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23話 スレンダー巨乳は好きですか?



「で、お前さんが同僚にオレと会ったことを話したせいで大変だったんだが」



「はあ、はあ……ごごご、ごめんなさぃぃ……!」



「なんで喜んでんだよ」



 カーミラとの誠意デート……という名の泥酔飲み会からしばらく経ったある日。

オレはラァ子こと、ナーガ族のラージャに誘われてとある施設に遊びに来ていた。



 〝ファミリーサウナ・スチームランド〟



 ここは水着で利用する低温のサウナ施設で、中にはプールやウォータースライダーなどの遊べる設備もあり、南国気分というか、湿度マシマシの熱帯ジャングル気分が味わえる。

いや違うんだよ。最初は共用じゃない普通のサウナに入ってリラックスしてからゆっくり湯冷まししつつ夕食でも……って言われて来たらこれだったんだよ。



「……だ、だってぇ、男の人と遊んだこととか無かったから、つい同じシフトだったカーミラさんに自慢しちゃいましてぇ」



「軍の活動をシフトっていうやつ初めて見たわ」



 オレの前でモジモジと指を合わせるラァ子。

カーミラと同じくエビルムーン帝国軍に所属しており、幹部である十三邪将の一人『時止めのラージャ』と言われている暗殺が得意なナーガ族だ。

ナーガ族もヴァンパイア族と同じくどちらかというと夜型の魔人族なので、帝国軍内での任務時間が同じになることが結構あるのかもしれない。



「その、大丈夫だったのか? カーミラとは喧嘩にはならなかったか?」



 オレが言うのもなんだが、『同僚からマッチング魔道具で知り合った男性と遊んだ話を自慢げに聞かされたら、自分も遊んだことのある男性のことだった』ってなるのちょっとアレじゃない?



「……け、喧嘩なんてしませんよぉ。一緒に観た映画のチョイスだけダメ出しされましたけどぉ」



「まああんまり男女で観るもんじゃなかったよな。デス・アナコンダ」



 下半身がヘビの尻尾のような形態をしているナーガ族のラァ子と一緒に、足元を巻き付かれつつ巨大なヘビの魔物が人を襲う映画を観るというのは中々のホラー体験だった。



「それにしても……」



 オレは目の前にいる水着姿のラァ子を横目で観察する。

尻尾部分を地面に着けているにも関わらず、亜人族の中でも大柄な方である人狼族のオレよりも目線が少し高い。

しかし体型としてはかなりスレンダーで、触れると折れてしまうんじゃないかという感覚に陥るほどだ。

しかし出る部分は出ているというか、なんでこの線の細さに対してこんなに大きいんだという少し邪な考えが頭によぎってしまう。



「……えへ、えへへ。どこ見てるんですかルイさん」



「い、いや別に……すまん」



「……ス、スレンダー巨乳は好きですか?」



「まあ、嫌いではない」



 オレは開き直った。



 ―― ――



「それにしても、どうしてサウナ施設に来たかったんだ?」



 しばらく二人で低温サウナ室に入りじっくり身体を温めた後、クールダウンのために天井から冷たいミストが出るエリアに移動しつつ、ラァ子がここへ誘ってくれた理由を聞いてみる。



「……そ、それはですね、ちょっと最近お肌が乾燥してたので保湿と言いますか、スチームサウナで調子を上げて一肌脱ごうかと思いましてぇ」



「う、うーむ? よく分からん」



 そういえば今日のラァ子は前回会った時よりも少し動きが鈍い気がする。

どこか具合が悪いのだろうか。



「……ほ、ほらわたし、下半身がヘビ型じゃないですか。それでですね、一定期間ごとにアレをやらないといけないんですよぉ」



「アレ?」



「……だ、脱皮ですぅ」



「…………」



 脱皮? え、この子脱皮すんの?



「……い、今ちょうど脱皮前と言いますか、なんなら脱皮直前と言いますか、まあそんな感じでしてぇ。脱皮前は身体の活動が少し鈍くなるんですよぉ」



「そ、そうなのか……」



 意外なナーガ族の習性を聞いてしまった。

なるほど、脱皮が近いナーガ族は動きが鈍くなるのか……これは戦闘になった時に役立ちそうな情報かもしれない。

いやまあ、戦闘中に脱皮前とか分からんけどな。



「……と、というわけで、そろそろ調子が上がって脱皮できそうなので、ルイさんに手伝ってもらおうと思いましてぇ」



「ああ、脱皮の手伝いね。分かっ……」



 …………。



「えっ? だ、脱皮の手伝い?」




————  ――――


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