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15話 誤写送信



 深夜のバーで良い感じに酔っていたところに届いたミラさんからのメッセージ。

それは、昨日会ったラァ子との関係を問い詰めるものであった。



 『実は私、ラージャさんとは知り合いと言いますか、別の部署の同僚みたいな関係でして』



「そりゃそうだよなあ……二人とも魔王軍の幹部だもんなあ……」



 ミラさんは夜間哨戒を担当する斥候部隊の長、魔王軍十三邪将『鮮血のカーミラ』の異名を持つヴァンパイア族の女性。

ラァ子は暗殺部隊の長で、ミラさんと同じ魔王軍十三邪将『時止めのラージャ』と呼ばれるナーガ族の女の子だ。



 よくよく考えればこの二人が知り合いである可能性は十分考えられた。

いやでもなあ、まさかマッチング魔道具で知り合った子が二人連続で敵国の幹部だとは思わないじゃん……事故だよ事故。



「とりあえず、なにも知らない体で返信しておこう……」



 別にあれだしな、今のところミラさんとはお付き合いを前提に……とかじゃなくて普通に友達だし、ラァ子ともそんな感じだし。

オレに後ろめたい事なんて何もないからな。



「『まさかお二人が知り合い同士だと思いませんでした。今度3人で遊び行ったりします?』……うーん、これはあまりよくないか」



 魔王軍の幹部同士の仲ってどうなんだろうな……オレが所属してるサンブレイヴ聖国軍の師団長同士は、特定のヤツ以外はほとんど絡みないしな……まあオレが師団長やってる第8師団が少し特殊っていうか、クセのある連中が集まってて師団ごと浮いてる感じではあるんだが。



「……ああ、なるほど。ラァ子がミラさんに対して『ルイさんとラブラブデートした』とか話を盛って伝えてきた感じなのか」



 それで真相を知りたくて連絡くれたってわけね。

なるほどなるほど……



「まあ、ラァ子ならなりかねんな」



 あの子、なんか知らんがオレに対する好感度が最初からほぼマックスだったからな……やっぱ『石化の魔眼』が効かないから普通にお喋りできるっていうのがかなり高ポイントだったんだろうか。



「おーいルイソンく~ん、私の話聞いてる~?」



「ん? ああ悪い、ちょっとメッセージが来ててな……」



「え~誰から~?」



「ミラさんだ。ほら、前に言った魔王軍のヴァンパイア」



 マッチング魔道具にメッセージを打ち込んでいると、オレの上に乗っかって画面を覗こうとするハチェット。



「おいこら、画面が見えんだろ」



「いえ~い、ミラちゃん見ってるう~?」



「見てないから。これただのメッセージのやり取りだから。あとその不穏なチャラ男ムーブやめろ」



「ミラちゃんの大切なルイソンくんは、私が貰っちゃいました~えっへへ~」



「すべてが間違ってるからそれ」



 相当酔ってるなコイツ……ハチェットはかなり酒に強いほうなんだが、一度限界突破して酔っぱらうとしばらくこのふにゃふにゃモードになっちまって面倒くさいんだよな……



「あ、これ写真送れるじゃん写真。ルイソンくん一緒に撮ろうよ~」



「ダメに決まってんだろ……っておい!」



「はぁい、ぴすぴ~す☆」



 パシャッ!



「ねえ見てルイソンくん、めっちゃ不倫っぽい写真撮れた」



「いいから今すぐ消せそんなもん!」



 酔っぱらってオレのマッチング魔道具で遊ぶハチェット。

どうにかしてくれとマスターに目線を送るも、いつもの事だと言わんばかりにスルーされてしまう。

いやこれ、おたくの娘さんですよ。



「しょうがないにゃ~。さくじょボタンは~これ!」



 ピロリ~ンッ♪



「あれ? なんか送っちゃった~」



「うぉおおおおおおおおおおい!?」



 ミラさんとのメッセージツリーにいきなり投稿されるオレとハチェットのツーショット写真。

しかも酔っぱらったハチェットが何故かオレの足の間に納まって火照った顔でピースしている。

これはマズい、既読になる前に消去せねば。



「おいこら魔道具返せハチェット!」



「あんっ……ちょっと~今私の胸触ったでしょ~?」



「お前のどこに胸があるんだよ! いいからそれ渡せって!」



「あ~ひっどいんだルイソンくん! こう見えても私、リトルフット族の中では結構あるんだけど~?」



「わかった、わかったから。今はそこ食いつかなくていいから」



 わちゃわちゃしながらごねるハチェットからなんとかマッチング魔道具を取り返し、送信した写真を削除する。



「ふう……お前、酔ってるからってやっていいことと悪いことが」



 ピロリンッ♪



「ん?」



 『今の写真の子、だれですか?』



「…………」



 おそろしく速い既読。

オレでなきゃ見逃しちゃうね。





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