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第19話 光の証明

広間を満たしていた闇を、まばゆい輝きが一掃した。

 柚希の身体から溢れる金色の光は、波紋のように広がり、宴の客人たちを包み込む。

 恐怖に泣き叫んでいた者たちの表情が、次々と和らぎ、傷を負った兵士の出血が止まっていく。


 「な、なんという……」

 「癒やしの力……まさか“聖女”か!」


 誰かの叫びが引き金となり、広間はざわめきに飲み込まれた。

 「聖女が現れた!」

 「いや、異邦の娘だ。災厄を呼び込むかもしれん!」

 称賛と畏怖が入り交じり、熱狂と混乱が渦巻く。


 柚希はその光の中心で立ち尽くしていた。

 力は意志に反して溢れ出し、ようやく収まったときには、彼女は膝から崩れ落ちていた。


 「ユズキ!」

 すぐさまレオンが抱きとめる。彼の腕に支えられながら、柚希はかすかに首を振った。

 「……ごめんなさい。また、勝手に」

 「謝るな」

 レオンの声は鋭くも温かい。

 「お前の力が、ここにいる者を救った。それは紛れもない事実だ」


 


 だが、広間の片隅で冷ややかな視線が注がれていた。

 「……聖女、ですって?」

 リディアが扇を閉じる音が、妙に大きく響いた。

 「陛下の傍に置くにしては、あまりに危うい力ですわ」


 その言葉に頷く重臣たち。

 一方で、救われた兵士や民からは「聖女様!」と歓呼の声が上がる。

 宮廷は一夜にして、柚希を“希望”と“脅威”の両極へと押し上げてしまったのだ。


 


 宴が終わった後。

 レオンの執務室に連れられた柚希は、まだ不安を抱えたまま彼を見上げた。

 「……私、余計なことをしてしまったんじゃないですか?」

 「違う」

 レオンは机に拳を置き、真っ直ぐに告げた。

 「今日のことで、もう誤魔化せなくなった。お前の力は世に知れた。ならば──」


 彼は歩み寄り、柚希の手を取った。

 「俺は、お前を“聖女”として守り抜く。それが王としての責務であり……一人の男としての誓いだ」


 その瞳に映る決意の強さに、柚希の胸は熱くなり、言葉を失った。

 けれど、心のどこかで囁く。──果たして、この力が本当に人を救うものなのか、と。



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