第50話 四人の共闘
黒霧が群れを成して壁をよじ登り、闇の触手を伸ばしてくる。
柚希とレオンは剣を振るいながら応戦するが、その数は減る気配を見せない。
「数が多すぎる……!」
柚希が息を荒げたそのとき、鋭い声が響いた。
「退くな! まだ手はある!」
振り返ると、マントを翻しながらリディア宰相が現れた。
その手には魔術書が握られ、青白い光がページの間から溢れている。
「宰相!?」
柚希が驚くより早く、彼女は高らかに詠唱を始めた。
「──光よ、夜を裂け!」
瞬間、城壁の上に光の結界が展開し、押し寄せる黒霧の一部が焼き払われる。
その光の眩しさに群れが一瞬怯んだ。
「ユズキ! 今です!」
リディアの叫びに応じ、柚希は剣を構え直した。
そこへ駆け込んできたのは、風を切る音と共に軽やかに飛び降りたルカだった。
双剣を操る彼は、柚希の背を守るように黒霧を切り裂きながら笑う。
「遅れてごめん!でも、ここからは俺も混ぜてもらう!」
頼もしげな笑みが、柚希の胸に火を灯す。
「ルカ……!来てくれて……!」
「当たり前だろ。君を一人にするわけない」
四人が陣を組むように背を合わせる。
柚希の剣、レオンの斬撃、リディアの魔術、ルカの双剣。
それぞれの力が絶妙に重なり合い、これまで突破できなかった黒霧の波を押し返していく。
「……行ける!」
柚希の声が震えながらも力強く響いた。
その刹那、リディアが再び詠唱を紡ぐ。
「──月光の矢よ、影を貫け!」
放たれた光の矢が黒霧の核を穿ち、群れが動きを止める。
すかさずルカが跳び上がり、残る魔獣の核心部を斬り裂いた。
轟音と共に、黒霧が霧散していく。
静寂が訪れ、四人は息を合わせるように肩を並べた。
柚希は剣を下ろし、目に涙を浮かべながら微笑んだ。
「……みんなのおかげで、突破できた……」
レオンがその肩に手を置き、低く囁く。
「いや、柚希。君がいたからこそ俺たちは戦えたんだ」
その言葉に、柚希の心臓は熱く高鳴った。