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幸せへの選択を  作者: サカのうえ
第三章「幼き当主の蕾」
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第三章 終幕「完成後の家」

 ──完成した家は少しボロボロな民家みたいな家。

 その家の玄関前の外で左からアリマ、フラブ、アマネの順で横に並んで話をしていて、アツトは疲れから丸太の上で横になって熟睡していた。


「ありがとう!」


 嬉しそうにフラブは満面の笑みで目を輝かせて家を見て感謝を告げる。そのフラブを見て優しい表情をする幼いアマネはフラブの右横で右膝を地面につけてしゃがんだ。


「俺は帰りますが、もしアリマ兄様から何かされたら教えて下さいね。フラブ様」


 優しい声色で言いながら左手で微笑んでるフラブの頭を優しく撫でる。

 撫でられたことに嬉しさを隠しきれないフラブは明るい笑顔をしながら両手でアマネの左手を掴んだ。そしてその左手を自分で動かして撫でて更に嬉しそうに「へへっ!」とイタズラ気味の笑い声を溢す。


「フラブ様……」


 そんな微笑ましいフラブを見つめるアマネは右手でとフラブの頭を撫で始めた。それを側で見守っていたアリマは優しいアマネに不思議そうな目を向ける。


「フラブ君に様をつける必要はあるのか? アマネ」


 その問いにアマネは呆れたような目でアリマを見上げながらゆっくり立ち上がった。


「あるも何も、シラ家の当主様を様付けしないなど他の名家の当主以外許されないでしょう」


「……余の弟ながら良く其処まで真面目になれたな」


 らしいと言えばらしいのだが、流石に真面目すぎる答えにアリマも少し呆れたような視線を返す。

 しかし何故か真面目と言う評価にアマネは誇らしげな表情をして胸を張った。


「だからでしょう。それに真面目は悪い事ではありませんから」


「無論、真面目は良い事だ。余はアマネに感心しただけで深い意味は無い。故に余の代わりにヨヤギ家の当主を任せる事も視野に入れなければな」


 淡々としているその言葉にアマネは再び呆れるような目をアリマに向けた。


「俺にヨヤギ家の当主は重すぎます、務まりませんよ」


「だが余と比べれば適任ではないか?」


 平然として本気で思っていることを訊いてくるアリマに呆れて言葉が出ない。アリマは時折というのか常に己を卑下して生きているような気がする。


「アリマ兄様はちゃんと当主してますよ」


 フラブを撫でる手も止めてアマネはそう言うと転移魔法を使ってその場を後にした。眠ってるアツトはすぐにアリマが強制的に転移魔法で本邸に戻した。


「きえた! ねぇありまさん、どうやってるの?」


 フラブはアリマの左足に捕まって興味津々な表情でアリマを見上げる。


「秘密だ」


 アリマは無表情でフラブを見下ろしてそう言うとフラブは怒ったように頬を膨らませる。


「ふらぶあたまいいよ!」


「知るか」


 フラブの家が完成し、なんやかんや水も通して家具も次第に増えていった。



 ──それから数週間後、家の裏側の丸太の上に座って本を持って読んでいるアリマの右横にフラブは座っていた。


「アリマさん! フラブ、強くなる覚悟できたよ!」


「そうか」


 アリマは本から目を離さず単調に返事をして、フラブは優しい表情で右手を伸ばしてアリマの頭を優しく撫でた。


「何だ?」


 無表情ながら少し面倒くさそうにアリマは本を閉じて無表情でフラブの方を見る。


「フラブ強くなりたいの! アリマさんが覚悟が出来れば言えって言った! だからフラブを強くして!」


「分かった。其れならまずは木を1本壊してみろ」


 懸命な表情のフラブに優しく微笑んで読んでいる本を収納魔法で仕舞った。それにフラブは期待の愛覚ましを向けながら表情を明るくして笑顔になる。


「うん! フラブ頑張る!」



** ** * ** **



 それから6年後──化け物なのかフラブはようやく大きな木を1本、蹴って壊す事に成功した。


 そんなフラブはアリマが買った簡素な白い半袖と黒い長ズボンを着ていて身長が短期間で80センチから130センチまで成長している。


「魔法も覚えてきたか? フラブ君」


 家の裏側にある綺麗な木の机を対面に挟んでいる椅子に座ってアリマとフラブはお茶を飲んでいた。

 アリマは変わらずの灰色の着物の上から白い羽織物を着て下駄を履いている。そして髪は結んでおらず身長も変わらずの190センチと高身長。


「もう完璧です」


 フラブは誇らしげな表情をしながら湯呑みを丁寧に持って茶を一口飲む。


「完璧ではないだろう。君が余をお嫁さんにすると言っていた時期が懐かしく思うな……」


「は? 殺しますよ?」


「揶揄っただけだ、許せ。だが其処まで……」


「よくそこまで表情を変えずに揶揄えますね。第一、私はアリマさんに感謝はしてます。ですが何故そこまで鬼になれるのか……」


 そう疲れたような口調で溢すフラブは呆れるように軽く溜め息を吐き、それにアリマは表情を一つとして変えずに話しを始める。


「覚悟を問い、其れに応えて強くなりたいと豪語したのは君だ。あと此れからは簡易的な浮遊魔法や拘束魔法のみを使って創造魔法は使うな。魔力の消費が桁違いだからな」


「ですが創造魔法を使わなければ1人で獣魔物を倒せませんよ? ノルマが達成出来ません」


 アリマは変わらず無表情で、フラブも落ち着いて湯呑みを机の上に置く。そして収納魔法から左手で短剣を取り出してフラブの手前の机の上に置いた。


「何ですか、これ」


 不思議そうな表情を見せるフラブは受け取って両手に持ち、試しに机を斬りながら問う。


「其れは余からのプレゼントだ。喜べフラブ君」


 優しくも真剣な声色でそう言うアリマだが、それにフラブは驚きを隠さずに目を大きく見開いた。


「え!? アリマさんから日用品以外のプレゼントって……明日隕石でも……?」


「余も鬼ではない。創造魔法を使って君が魔力切れで魔物に殺されるのは感想に困るからな」


「……やっぱり1年後にどこか行くんですか?」


 曇っている表情での悲しそうな問いにアリマは優しい表情を浮かべた。ここからアリマが離れれば幼いフラブはまた1人になることが確定している。


「ああ。君に関する疑念も晴れた。其れに此処に長居するのは昔を……否、君まで処刑課に目をつけられてしまう可能性がある」


 ますます暗い表情をして顎を引くフラブはアリマへの罵倒の言葉を呑む。1人になりたくないと言ってしまえば己の弱さを受け入れてしまう気がして。


「そんな顔をするな。だが此処を出る時、必ず最初に余の元へ来い。いつでも歓迎する」


「はい。それにまだ一緒に居る時間はありますからね」


 アリマの優しい口調の言葉に少しだけ表情が晴れたフラブはそう答えた。辛い修行の日々でもそれは掛け替えのない日常であり、フラブの中では親愛が芽生えている。



 そんな日常もあったのだが47年後に父親アサヒトが持病でたおれて亡くなった。




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