表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/73

第15話 選択の影

東屋を後にした柚希は、足元が覚束(おぼつか)ないほど動揺していた。

 ──リディアと手を組む?

 そんなこと、考えるべきではない。彼女は敵。陛下の婚約者候補であり、柚希を排除したがっているはずだ。

 だが……彼女の言葉の一つ一つが、胸の奥に棘のように刺さって離れなかった。


 「王は駒を捨てる」


 信じたい。けれど、確信できない。

 昨夜のレオンの言葉──“俺のそばにいろ”──すらも、利用のためだったのではないかと疑ってしまう。


 部屋に戻ると、侍女たちが妙に視線を逸らした。

 昨日の出来事が、すでに王宮中に広まっているのだろう。

 「……私、どうすれば」

 小さく呟いたその声は、誰にも届かない。


 


 夜。

 執務室で書簡を捌いていたレオンの元に、宰相が控えめに告げた。

 「本日、リディア殿下が異邦の姫に接触したとの報告がございます」


 ペンの動きが止まる。

 レオンの表情は変わらなかったが、瞳の奥が冷たく揺れた。


 「……何を話した」

 「詳細は掴めておりませんが、“協力”を持ちかけたとか」


 重苦しい沈黙が落ちる。

 レオンはゆっくりと椅子から立ち上がり、窓の外を見やった。

 暗い夜空には、ひときわ明るい星が瞬いている。


 「愚かな女だ。……だが、問題はユズキの答えだな」


 冷徹な声音の裏で、わずかに胸の奥がざわめく。

 彼女が他の誰かに寄り添うことを想像しただけで、心臓が重く軋んだ。

 ──これはただの駒への執着か。それとも……。


 レオン自身、その答えを持てずにいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ