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21話 カミングアウト



「ミ、ミラさんが、エビルムーン帝国軍で働いている?」



「そうです……まあ、薄々分かっていたとは思いますが」



 ミラさんが唐突にカミングアウトした内容は、プロフィール上ではアニスター共和国公務員と自称していたところ、実際はエビルムーン帝国の軍に従事しているというものだった。

いやまあ知ってたけどね。数日前にも会ってるし、なんなら戦ってるし。

とりあえず内容が内容だったので、腰を据えて話せるように個室付きの酒場に入って二人きりになる。



「先週、ルイさんがラァ子……私の同僚のラージャと会ったというのを『デスティニー』で聞いたじゃないですか」



「ああ、そういえばそんな話しましたね」



「ラージャは自身の正体をルイさんに話したと言っていました。それなら私の事もいずれバレてしまうと思いまして」



 確かに、それはそうだ。

ラァ子がエビルムーン帝国軍十三邪将の『時止めのラージャ』だということは前回のデートで知っていた。

そのラァ子とミラさんが同僚だとこの間のメッセージで教えてくれたのだから、仮にオレがミラさんのことをカーミラだと認識していなくても、帝国軍で働いていることくらいは容易に考えられるだろう。



 ……正直あの時は酒も飲んでたし、ミラさんにラァ子と会ったことが知られてパニクッてたので全然気づいてなかったわ。

隣に泥酔してウザ絡みしてくるリトルフットの女もいたし。



「そ、それじゃあミラさんはエビルムーン帝国軍で働くヴァンパイアってわけですね……仕事内容とか聞いても? 軍事機密なら大丈夫です」



 マッチング魔道具『デスティニー』上でのオレのプロフィールはアニスター共和国の警備員ということになっているので、あくまで興味本位的な感じで聞いてみる。

さあ、これにどう返してくるか。



「鮮血のカーミラです」



 …………。



「へ? 鮮血の……」



「エビルムーン帝国軍十三邪将、鮮血のカーミラだ」



「……そ、そうですか」



 いや正直に全部さらけ出してきたわこの人。

オレの謝罪が霞むくらい誠意あるわ。



「ち、ちなみに本当の年齢は23才じゃなくて233才で、一人称は我だ」



「そ、そうなんですね……いやあ、233才には見えないなあ」



 なんなら背が低いのも相まって23才にも見えない。さっき酒場に入った時も店員さんにめっちゃ訝しい目で見られてたし……主にオレが。

大丈夫かな、通報とかされてないかな。



「ラージャのやつが素のままルイと話したと聞いてな。自身を偽って接していた己が嫌になった。本当の我はこんな話し方だし、年齢だってルイから見たらただの年増のヴァンパイアだ……今まで騙しててすまん」



「いや、その……」



 酒も入ったせいかもしれないが、ミラさん……いや、カーミラが泣きそうな顔で頭を下げる。

正直、めちゃめちゃ罪悪感がすごい。

オレだって自分が敵対している国の兵士だということを隠しているわけだしな……でも、この流れに任せてオレまでカミングアウトしたらもう一生カーミラとはこうやって会えないかもしれない。



「じゃあ、オレも丁寧語じゃなくてこういう話し方に変えて良いか?」



「えっ? あ、ああ……」



「それは助かる、いや~、やっぱ素の喋り方抑えて話すのってストレスだよなあ」



「……我のことを、許してくれるのか?」



「別になにか詐欺られたわけじゃないしな。それに、今のカーミラの方が話しやすくてオレは好感が持てる」



「そ、そうか……へへ、そうなのか……」



 なんだろう、今日はオレがめちゃめちゃに謝り倒す気でいたんだがいつの間にかお互い素の自分を出してちょっと仲が深まった感じになっちゃったな。

まあ、終わり良ければすべて良しだ。

ある意味ラァ子のおかげかもしれん……あとで礼を言っておくか。



「それではルイよ、今日は我らの関係の新たな一歩を踏み出せたということで、記念に飲みまくろうぞ!」



「おう! まあでも、酒はほどほどにな」



「泥酔したらルイの女友達のようになってしまうからな」



「それはその……すいません」



 これはあれだよな? フリというか、冗談として受け取って大丈夫なやつだよな?



「……ちなみにルイは、あの女友達みたいな小さい女子が好みなのか?」



「そ、そういうのは……ほら、企業秘密だ」



「あっすいませ~ん! レッドアイく~ださい」



「話聞けよ」





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