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第45話 進軍の誓い

森を抜けると、そこは広大な平原だった。かつては麦畑が広がっていたというその地は、今では黒霧に侵食され、荒れ果てている。枯れ草の上に漂う(もや)は不気味に揺れ、遠くには黒い影がうごめいていた。


「……あれが、黒霧の大群か」

 レオンが剣の柄を握りしめ、険しい表情で呟く。


 柚希もまた、胸の奥がざわつくのを感じていた。あの影はただの獣ではない。怨念の塊のような存在が形を持ち、群れを成して進んでくる。人々を襲い、土地を蝕み、希望を食らう……それが黒霧の恐ろしさだった。


「本当に、勝てるのか……?」

 仲間の一人が不安を口にする。その声は震えており、皆の胸の奥に潜む恐怖を代弁していた。


 柚希は深呼吸をして一歩前に出る。視線の先、漆黒の靄の中で無数の赤い瞳がぎらついていた。だが、不思議と心は静かだった。


「勝てるかどうかじゃない。勝たなきゃいけないんだよ」

 柚希は仲間たちを振り返り、強く言い切った。

「私たちが立ち止まれば、この先にいる人たちはみんな飲み込まれてしまう。だったら──私の光で、黒霧を払ってみせる」


 その言葉に、仲間たちは目を見張った。リディアがそっと笑みを浮かべる。

「あなたの光なら、必ず闇を裂けるわ。私も剣を捧げます」

 ルカも拳を握り、真剣な瞳で続ける。

「僕も! 柚希さんと一緒に、最後まで戦います」


 レオンは少しの間沈黙していたが、やがて大剣を抜き放ち、仲間に向かって高く掲げた。

「この戦いを終わらせる。黒霧を打ち払い、人々に平和を取り戻す。誓いを果たすのは今だ!」


 剣の光に仲間たちの声が重なる。柚希は胸に手を当て、強く頷いた。


 風が吹き、黒霧の群れがざわめいた。

 いよいよ決戦の幕が上がろうとしていた。


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