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幸せへの選択を  作者: サカのうえ
第一章「ヨヤギの超越者」
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第二十話 嘘だって思いたかった

 大凡50年に1回の名家の当主会合が急に開かれ世間は騒がしくなった。沢山の報道陣がユフィルム家別邸を囲み、指名手配さへているアリマやフラブの為に処刑課も処刑課長を含めて大勢が外で待機。

 処刑課や報道陣は中で話されている内容を知りたくて緊張が走る最中、中の様子は和気藹々としていた。


「そう、敵の目的は名家の壊滅らしい。だから警戒体制を取らないといけないの」


 カミサキが全員に聞こえるような声で真剣に詳しく説明をした。


「……だがラサスも5段、アリマに限っては8段以上はあるだろ。フラブさんは3段だが……当主が死ぬ心配は考える必要が無いだろ」


「んーん! それが今回来た敵は5段以上なんだ! カナデも思ったより強かったらしーし!」


 そうサヤが楽しそうにも元気良く否定して手を腰に当てて何故か誇らしげに胸を張る。


「そう、カナデは情報以上の魔力量と魔法を使ってきた。練度も情報の倍以上。それに……妹が裏切った理由は大体予想がついてしまうのよ」


 カミサキは深刻そうな表情をしていてフラブは真剣な表情だがどこか考えが読めない。


「なるほどな。今回、アリマが出席して分家の2人を連れて来た理由……情報の信憑性を高めさせるためか?」


 そう真剣にも小首を傾げて問うアザヤはアリマの方を見ては微かに呆れが混ざっている。


「ああ。余は一応処刑課から指名手配されてるからな。其れで、信じてくれるのか?」


 そう言うアリマはどっちでも良いような余裕さが感じ取れてしまう。


「僕は信じるよ。当主たる者いつでも最悪を想定しろ、それがユフィルムの当主の心得だからね! でももちろん嘘というのもゼロじゃない、それは頭に入れとく!」


「同じく。元々アリマが指名手配されてる理由は納得がいかんしな。フラブさんも人を殺したとか言う話は聞かねぇ、だがそうなると……」


「かなりやばいね。外、処刑課とかが囲んでる。僕は嫁が殺される前に帰りたい」


 深刻そうにも楽しそうに言うラサスは最悪を想定した上でも面倒くさそうに椅子に凭れていた。


「安心は出来ないが……全てカミサキが対策済みだ」


 アリマの言葉にアザヤとラサスはカミサキを見て少し驚きつつ微笑んだ。


「そっか。どんな対策を?」


 揶揄うようにも面白そうにアリマを見て問うラサスだが、カミサキはゴミを見る目でラサスを見た。


「アリマにも協力をお願いしたのよ。全ての名家の本家や別邸問わず、座標指定でアリマの魔力で囲った後に指定した名家の人間以外を自動追尾でアリマの魔力で攻撃する人形も配置したわ」


 冷静に淡々と説明するカミサキだが、その場に居るほぼ全員がドン引くようにアリマを見て場が静まり返る。


「流石……ですね……鬼は訂正しましょう。化け物です」


「ああ。まぁアリマだからな……」


 何となくで理解したアザヤだがアリマを人間の範疇で捉えていない。


「魔力で囲う……?」


 そう化け物を見るような目でアリマを見ながら引き気味にそう言葉を溢した。


「否、余も人だ。此れでも敵が来る心配が無い理由にはならないだろう。其れに魔力を使う事自体は難しい事では無い」


 当然のように説明するアリマは自分がおかしい事に気づいていない化け物だった。


「いやいや……無理だから……どんだけの練度だよ……」


 そのラサスの言葉にアリマは無表情ながら全員からの人外判定に落ち込んで少し俯いた。


「それにあんた段位測定手加減してるでしょ? 毎回」


 ─段位測定──

専用の紙切れに自身の血を一滴滴らして行うもので、血は自身の力量、魔力量、知能、己の全てを測った合計を段位として表すもの。


「カミサキ姉、段位測定に手加減なんてあるわけが無いだろう」


 アリマはカミサキの方を振り返って淡々とそう答えるもカミサキは平然として小首を傾げる。


「あんた嘘が分かりやすいのよ。人に嘘を吐いたら罪悪感で自分がダメージを負うの良い加減治しなさい」


 特に分かりやすくないように見える嘘でもカミサキにだけは嘘がバレていた。


「え……? 何が?」


 訳も分からず問うフラブは戸惑いつつ困惑してカミサキを見て説明を求める。


「アリマが測ってる所を偶然見たら血を滴らす瞬間に自分の血の魔力を全て回収して測定してるのよ。それで8段、つまり魔力無しで8段よ」


 カミサキの言葉に、その場にいるカミサキとアリマ以外の全員が唖然として再び6秒場が静まり返った。


「滴れた瞬間に魔力を回収……?」


「嘘でしょ……」


 そして案の定、再び大多数がアリマを見て距離を取ろうとするような目でアリマの方を見る。


「……其れより本題に戻ろう。また話が逸れている」


 アリマの一言で切り替えてアザヤは深刻そうな表情でフラブの方を見る。


「そうだな。フラブさんに聞きたい。アルフェード教会、それも敵が仕組んだものなんだな?」


 深刻にもアザヤの真剣な問いにフラブは真剣な表情へと切り替える。


「はい。カケイ……友達が敵の情報交換の時に言ってました。そうなるとお母様達が処刑課に罪人として殺されたのも頷ける。敵の嘘の可能性もありますが」


「それってつまりどう言うこと? 僕にも分かりやすく!」


 適当に言うラサスは元々話を聞いていたのか微妙なラインで。フラブは再び呆れるようなゴミを見るような冷たい目でラサスを見た。


「此処からは当主のみで話そうか。外部に漏れれば面倒くさい話だからな」


 アリマが淡々としてそう言うとカミサキとサヤが頷いて部屋のドアからその場を後にした。


「フラブ様、私も失礼します」


 慎ましそうにフラブを見てそう言うキュサ、それにフラブは優しい表情でキュサの方を見る。


「ああ。外には出るなよ?」


 冷静にも心配するように真剣にそう答えて、それにキュサは優しい表情を浮かべた。


「承知致しました」


 そしてキュサも入ってきた左側にあるドアから部屋を後にする。


「じゃあ聞かせて貰おうかな。フラブちゃん?」


 上から目線も良いところだが、フラブはラサスを視界に移さないよう見ずに前を見ている。


「190年前、アルフェード教会に関わって私の母が処刑課に追われて父と母は亡くなりました。そこまでは理解頂けてると思います」


 その説明にアザヤは真剣に「続けてくれ」と相槌を打つとフラブは軽く頷いた。


「……アルフェード教会は私の家……シラ家を壊滅に追い込む目的で今回の敵が作ったのなら処刑課を利用して社会的な壊滅にまで持っていける。ですがそれだと私のお兄様がその敵に回ってる事になる……」


 そう説明するフラブは次第に表情が暗くなっていき机に両拳を置いて微かに俯く。


「其れだと納得がいかない……か。……余は敵の本当の目的は別に有ると推測する」


「別の目的……?」


 そう不思議そうに問うラサスは常に椅子に凭れているままだった。


「名家壊滅は目的のための通過点ではなく違うものではないか。そうなればシラ・コウファ君がフラブ君の敵に回る裏付けにもなる」


 冷静にも淡々として説明をするアリマだが、あることに気がついてフラブの方を見た。


「……フラブ君。少しだけ静かに」


 そのアリマの淡々とした言葉と共に、フラブの世界から音が消えた。言葉と共にアリマがフラブ限定に魔法で聴力を強奪したからだろう。それにフラブは理解が追いつかずに少し混乱するも辺りを見渡して。アリマとアザヤとラサスが深刻な表現で話し合っているのを確認して黙り込んだ。

 ──それから約二十秒後、フラブの聴覚が元に戻った。


「……っ何を話していたんですか?」


 そう不安そうに問うフラブだが、明らかにアザヤとラサスが深刻な表情でフラブを見ていた。


「……フラブさん、確かにこれは君は知らない方が良いかもしれない」


 そう恐る恐る言うアザヤは信じられないような化け物を見るような目でフラブの方をみている。


「……もし些細な事でも自身に異変を感じたら直ぐに教えてほしい。アリマの言ってる事が本当ならば……いや……」


 そう言うラサスは椅子には凭れず真剣な表情でそう言って腕を組んで右手を顎に当てて考え始めた。


「な、何が……? 何故そんなに深刻そうな……?」


 理解が追いつかないフラブは変わらず困惑したままアリマの方を見て説明を求める。


「フラブ君、聞かないでくれ。君に嘘を吐く事だけは極力したくない」


 アリマはフラブの疑問を遮っても淡々として悔い気味で否定した。だが意外にもフラブはそれに苦しそうに微笑んで微かに俯いた。


「……分かりました、いつか私に教えれる時が来たら教えて下さい。こう見えて持久戦は結構得意ですから」


「其れは約束しよう。教えれる時か……」


 微かに表情が曇るアリマだが、ラサスは真剣な表情でアリマを見る。


「……本当らしいね。フラブちゃんの反応を見る限り。アリマ、あとでユフィルム家に来てほしい」


 だが意外にもアリマは無表情で「嫌だ」と言葉を溢して外方を向いた。


「え……?」


 そのアリマの拒否でラサスは少し困惑して首を傾げてアリマを見る。


「君の家に行くと女性とすれ違う度に何故か女性に囲まれる。其れを払おうとすれば加減を間違えて殺してしまいそうで歩く事さえ大変なんだ……」


「あ、そうか、ごめんね? 前に聞いた時アリマの中でユフィルム家に居る女性って確か葉にくっつく虫みたいなイメージだって言ってたけど……あぁ、そう言う事か……」


 そう納得したラサスは呆れるように目を瞑って少し俯き右手で軽く頭を抱えた。


「それはお前が悪いだろ、アリマ。お前の外見のスペックの高さは指名手配さえ跳ね除ける」


「あ、でも見てみたいですね……っアリマさんが困ってる姿っ!」


 フラブは想像しただけで両手で腹を抱えて必死に笑いを堪えていた。


「笑い事では無いんだぞ……余は他と比べて多少身長が高い程度、顔も他と大差無いと考える」


「大差ない……? 良く言えるね……ねぇフラブちゃん。アリマ顔は良い方だよね?」


「え?」


 そのラサスの問いにフラブは腕を組んで右手を顎に当てて考え始めた。


「考えた事なかったな……」


 フラブはアリマの顔を見てると、アリマと目が合って嫌そうな表情へと変わった。


「アリマさんの顔を見ると180年前を思い出して殴りたくなって来ました。殴って良いですか?」


「人に許可を取る馬鹿はフラブ君だけだ。君が余を殴っても余にはダメージすら加算されない。好きなだけ殴れば良い」


 アリマは平然として答えるとアザヤは呆れるような目でアリマを向ける。


「いや理不尽だろ……」


「熱がでて倒れれば体に電流を流して起こし、獣魔物を殺せなかったら鍛える量が1体ずつ倍に増えて追加でご飯抜き、それプラス家を建てる木は自分で壊して取れと強要してくる……それを約10年間。理不尽では無い筈です」


 フラブは怒りを堪えているのか表情を一つとして変えずに淡々と言いアリマの方を見る。それにアザヤとラサスはドン引くようなゴミを見るような目でアリマを見た。


「其れで今の君が居るのだろう。君は強くなれた、君が余に感謝をして余が感謝を受け取る権利があるくらいにな」


「確かに感謝はしてますが殺意とは別です。それで話を戻しますが、確かにアリマさんの顔立ち、外見はとても良い方だと思いますよ。外見は」


 フラブの言葉にアリマは首を傾げて羽織物の内側から腕を組んで左手を顎に当てる。


「にしても話がまた逸れているな。3回目だぞ」


「アリマ、ユフィルム本邸の書庫に欲しい情報が載ってるかもしれない。だから会合が終わったらユフィルム家においでよ」


 ラサスはアリマを見て言い。その言葉に対してアザヤは腕を組みながら「ん?」と言ってラサスを見る。


「幾ら名家の中で情報を担当してるユフィルムでもこの事で知恵を担当してるヨヤギに勝てる物があるのか?」


「あるとは断言出来ないさ。でも見てみなきゃ分からないからね! 何事も」


「……分かった。案内は任せる」


 アリマが淡々して了承するも、フラブは何かが脳裏を過ったかのように何かを疑問に思いアリマを見る。


「少し待って下さい。名家の知恵とか情報とか担当してるって……」


「ああ、名家は4つ、それぞれ魔力の発展に大きく影響を与えた役割があるんだ。俺達サトウは武力、ヨヤギは知恵、ユフィルムは情報、シラは統率。アリマのせいで俺たちの武力は問題視されてるがな」


 アリマの代わりにアザヤが丁寧に詳しく教え、フラブは理解したような表情でアザヤを見る。


「そうなんですか……そう言えば戦争ってどんな感じで戦うんですか? 国同士仲が悪いんですか?」


 そう問うフラブは殆ど森に居た為戦争とは程遠い生活を送っていた世間知らず。


「まず、王国と帝国と公国と……皇御国とか、共和国ももちろん。其々なんだが時が経つにつれ上の人間が欲深くなってんだ。つまり戦争はいつの時代も無くならないって事だな」


 微かに嫌そうな表情を浮かべて俯いているアザヤは軽く腕を組んでいた。


「補足すると、兵器は人其の物だ。人が魔法を使って人が魔道具を使う。其れで争い、血が流れる。実にくだらない無意味な技術と犠牲、理解し難いな」


 フラブを見ながらもアリマは何処か哀しげな表情で説明を補足した。


「別の争いで言うのなら処刑課だ。彼等の近年での行いは道徳にも反している。だからこそ敵を撃つのに処刑課は味方につけたい最重要手札。だが話し合いは不可能に近い、故に処刑課全員が集まってるこの会合の外。会合の後が絶好の機会なんだ」


 違和感なく話を変えるアリマは淡々と説明するとラサスは驚くような表情でアリマを見る。


「まさか本当の目的は処刑課に来てもらうこと……?」


「否、其れはついでだ。カミサキ姉たちにも伝えてはいない。関われば最悪処刑課に目をつけられる事態になるだろう。迷惑を掛けるワケにはいかない」


 ラサスは感心したような表情を浮かべ「そこまで考えてるんだ……」と言葉を溢した。


「ですが処刑課が応じるかは別の問題でしょう。指名手配された私とアリマさんは見られた瞬間殺しにかかってくると思います」


 そう問うフラブも常に冷静で机の上で軽く手を組んで真っ直ぐアリマを見る。


「最悪、多少手荒な手段を用いる」


「……私が手伝うことは?」


 フラブは真剣な表情でアリマを見て問うと、アリマはフラブを見て驚く様に微かに目を見開いた。


「フラブ君……成長したな」


「御託は結構です。私はアリマさんと同じ、既に指名手配されてる身。ならば……」


 フラブは急に思い出したかの様にハッとして、慌てて席を立ち上がった。──すると突然外から壁を突き破って大量の魔銃弾が室内に発砲される。


「は……?」


 ラサスが驚く様な表情でそう言葉を溢し、後ろを向きながら席を立つ。

 だがフラブは周りが動く前に銃弾を気にせず颯爽とその場で屈んで地面に右手を当て、弾を防ぐように大きい鉄の壁を創造した。


「アリマさん! 今すぐここを離れて3つ目の分家に行って下さい!」


 部屋の壁と同じ大きさの鉄の壁が銃弾を永遠と防ぎ続ける。そう大声で言うフラブは止まない銃弾に険しい表情を浮かべた。


「阻害系の結界が破られてるっ! ──相手も5段以上……怪物級だッ!」


 突然の銃声と銃弾──その光景にラサスは驚きつつも呆然として言葉を溢し。アザヤは険しい表情を浮かべて席から立ち上がり急いでドアから部屋を出た。


「アリマさん、情報は不確かでした。ただそれだけの事です! ──敵と処刑課は既に手を組んでいる!」


 その慌てているフラブの言葉にアリマは驚くような表情でフラブの方を見る。


「そんな事を……どうして君が言い切れる……?」


 ─ 誰しも考える訳がない……対人において絶対正義主義の処刑課が……人を平然と殺す敵と手を組む?


 そう考え始めるアリマだがフラブの方を見て状況と何かを察する。


 ─ いや、有り得るのか……? 何故今まで考えてこなかった……その線を……


 アリマは真剣にも驚きを仕舞って考えるが状況も相まって結論が纏まらない。


「説明はあとです! この壁も長くは持たない! 急いで下さい!」


 それにラサスは深刻そうな表情を浮かべながら冷静に転移魔法で颯爽とその場を後にする。それに続いてアリマは深く考えながら部屋のドアからその場を後にした。

 ──それで部屋にフラブのみが取り残された。


「……これで良いんですよね? お兄様」


 微かに暗い声色でそう言うフラブは鉄の壁を解除して地面から手を離しゆっくり立ち上がる。


「うん。4日ぶり? まぁこれでフラブ、君と話の続きが出来るね」


 背後からコウファの声が聞こえ、同時にコウファは背後からフラブの右肩に右手を置いた。


「あの時……アリマさんが来る前にお兄様に脅されましたから。魔力で合図をだした時、キヨリちゃんとコヨリちゃん達をいつでも殺せる状況にある。さっきやっと意味が分かりました。本当に悪趣味ですよ」


 フラブは左後ろに居るコウファを強く睨むが、抵抗せず動かない。コウファはフラブの肩に腕を回す様にフラブの左手側に横に並ぶ。


「そうだね。でも今回来た目的の半分は兄としてだ。フラブ、君はどうしたい?」


 気楽そうな声色にも微かに悲しさが混ざっているのが聞いていて分かる。それにフラブは理解が出来ずに「は?」と言葉を溢しながら目を少し見開いた。


「どうしたい……? 質問の意味が分かりません」


「……フラブ、今までで人を殺した事はある?」


 微かに声で怯えるように問うコウファの手は微かに震えていた。


「ありませんよ……何なんですか?」


「フラブもあるんだよ。人を殺した事がね」


 そのコウファの言葉に驚きと怒りが混じってフラブは微かに険しい表情を浮かべる。


「ありません! さっきから何言って……」


 見て分かる程に怒りを表情にまで顕にしつつコウファの方を振り返る。──それでもコウファは何故か悲しそうな苦しそうな表情を浮かべていた。それにフラブは驚くように大きく目を見開く。


「待って下さい……も? も、って何ですか? お兄様、人を殺したことが……」


「あるよ。アユとアマネを殺したのは僕だから」


 コウファのその言葉と共にフラブは一瞬で表情が凍って暗くなる。そして右手に鉄剣を出してコウファを斬りかかろうとした。


「君じゃ僕には勝てない。だから話を聞いて」


 だがコウファは左手でフラブの鉄剣を軽々と受け止めて軽々と破壊した。


「──っ! 嘘だ……嘘だって言って下さい! お兄様は何がしたい……! 何で貴方がそんなに悲しそうな顔をするんですか……っ!」


 苦しそうに問い詰めるフラブだが、コウファは悲しんでるのか少し俯いているようにも見える。──それにコウファは左手でとても強くも優しくフラブの右手首を掴んだ。


「その選択しか僕には無いんだよ……」


 コウファは少し目を細めて一滴の涙を流し、それにフラブはそれに大きく目を見開く。


「は……?」


「選ぶ事すら出来ない……! させてくれない! フラブ……僕は君の味方だよね……?」


 フラブは状況も意味も理解出来ず、ただただ黙って話を聞いていた。

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