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2話 プロフィール登録



「職業は『国境警備員』っと……よし、とりあえずこんな感じでいいか」



 マッチング魔道具『デスティニー』を起動して自分のプロフィールを登録していく。

現在販売されているマッチング魔道具にはいくつか種類があって、オレが購入した『デスティニー』は実名での登録や顔写真の掲載が必須ではない、比較的匿名性の高いものとなっている。

オレも実名のルイソンは避けて、愛称の『ルイ』で登録した。



「本名と素顔が分かるような写真なんて出したら部下にバレちまうかもしれねえからな……まあ、マッチング魔道具やってるなんて話は部下の連中から聞いたことはないんだが」



 オレはスラムから拾い上げられた人狼族という、聖国軍の中でも特殊な出で立ちをしている。

将軍であるインロック義父さんは、オレが人間族から疎まれている人狼族であることを気にせず実力だけで判断してくれているが、世間のイメージというものはそう簡単には変わらない。



 聖国軍の師団長ともなれば、国民からは魔王軍と戦うヒーローのような扱いを受けることも少なくない。

そこに人狼族のオレがいるというのが国民に知れてしまうというのは国全体の士気にも関わるし、オレの行動にも制限が付いてしまうかもしれない。



そのため、基本的にオレは聖国軍内では全身鎧の格好で活動している。

オレが人狼族だと知っているのは、部下である第8師団の団員達と、養子に迎え入れてくれたオブシディアン家の者たち、後は国王陛下くらいだろう。

巷では『瞬撃の鎧騎士』とか言われているらしいが。

うーん、かっこいい……のか?



「年収は……一応ちょっと誤魔化しておくか。金目当てのがめつい女が来ても嫌だしな。まあ『デスティニー』ならそういうやつはいないと思うが」



 オレが購入したマッチング魔道具『デスティニー』は誰でも買えるわけではなく、身分た職業、年収など、一定の条件を達成している者のみが手に入れることが出来る、ある意味高級マッチング魔道具だ。

誰でも購入可能な安いものだと、出会い系詐欺や闇取引を行なう犯罪の温床になっている場合もあるため、ある程度しっかりした相手と出会える可能性が高い『デスティニー』を使うことにしたのだ。



「種族は人狼族、出身は……アニスター共和国にしておくか」



 購入するときに店員さんから相手とマッチングしやすくなるためのアドバイスを少し貰ったんだが、オレみたいな亜人族なら出身地をアニスター共和国にしておいた方が良いとのことだった。

一応現在住んでいる国以外の登録も可能で、エビルムーン帝国に住んでいる一部の亜人族なんかも同じようにアニスター共和国で登録していたりするんだとか。



「まあ、さすがに魔王軍に所属してる魔人族の連中とかち合うことはないだろうし、実際に会うってなったらアニスター共和国で待ち合わせすれば良いだけだしな」



 オレはサンブレイヴ聖国軍で働いちゃあいるが、敵国のエビルムーン帝国に恨みや憎しみがあるかというと、そういうわけでもない。

スラム街の闇闘技場で殴り合いをしているよりは楽に稼げるし、後はまあ、オレを拾ってくれたインロック義父さんの為に働いてる感じだ。



「よし、あとは……顔写真か」



 『デスティニー』では顔写真の掲載は必須ではないのだが、載せた方が格段にマッチング率は上がる。

そのため、素性がバレないように目元を隠した写真や、後ろ姿などを載せている人は結構多いらしい。



「オレも目元を隠した写真にするか……」



 マッチング魔道具のカメラ機能を使って、片手で目元を隠した写真を撮影する。



「……なんかちょっと、いかがわしい感じになっちまったな」



 手のひらを前に向けてるのがよくないのか?

なんか上手いこと良い写真が撮れないな……



「まあ、こんなもんか……登録っと」



 しばらくカメラ機能と格闘し、横顔を撮ってから目元をサングラスのスタンプで隠した写真を掲載することにした。



「よし、これで登録作業完了だな。公開設定をオンにして……」



 あとは魔道具で自分に合いそうな女性をピックアップしてくれるので、そこから気になる子にスタンプを送って……



「……まあ、それは後でいいか」



 慣れない作業でなんだか精神的に疲れてしまった。

オレのプロフィールを見て興味を持ってくれた女性側から反応を貰えたりもするらしいが、まあ最初のうちはそういうのは期待しない方が良いだろう。



「とりあえず飯食って、風呂にでも入るか」




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