の手伝いを頼まれたオレは、正直半分パニックになりながらも彼女の下半身を掴んで必死に任務をこなしていた。



「……あ、あれぇ? ルイさんの毛皮、ビッショビショですけどぉ、もしかして緊張してるんですかぁ?」



「これはミストを浴びて濡れてるだけだ。あと毛皮って言うな」



 まあ、緊張はしてるけどな。

ナーガ族の脱皮を手伝った経験なんてねえしよ。

しかも女性……これ大丈夫か? サウナ室に監視カメラとかあったら通報もんだぞ。



「……す、すいませんルイさん。自宅だったら脱皮補助用の設備が整ってるんですけど、ここで急に催しちゃってぇ」



「催すとか言うなって」



 ラァ子の上半身と下半身の境目辺りを確認して、ウロコ状になっている部分に手をかけると、ミストサウナで蒸れて剥がしやすくなったのか、ウロコの表面の薄皮のようなものがスルスルと靴下のように脱げていく。



「こ、こんな感じで大丈夫か?」



「……ん、だ、大丈夫、気持ちいいですルイさん」



「気持ちいいかどうかは聞いてないから」



 なんだろう、この薄皮が千切れないでつながったまま一本脱ぎみたいに脱皮していくのは手伝ってるこっちも見てて気持ちいいかもしれない。

脱皮した部分と脱皮する前のウロコの色ツヤも見比べると全然違うな……



「おっと、少しこの辺りなんかつっかかるな」



「……んあっ///」



「は?」



「……す、すいませんルイさん、ちょっと声出ちゃいましたぁ」



「だ、大丈夫か? 痛かったか?」



「……い、いえ、痛くは無くてぇ。その辺りは裏側がそのぉ……デリケートゾーンなのでぇ」



 …………。



「すまん、この辺りだけ自分でやってくれないか」



「……すまんこ?」



「言ってねえよ」



 ―― ――



「ふう……よしラァ子、全部脱げたぞ」



 開始から1時間弱が経過して、オレはラァ子の脱皮を無事に完了させることが出来た。

湿度が足りなくて脱皮が上手くいかないときれいにスルッと脱げなくて千切れてしまうらしい。

脱皮できない部分が残り、それを放置するとその部分が壊死してしまう場合もあるということで、なんとか脱皮が成功して安心した。



「……あ、ありがとうございますルイさん、おかげで気持ちよく脱皮が出来ましたぁ」



「そうか、それは良かったな」



 まあ、あれだよな。

オレも冬毛から夏毛に変わる換毛期とかモッサリ毛が抜けると気持ちいいし、そういう意味のアレだよな。



「……というわけで、この脱皮殻はルイさんに差し上げますぅ。乾燥させてお部屋とかに飾ってください」



「いや別に欲しくはないが……」



「ナーガ族の脱皮殻は金運アップ効果があるんですよぉ。今回みたいに綺麗に脱皮できたのは人によって高く売れたりするんですからぁ」



 いやまあ、そういう迷信も聞いたことあるけどな……普通のヘビの脱皮殻なら財布に入れたりできるけど、ナーガ族の下半身とかめちゃめちゃ飾る面積取るぞ。



「……あ、見てくださいルイさん。脱皮殻の途中にあるこの凹み、わたしのデリケートゾーンですぅ」



「見せるな見せるな」



 ……ナーガ族の脱皮殻が人によって高く売れる理由をなんとなく察してしまった。



「……ふ、ふふふ。わたし、男の人に脱皮手伝ってもらったの初めてです。今日の事は一生忘れません……一人でまだうまく出来なくてお母さんに手伝ってもらった時のことを思い出しちゃいましたぁ」



「そうか……」



 その綺麗な思い出だけ心の中に仕舞っておいてくれると助かるんだがな。



「……そ、それじゃあせっかくだし、次はわたしがルイさんのお手伝いをしますねぇ」



「ん? オレの手伝い? なんの」



「……ル、ルイさんの自家発電のお手伝いを」



「いやしねえから」



————  ――――


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