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幸せへの選択を  作者: サカのうえ
第四章「笑顔のために」
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第三十七話 遊園地観光

 共和国に入ると王都とはかなり違う風景がそこに存在していた。共和国内は確かに店は並んでいるが空には複数の監視型魔道具が飛んでいる。

 だが建物はかなり美術館に絵画として飾っている芸術的なお洒落さがあった。多くの老若男女が笑って買い物をしたり公園で遊んだり休憩したりして過ごしていた。

 入り口から入ると見えるのは、左側には壁と隣接している店が沢山並んであって、右側には草が生えている広々とした公園がある。


「……え?」


 この歳になって、遊具には遊びたいという大した想いも懐かしさも抱かない。しかしフラブは不思議に思ってそんな疑問を声から溢した。


「他の建物と公園との差すごくないですか?」


 左側には貴族や裕福な人が通うようなお洒落な店が並んでいるのだが、右側に視線を移すと子供がきゃっきゃっと遊んでいる公園ときた。

 どちらか片方でも、もっと場所は選べただろうというのがフラブの意見だ。


「人々が欲しい場所を提案しては作ってを繰り返した結果らしいな。よく分からない雰囲気の国になったらしい。今は4時45分、かなり早朝だが早速の遊園地に向かうぞ」


 らしいと言うからには直接見たのではなく誰かから聞いた話なのだろう。そんな説明にフラブは不思議そうにきょとんとしてアリマを見る。まぁ説明というよりはアリマから発されたある単語が耳から入って離れてくれない。


「遊園地、ですか? アリマさんの口から出る言葉と程遠い言葉の気がしますが……聞き間違いでしょうか……」


 そんなアリマとフラブは入って直ぐの左側の壁の前で辺りを見渡しながら話をしていた。アリマの外見もあって多くの貴婦人の視線を浴びたりもしたが、持ち前の不気味さで誰も話しかけてはこなかった。


「余を何だと思っている。遊園地でのテロ、それを片付けに来たんだ。資料によると今日が結構日らしいんだが、左手の甲に青い刺青がある者を見つければ直ぐにでも余に教えろ」


「刺青……? 何ですか? それ」


 またまたわからない単語が出てきてフラブは不思議そうに首を傾げて聞き返す。そんなフラブに対してアリマは少し引くような冷めた目を向けた。


「何処まで世間知らずなんだ? 君は……? 何をして生きてきた? 余が離れてから勉強をしてこなかったのか?」


 そんなアリマの冷めた言葉にフラブは腹立たしく思いながら強く彼の顔面を睨みつける。


「喧嘩売ってるなら他の人に売って下さいよ。死にたくないので」


 実際、喧嘩を買うと言ってもアリマが相手だと勝てるビジョンが見えない。口論でも物理的な喧嘩でもきっと力不足を痛感するだけになるだろう。

 その平然とした言葉にアリマはますます呆れるような目をフラブに向ける。しかしアリマが口を開く前にフラブが話を切り替えた。


「あの、それはそうと警備課と処刑課は何をしているんですか? 魔物関連の仕事が当たり前の名家に対人を頼むなんて……」


 そう、名家は対魔物が基本なのだ。それは武力も知恵も統率も情報も全部同じこと。対魔物での役割が違うだけで対人間とまではいかないことが殆ど。


「今の警備課では遂行できるか否かのラインの仕事なんだ。そして処刑課は何も追及していない」


「……嫌な予感がしますね」


「ああ」


 警備課については納得してしまう。一応ヨヤギ・コハハとコハルという名家出身の人間はいたが、彼らはコクツの手で亡き者にされた。

 警備課のかなり偉い人たちになれるくらいの実力が彼らにはあった。今も生きていれば、相応の成長を見せつけられていたことだろう。


 それによってコクツは処刑課や警備課から一層警戒されていることだろう。はたまたそれらもアリマがやったことにされているのかは定かではないが。


 そして何よりも──問題なのは処刑課が何も追及していないことにある。




** ** * ** **




 ──それからフラブとアリマは多遊園地に着いたのだが早朝も相まってまだ閉まっていて客は誰1人としていない。遊園地の入り口には遊園地の正装を着た受付の男性がいてアリマは話をしていた。


「ヨヤギ家の当主様ですね。仕事の紙の確認をしてもよろしいでしょうか?」


「ああ」


 アリマは単調に返事しながら収納魔法を使い、左手で紙を取り出して受付の男性に渡す。それを受け取った男性はあろうことか魔眼を使って紙を確認した。

 魔眼は珍しいものではあるのだが、それだけは名家という生まれは関係ない。


「本物ですね、こんな危険な仕事を引き受けて下さりありがとうございます。遊具も開放しますので是非お楽しみ下さい」


 受付の男性は真剣な表情で丁寧にそう言いながらアリマに紙を返して、それを軽く頷きながら受け取ると収納魔法で紙を仕舞った。

 そしてアリマは再び受付の男性の方を見て、暫くの間無言が続いた。その沈黙を不思議に思って男性は頭に疑問を並べながら小首を傾げる。


「え、っと? 何かございましたでしょうか?」


 そう訊かれるアリマこそ頭に疑問を浮かべて不思議に思っていた。大規模なテロであろうとあくまで対人間であるため、もっと仕事のやり取りが続くものだと思っていたし、続かないのならそれでいいのだが。


 あと肝心なものが足りたいない。


「地図が有れば欲しいのだが……」


 テロをなるべく未然に終わらせるにしては、遊園地のことを何も知らないのだ。地図というものは未知の世界に足を踏み入れるとき、あればあるだけいい。


「ああ、そうでした。これを」


 思い出したかのように言う受付の男性からアリマは遊園地の地図を受け取った。そして次にアリマから少し離れてソワソワして周りを見渡しているフラブの方を振り返る。


「行くぞ、フラブ君」


 アリマの言葉が合図となって、ソワソワしていたフラブは表情にも好奇心を包み隠さずに素早くアリマの元へと歩いた。



** ** * ** **



 入り口から中に入ると大きな観覧車が挨拶だと言わんばかりに待ち構えていた。そして2人は入り口から少し右手側に歩いた場所にあるベンチに座って地図を確認する。

 地図には観覧車やジェットコースター、お化け屋敷や迷路、コーヒーカップと他にも様々な遊具の場所が載っていた。公園の遊具には興味を示さなかったフラブだが、これは流石に目を輝かせる。


「凄いですね。なんか……!」


 そして左に座っているアリマが確認している地図を横から覗き見て、高揚を抑えきれずにいた。そんなフラブに呆れつつもアリマは邪魔には扱わず冷静に説明を始める。


「遊びに来たわけではないからな。遊具を壊せば弁償で収入から差し引かれる、手加減を誤ればテロを防いでも最悪収入無しなんだ。其れでは只のボランティアと何ら変わらない」


 アリマは言葉とは反対に無表情ながらどこか気を抜いている表情で地図を確認していた。

 しかしフラブはいつの間にか買ったオレンジジュースを右手に持って、平然としながらストローで飲んでいた。アリマはそのフラブを見てなんとも言えずに無言が4秒続いた。


「……早速予め余が渡した金を使ったのか……? そもそも店は開いて……」


 遊園地に来てはしゃいでいるのか、フラブの子供じみた行動の速さについていけない。アリマは大変な親の気持ちを少し理解してしまった。


「店は開いてましたよ。アリマさんがもう来てるから客を暇にさせるのは駄目だと開けたそうです」


 自信満々に胸を張って言うフラブは優しい笑顔で首を傾げながら、自身が飲んでいたオレンジジュースをアリマに差し向ける。

 甘いものがいくら好きでも、アリマは糖分多め且つ喉が渇くジュース系統はあまり好きではなかった。そのため丁重にお断りして話を戻す。


「客ではないのだが……」


「遊具も開けてくれるそうです。楽しまなければ失礼だと思いませんか?」


 少し悪い顔をして言ってくるフラブの明るさに敵いそうな未来が見えなくて嘆息すると、再び地図へと視線を戻した。しかしそれは仕事としてではなく、楽しもうとしてのことだった。


「……分かった。流石に人命が関わる故に仕事優先だが何処に行きたい?」


「お化け屋敷です。アリマさんが怖がってる姿を見てみたいので」


 楽しそうに即答するフラブは面白半分で笑みを浮かべてそう言った。その笑みの裏には悪い想像をしているのだろうとアリマは察した。


「……まぁ行ってみるか」


 お化け屋敷は地図の東側に位置していて、遊園地の入り口は南側にある。お化け屋敷に向かってる最中も時間帯だけあって人は居らず静かだった。


「アリマさん以上の怖さがあるのか見ものですね。収納に任せて良いですか?」


「ああ。溢したら面倒だからな」


 お化け屋敷の前に着くと、フラブはそうアリマに訊きながらオレンジュースを手渡した。それをアリマは軽く頷いて受け取ると収納魔法を展開しながら、


「あと魔法も行使しているらしい。浮遊魔法とか……魔法は何でも有りだからな。巻き添えで死ぬなよ?」


 アリマがそう言って収納魔法に片付けている間に子供じみている元気があるフラブは既にお化け屋敷の中に入っていた。

 それに対してアリマは嘆息して、


「人の話を……」


 呆れるような表情を浮かべるも、子供から目を離した自分を責めて反省をしながら、お化け屋敷の中へと入った。



** ** * ** **



 フラブは薄暗いお化け屋敷の中を歩いていて、迷路のような一本道だった。辺りを見渡すと木で出来た廊下のような構造で部屋に繋がっている。


 フラブは意を決して廊下から部屋に足を踏み入れるとなんと地面が爆発して崩れた。


「え……?」


 フラブは目を大きく見開いて地面に視線を移動させ冷や汗を流し、見事に地面と共に下へ落ちた。


「……っ! 痛っ」


 痛そうにしながら起き上がろうとすると、爆発の爆風で小さい瓦礫が上から勢い良く降りかかって来た。だが下の地面から茎が生えて全て空中で茎によって受け止められる。


「大丈夫か? 此処は魔法を使って人を命の狙って驚かせてくるお化け屋敷だ」


 アリマが上から覗く様に屈んで下に落ちたフラブを見下ろす。


「え……? それお化け屋敷なんですか……? 殺人屋敷に名前を変えた方が……」


 フラブはそう言いながら目線を左側に移動させると、髪の長い女性のお化けが心配そうな目でフラブを見ていた。フラブは恐怖で息を呑む暇さえ無くその場で気絶して目を閉じてパタリと倒れる。


 それにアリマもお化けも何もせず、何とも言えずフラブを見ていた。


「……君にも怖い事があるのか」


 アリマは驚いてそう言葉を溢す。そしてお化けも怯え具合にどうしたら良いのか分からず困惑してアリマの方を見上げる。アリマは察して上の地面から茎を生やしフラブに巻きつけて勢い良く回収した。


 するとお化けが魔法を使って地面を直し、アリマはフラブを左腕に抱えて持ち上げる。


「大丈夫か……って気を失って……」


 アリマは魔法を解除して取り敢えず前に進み、難なくしてお化け屋敷の出口から外へ出た。



** ** * **



 外は休憩所となっていて右側にあるベンチにフラブを座らせるように下ろした。そしてアリマはその横に座りながら


「起きろ、フラブ君」


 という単調な合図を送る。それと共にフラブは夢から覚めたかのように目を開けて立ち上がると──獣のように周りを警戒する素振りをみせた。

 親の声よりも聞いたその合図は、フラブにとって地獄のスタートにあたる。


「座りなさい」


 右横から聞こえてきたその声にフラブは胸を撫で下ろしながらその方を振り向いた。そこには半分優しくて半分呆れた顔をしているアリマの姿があった。

 そのため安心した息を大きく吐きながら言う通りにベンチに腰を下ろした。


「意外にも苦手なんだな、お化け屋敷」


「確かにお化けは怖かったです。でも死ぬかと思いました……物理的に……」


「ああ、確か死人も出てるからな」


 その説明にフラブは思考ごと動きを硬直させて恐る恐る再びアリマの方を見る。今、アリマはその口から何と言っていた? 死人と聞こえた気がするが気のせいだと思い込んで聞き返す。


「は……?」


「自己責任で入れと注意書きされている。まだ開園前だから其の看板が無かっただけだ」


「あ、え……? よく潰れませんね……人が死んでるんですよ……?」


「だからこそ人気があるんだ。死と隣り合わせの緊張感がある故に其のスリルを味わいたいとか……まぁジェットコースターの類いも不備があれば死と隣り合わせだろう?」


 当然のように説明するアリマだが、フラブは困惑を包み隠せずに言葉が詰まった。その説明は屁理屈だと言えば屁理屈にあたる。


「それとこれとは違う気が…………あ……っと、オレンジジュース……下さい……」


 もう混乱のあまりに上手く言葉が見つからなくてジュースを求める。そしてアリマは収納魔法から預かっていたオレンジジュースを取り出してフラブに差し向けた。


「ありがとうございます」


 困惑しつつも感謝は忘れずに伝えるフラブはストローで一口分だけを飲んで一息ついた。初めての遊園地は楽しみと好奇心で溢れていて、それでお化け屋敷ならぬ殺人屋敷のお出ましだ。困惑するに決まっている。

 するとフラブの頭の中に、一つの嫌な予感が生まれた。


「……他の遊具は殺しに来たりしませんよね?」


「何を言う、全ての遊具は魔法が使用されている。故に全てとは言えないが大抵は殺しに来る。其れは全国共通だろう」


「……帰りませんか? 死ぬのは怖くないと言っても遊具で死ぬのは想像出来ませんよ……」


「否、仕事だと言っただろう。殺しに来ると分かっていたら容易に回避出来るからな。其れにもしフラブ君が死にそうになれば余は君を優先して助ける」


 フラブは心配そうな表情を浮かべるもオレンジジュースを一気に全て飲んだ。


「それは遠慮しときます。私なりに頑張りますよ、楽しめるように。あと人が多くて辛かったら教えて下さいね?」


 気づかいというよりは、楽しむのなら1人よりも2人でがいいという考えの元だ。何より折角の遊園地だからこそ出来る限りの時間を2人で楽しみたい。

 アリマは人混みが苦手だから、仕事以外はアリマも楽しめる場所で最大限に楽しもう! というのが一応フラブの考えだ。


 そして立ち上がるフラブは左側に置かれているゴミ箱にオレンジジュースの容器とストローを投げるように捨てた。全て外れることなくゴミ箱の中に綺麗に収まって、フラブはガッツポーズを取る。


「ああ。だがゴミ箱は炎系統の魔法が使えない稀有な者の為に置かれた物だ。余に言ってくれれば燃やしたぞ? 回収業者の手を余計に煩わせるな」


 そのアリマの一言でフラブの仕草から喜びのガッツポーズが消えた。


「……え、そうだったんですか? ですが何処にでも置いてますよね?」


 そう聞き返しながらアリマの方を振り返るも、その視界に映るアリマは人混みと仕事のことで表情が曇っているように見えた。


「次からは余に言え。君も炎系統が使えない稀有な変人だからな」


「一言多いですよ。それと次どこ行きます?」


 フラブは怒るも直ぐに切り替えて明るくはしゃいでキラキラした表情で問いながらアリマの左側に立つ。

 そのアリマは収納魔法を使って遊園地の地図を取り出して両手に広げた。


「一度全て見て回ろう。次は中央より少し上にあるメリーゴーランドへ行こうか」


 アリマはそう言って地図を収納魔法で仕舞いながら立ち上がり、フラブは目を輝かせていた。道中もアリマは周りを見て警戒を怠らず、フラブは目を輝かせながらアリマの右横に並んで歩いていた。


 メリーゴーランドに着くと、馬型の乗り物は正常に動作しているが寂しさが目に見えて分かる。


「アリマさん、乗ってみてくれませんか?」


「何故だ?」


「アリマさんが乗ってる姿を想像するだけで面白いからです」


「少しは嘘を吐け」 


 乗らずに周りを歩いて異変がないか確認した後に今度は北側にあるジェットコースターに来た。ジェットコースターには男性のスタッフと女性のスタッフが1人ずつで既に待ち構えていた。


「お乗りになりますか? 名家の当主様」


「否、遠慮しよう」


 男性店員が優しい表情で問うも、フラブが答える前にアリマが冷静に単調に答えた。


「……何故でしょうか、アリマさんが遊んでる姿を想像するだけで既に面白い……」


 フラブは真剣な表情でそう溢すとアリマはフラブの襟を掴み引き摺って北西に位置する迷路に移動した。

 迷路には既に女性スタッフさんが居て迷路の入り口の壁に凭れて座って熟睡していた。


「迷路ですね。面白い、受けて立ちましょう」


「まだ中には入らないぞ?」


 フラブが自信満々な真剣な表情をして迷路を見て言うもアリマはそう言って西側へ歩き出した。


「あ、そうですか」


 西側には舞台があって、アリマは何処よりも真剣な表情を浮かべている。


「フラブ君、此処も警戒を怠らず……」


 フラブは目を輝かせて観客席を下りて舞台の下まで行っていた。アリマはフラブの足元から茎を生やしてフラブを掴み勢い良く自身の元へ持って来た。


「余の側から離れるなと何度言えば分かるんだ?フラブ君」


 アリマは表情に出る程かなりお怒りで、フラブを見下ろしてして左腕に抱えて持って魔法を解除する。


「あ、え……す、すみません」


 フラブは冷や汗を流してアリマを見て言うもアリマはかなり怒っていて、そのままフラブを抱えて南西へと向かった。南西には動作している観覧車があり、男性スタッフさんが居て疲れているのか目の下にクマがあった。


「あ〜、こんにちわ〜、ご利用ありがとうございました……」


 それに同情だけはするアリマはフラブを左腕に抱えたままだった。


「観覧車か……」


 アリマは上を見上げると細部まで確認した後に中央より少し下にあるコーヒーカップへ向かった。

 そのコーヒーカップは停止していて、アリマは左腕にフラブを抱えたまま身軽に柵を乗り越えて中へ入る。


「……特に問題は無いな」


 アリマはコーヒーカップの中も確認し、反対側の柵を身軽に乗り越えて出てフラブを下ろす。


「フラブ君、行きたい場所は?」


 アリマは収納魔法から地図を取り出して両手に地図を広げた。フラブはアリマの左側から地図を横から覗き込むように見て、北東に位置するカフェを指す。


「ここでスイーツを食べたいです!」


「採用だ」


 即答するアリマは直ぐに収納魔法で地図を仕舞いフラブと共に歩き出した。


 そしてフラブとアリマはカフェへ移動するも、カフェは店員以外の人は居なかった。注文後に外にある複数ある白い丸い机の椅子に座り向いって真剣な表情で話をする。


「今回、事前に魔法爆弾が仕掛けられている可能性が高いのだが其れらしい物は見たか?」


「爆弾なら踏みました。お化け屋敷の地面が崩れた時に爆発してましたから。羽織物のお陰で無傷でしたけど」


「あれは予めの仕掛けだろう。余が他の道を通った時に其れらしき物は無かった」


 女性店員さんが御膳を持って歩いて来て、アリマとフラブが頼んだパフェやクレープ、コーヒーなどがフラブ達の机の上に置かれた。


「本当に依頼を引き受けて頂きありがとうございます。ヨヤギ家の当主様、シラ家の当主様」


 女性店員さんは優しい表情でそう言い、フラブは首を傾げる。


「私がシラ家の当主って知ってるんですか?」


 フラブが店員さんを見てそう問うと、店員さんは服のポケットに仕舞っていた紙を御膳を持ってない右手で取り出してフラブに見せる。ーーその紙はフラブの指名手配書で、フラブの詳細が書かれていた。


「懸賞金340万ですか……納得いきませんね」


 フラブは少しだけ眉を顰めてそんな言葉を溢す。

 そして話を聞いてもアリマは幸せそうにパフェをスプーンで食べていた。


「本当ですよね。この仕事を引き受けてくれた時点で悪人ではない事は定かですから」


 女性店員さんは紙を仕舞いながら言葉を溢した。


「本当に……指名手配されるならいっそのこと1億くらいあってほしいんですよ。アリマさんは360億でしたよね?」


 指名手配をされるなら、もっと多額の金を用意しろというのがフラブの見解だった。しかしその言葉にアリマはパフェを食べる手を止めてフラブの方を見る。


「否、380億に値上げされた。君が暴走して殺めてくれた処刑課を何故か余が殺めた判定になったらしい。其れと処刑課の者を生け捕ったからとか……最高管理者は一度殺すべきだな。色々無駄に加味された」


 アリマは淡々とそう言って再び幸せそうにパフェを食べ始め。女性店員さんは少し冷や汗を流して引き気味で店の中へと小走りで戻った。


「悪い人だと勘違いされた気がしますが……」


「……話しておこうか。フラブ君が指名手配されているのは何者かにそう誘導された可能性が高い」


 その冷淡とした真剣な言葉にフラブは食べる手を止めて目を見開きながらアリマを見やる。


「どういう事ですか……?」


「人を殺めない限り、指名手配されることなど基本的に有り得ないんだ。そして君はカケイ君と向かった際に饅頭の和菓子屋が急遽閉まっていたと言っただろう? その後、何処に行って誰と会った?」


「王都のカフェに行って処刑課と会いました……」


 フラブもハッと違和感に気づいたようで深刻そうな目でまたアリマを一瞥する。


「そう。つまり上手く出来過ぎているんだ。何故ナラミナという者が君を指名手配にしたのか……既に君が殺しているから聞き出せないが推測は出来る」


「……最初から処刑課は敵へ協力……いや、操られていたと言った方が言動的にも合いますね」


「そう言う事だ。ともなれば最高管理者と会いたくなるのは当たり前だろう。だがもし本当に協力、又は操られているのなら其れすらも罠の可能性が出てくる」


 アリマの言葉にフラブは腕を組んで右手を顎にあて深刻そうな表情で考え始めた。難しいことは得意ではないのだがアリマの説明は簡潔的でわかりやすい。


「此れは後で話そうか。フラブ君、今回のテロが起きるであろう時刻は詳しく記載されてなかった。未来予知の適性を持っている者が、遊園地でテロが起きて五千人が死んだ、という未来だけを見たらしい」


 アリマは真剣な表情を浮かべながら話を変えて、フラブは腕を下ろす。


「なるほど。つまりどう言う事ですか?」


「つまり、人命救助を優先してテロを起こした者を殺すのはついでだ。絶対に遊具は壊さずに終わらせなければ修復魔法を使ってもボランティアになる」


「完全に理解しました。人命救助は得意分野です」


「嘘を吐くな。爆発型の魔法は見つけ難い割に魔力を注ぐ程に威力が高まる。テロを起こすに此れ以上適した魔法は無い」


「……時刻、決まってないんですよね?」


「ああ。非常に困難だが、テロを起こす側の目線から考えると平均的に1番人が多い10時頃か16時頃だろうと推測する。だが困ったことに開園後は五千人は常に来場している」


 真剣に説明するアリマだが、フラブは少し気を抜いた表情で不思議そうに首を傾げる。


「人員足りますか? いくらアリマさんが人外でも、人が多ければ多いほど助かる依頼ですよね?」


「無論、絶対に足りないだろう。故に開園前に入らせてもらって一通り見ている」


 淡々としながらもアリマはそう言って再び幸せそうにパフェを食べ始めた。


「そうですか。では心置きなく楽しみましょう、人命救助を!」


 フラブはそう言って再び幸せそうにクレープを食べ始めた。



** ** *




 それからもフラブは暫くカフェでスイーツを幸せそうに食べていて開園時刻の9時となっている。


「凄いですね、私4時間近くスイーツを食べてますよ」


「ああ。余とて驚いた。フラブ君が永遠と絶えずにクレープやパフェを頼んで食べるものだから胃袋をブラックホールと交換したのかと思ったぞ」


 アリマは3時間前には左手に本を持って常に表情を変えずに読んでいて、フラブは4時間以上ペースも変えずに幸せそうにクレープやパフェを食べていた。


「甘いものはいくらでも食べれますから」


「確かに其れは分かるが…….食べすぎだろう」


 アリマは本からフラブに目線を移動させて言い、フラブは食べる手を止めて首を傾げる。


「そうですか? まだまだ腹四分目です」


「……そうか」


 アリマはそう言葉を溢して再び本に目線を移動させて読み始め。それに構わずフラブは再び幸せそうにクレープを食べ始めた。

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