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第21話 王の重責、聖女の役目

柚希が光を放った宴から三日。

 王宮は静けさを取り戻すどころか、ますますざわついていた。


 「聖女を神殿に預けるべきだ」

 「いや、陛下の庇護下に置かねばならぬ」

 重臣たちの議論は真っ二つに割れ、玉座の間には緊張が漂っていた。


 レオンはその中心で黙して座っていたが、やがて静かに口を開いた。

 「彼女は神殿に閉じ込めるために現れたのではない。俺の眼で見た。あの光は人を救うものだ」


 だがすぐに、反対派の声が飛ぶ。

 「災厄を招く可能性もある! 帝国に付け入る隙を与えかねませんぞ!」

 「万一、彼女が制御できなければ……国そのものが危うい!」


 ──柚希を巡る論争は、すでに王国全体の政争となりつつあった。


 


 その頃、柚希は王宮の礼拝堂にいた。

 「……これが“聖女”としての務め、なんでしょうか」

 彼女の前には、病に伏す兵士たちが横たわっていた。

 癒やしの力を求め、民や兵士が次々と運び込まれる。


 「できる範囲でいい。無理はなさらないで」

 そう声をかけたのは、若い神官だった。

 柚希は小さく頷き、両手を差し伸べる。

 温かな光が彼女の掌から溢れ、兵士の蒼白な頬に赤みが戻っていく。


 「……楽になった」

 兵士の安堵した声に、柚希の胸がじんわりと熱くなった。

 だが同時に、背筋を冷たいものが撫でる。

 ──この力を、私はいつまで制御できるんだろう。


 


 夜。

 執務室に戻ったレオンは、柚希の疲れた顔を見て眉をひそめた。

 「無理をさせすぎたか」

 「……でも、助けられました。力になれた気がして」

 柚希は微笑んだが、瞳には迷いが揺れていた。


 レオンは彼女の肩に手を置く。

 「ユズキ。お前がどう呼ばれようと関係ない。聖女だろうが災厄だろうが、俺はお前を守る」

 その真剣な声に、柚希の胸は締めつけられた。

 ──もし、この力が本当に誰かを傷つけるものだったら?

 その問いを飲み込み、ただ「ありがとうございます」と返すしかなかった。


 


 一方その頃。

 王都の暗い路地裏。

 フードをかぶった男が、帝国の使節に囁いていた。

 「聖女は毎晩、礼拝堂で祈りを捧げている。護衛は最小限だ」

 「……なるほど」

 帝国の使節の口元に、ゆっくりと嗤いが浮かぶ。

 「奪うなら、今だ」

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