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第47話 星光と闇牙

黒霧の王が咆哮すると、空気そのものが震えた。荒れ果てた平原の地面がひび割れ、黒い瘴気が吹き上がる。仲間たちの視界を覆い尽くす闇──その中から鋭い爪が柚希を狙って振り下ろされた。


「ユズキ!」

 レオンが叫び、大剣でその爪を受け止める。火花のように黒霧が散るが、衝撃で彼の膝が沈んだ。

「ぐっ……! こいつ、重すぎる……!」


 その隙を突き、巨獣の尾が唸りを上げて襲いかかる。

「させない!」

 リディアの魔法陣が閃光を放ち、尾の軌道を逸らす。しかし代償に彼女の魔力は急速に削られていった。


 ルカは素早く巨獣の影に潜り込み、短剣で脚を斬りつける。だが黒霧の肉体は霧と実体が入り混じり、深い傷を与えることができない。

「駄目だ、普通の刃じゃ決定打にならない……!」


 柚希は息を呑み、胸の奥から光を引き出そうとした。

 自分にできること──それは癒すこと、守ること。けれど今、求められているのはそれ以上だ。


「私の光で……黒霧を打ち払えるなら!」


 両手を組み、祈るように強く願った瞬間、眩い光が彼女の掌から溢れ出す。

 それは単なる癒しではなく、黒霧そのものを弾く鋭い輝きだった。


「ユズキ……その力は……!」

 レオンが目を見開く。


 光は星屑のように舞い、黒霧の王の胸元に直撃した。巨体がのけぞり、苦悶の咆哮が平原を揺るがす。闇の塊が煙のように散り、一瞬だけ赤い瞳が揺らいだ。


「効いてる……! ユズキの光なら、奴を倒せる!」

 ルカの声に、仲間たちの士気が高まる。


 だが黒霧の王は怒り狂い、巨腕を振り上げる。その一撃は、柚希を狙ってまっすぐに──。


「……来なさい!」

 柚希は光を全身に纏い、一歩も引かずに立ち向かった。



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