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幸せへの選択を  作者: サカのうえ
第一章「ヨヤギの超越者」
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第十五話 望まぬ再会

 その頃、──タナカとカケイは結界が張られたアリトの部屋の右側に位置する部屋にいた。カケイの腕は治っていたのだが。

 ──200年前と殆ど変わらない姿のココアがドアの前に佇んで居た。タナカはカケイを守る様にカケイの前に右手を出して睨む様にココアを警戒する。


「…………何で居るんかは別として。生きてたんか、ココアちゃん」


「んーまぁ人形だからね。あれくらいじゃ死なないって。ナラメは覚えてる? 安心して、あいつはちゃんと死んだから」


 悠々として嬉しそうに言うココアの髪から灰色の部分は消えていた。


「僕もナラメは嫌いだっから、別にナラメの復讐なんかじゃないよ」


 カケイは上手く状況について行けずココアを見て少し目を見開く。


「兄さん……なんでここに……?」


「ああ、僕はね、ずぅっーと考えたんだ。どうしたらカケイのあれ以上の絶望した表情を見れるのかなーって」


「相変わらず悪趣味やな、ココアちゃん」


 カケイは恐怖と驚きでダンマリとして、タナカさえもココアから来る殺気に冷や汗を流す。


「頑張って成長したんだよ。タナカ、お前に負けたあの時から200年間ずっと努力したんだ。そしたらさ、5段くらいには強くなれたんだよね」


 ココアの平然とした言葉に、タナカは驚いて大きく目を見開いた。


「……っ! カケイ君、逃げろ。俺は魔法がバレとる、勝算がゼロや」


 タナカの言葉にカケイは200年前の光景を思い出し、微かに表情が暗くなる。


「ふざけるな、タナカ」


 カケイはそう言いながらタナカの右腕を振り払い、タナカの右側に並んで立ち止まる。


「なっ……!」


「カケイも守られるだけのお姫様じゃないって。でもそーなると2人、殺しがいがあるよね」


 ──火炎魔法「獄」


 ココアが手を翳さずに魔法を使うと部屋が炎に呑まれタナカとカケイの体に直接火がついた。


 ──氷凍魔法「囲氷」


 カケイも手を翳すに魔法を使い、自分自身のみを覆う球体の様な薄い氷のバリアが張りココアの炎を防ぐ。


「ナイス、カケイ君!」


 タナカはトランプカードのスペードのキングを瞬時に右手の人差し指と中指間に出して自身の体についた炎に当てようとする。

 ──だがココアは瞬時に火炎魔法を解いた。


「やっぱ範囲攻撃じゃ駄目かぁ、ねぇどうする? 場所変える? 室内じゃ殺り難いよ」


「兄さん……本当に敵対しなきゃ駄目なのか?俺ぁ兄さんが敵って信じたくねぇよ」


「は……? 僕が君を本気で殺しに来てるのに君は僕を殺しに来てくれないわけ? そんなの不公平だろ、お前だけ楽しむなよ」


 表情が暗いカケイに対してココアは怒り、左拳に氷を纏い、右拳に炎を纏う。


 ─ 屋上からフラブさんの魔力っ!? 屋上は巻き込めん。かと言って室内は存分動けへんし……


 タナカは難しく考えるが、考えが纏まるより先にココアがタナカを目掛けて走り出し拳を振るった。

 ──それをカケイが横から氷で防ぎ攻撃したり、タナカが避けてトランプカードの発動で攻防が続く。


 ──マジック魔法「出現」


 タナカが魔法を使うと空中に8枚のトランプカードがバラバラに出現する。それを見たココアの動きが一瞬だけ止まった。タナカはその一瞬の動きを見逃さず、スペードのキングを一直線に素早くココアに投げつける。


「空中のはフェイントか……っ!」


 ココアは咄嗟に姿勢を低くして避け、カケイに向かって走り出す。だが避けた瞬間にクラブの6が空中のトランプカードと位置が交代された。


 カケイが氷で分厚い本を作って右手に持ち、ココアに向かって上から本の角を振り下ろす。


 ココアはそれを悠々と避けて、カケイに向かって炎を纏った左腕の拳で殴りかかった。だがカケイは避けず怯まず、タナカが位置を交代したスペードのキングが空中からカケイに向かって電光石火の速さで遅いかかる。


 スペードのキングとココアの左拳がカケイに到着する寸前、カケイとタナカの位置が交代され。タナカはスペードのキングを右手の人差し指と中指で掴み、ココアの左拳に向けて翳す。

 ──ココアは瞬時に判断し自身の右拳でタナカの腹部を殴りかかる。それと同時にココアもスペードのキングを左拳で攻撃してしまう。


 ──氷雪魔法「百矢攻防」


 カケイは透明に近い氷でタナカを守る丸いバリアを作成、タナカは傷を追わず。ついでに100本にも及ぶ1本20センチの氷矢を作り上げてココアを囲う様に構えた。


「これが2対1の強さや、ココアちゃん」


 ココアの額にはスペードのマークが現れ、ココアは苦しみだして3歩程後ろに退がる。


「……良いっ、ねぇ……! だけど緩すぎる……タナカ、お前魔力量、昔より減ってんだろ? どの魔法でも威力は魔力量に比例するもんね……?」


「……もう気づいたん? これは俺に掛けられた処刑課のクソの術や」


 タナカはそう言いながら着物の裾を軽く開け、カケイとココアに胸元を見せる。カケイはそれに驚きを隠せずに目を見開く。


「──っ! それは……?」


 ──タナカの胸元に刻まれたのは薄気味悪いドス黒く気味が悪い刻印、それは皮膚や細胞まで貫通して心臓に届いていた。それにココアも少し目を見開いて恐る恐る口を開く。


「それって……掛けられたら魔法が……弱くなるあの刻印……?」


「そう。せやから俺は分家に匿われるめっちゃ前、130年前くらいから最大魔力量が4分の1に減って練度も下げられたんよ」


 タナカは少し悲しそうな表情を見せるが、以外にもココアは悔しそうに見える。


「何で万全の状態じゃないのに……僕がお前に再戦を挑まないといけない……? 悔しいから頑張った! カケイの本当の絶望を夢見た! くそ…っ!」


 そして微かに俯きながら悔しそうな表情を浮かべて拳を強く握る。


「……タナカ、1つ聞きたい。今、無理してたのか?」


 カケイが真剣な表情で問い詰める様にタナカに問うもタナカは優しい表情を浮かべた。


「さぁ? それより早く構えな、ココアちゃん。まだ戦いは終わってへんよ」


 タナカは冷静にココアを見てそう言いココアに魔法を構える。ココアは歯を食いしばり、再び全力で氷を右拳に纏って黄色い炎を左拳に纏った。

 ──そしてココアはタナカを目掛けて全速力で走り、拳を振るう。


 ──マジック魔法「位置交代」


 すると突然タナカとカケイの位置が入れ替わった。

カケイは氷魔法で作った全開の傘をココアに向けて拳をガードする。その隙でタナカがハートの1をココアに投げた。


 ─ 今度はハートの1、なら入れ替えは……


 ココアは考えようとするが、その間さえタナカとカケイには隙に変換される。ハートの1と空中の囮のトランプカードが入れ替わり、それをココアは咄嗟に警戒した。だがカケイが傘をそのまま銃に変形してココアに向かって乱射する。


「──っ! 鬱陶しい!」


 だが弾丸はココアの右手から出た氷魔法で全て凍り、それに気づいたカケイは傘を閉じてココアに傘で殴りかかる。

 ──それを援護するようにタナカはずっとダイアの3を右手の人差し指と中指の間に持って注意を少しでも自身に向けた。

 

 ─ タナカの所為で魔法は思う様に使えない、でも攻撃を止めたらカケイに殺される!


 ココアは考えながら必死にカケイをカケイの傘を避ける。だがカケイのその氷の傘と動きを見て悠々と笑みを浮かべた。


「弱いよ、カケイ。それじゃあ君は僕を殺せない」


 ココアは悠々とカケイの傘を右手で受け止めて、破壊魔法で破壊する。


「──っ!」


 ─ やばい! 戦況が動く! カケイ君と距離がある…….位置移動は無理や……っ!


 タナカはそう考え、カケイと自身の位置を交代してダイアの3をココアに翳す。


「それを読んでたよ」


 ダイアの3は見事にココアの魔法に触れるも、ココアは躊躇わず凍っている右手をタナカの腹部に当てる。


「──ッ! 逃げろ……カケイ君っ……!」


 それにタナカは目を大きく見開き、ココアを睨みながら少し声を荒げる。


「──さようなら、タナカさん」


 ココアがそう言った瞬間、タナカの全身が一瞬で氷へと変換された。ココアは躊躇いすらなくその氷を蹴って破壊魔法で跡形なく破壊する──。

 それを見たカケイは大きく目を見開いて瞳を震わせながら呆然と立ち止まった。


「──タナカッ!」

 

「最初からこーしたら良かった。人は弱ければ容易く死ぬ。死んだら魔法は解けるからね」


 カケイは次第に表情が暗くなり、ココアに向けて溢れ出る程の殺気と伴い、ココアを強く睨む。ココアは笑みを浮かべながらカケイの方を振り向き笑みを浮かべた。


「タナカはさ。カケイを逃がそうとしてたよね。だから君がそれを聞いていたら、多分タナカは死ななかったんじゃない?」


 そのココアの額からはスペードのマークも消えていて、それはタナカの死を意味していた。


「まぁ……時間稼ぎも鬱陶しいだけか。次はお前だよ、カケイ。頑張って絶望しろよ?」



 ──その頃、カミサキは外の現状に息を呑んで声色が微かに暗くなった。


「タナカとカケイが白い奴と戦い、──タナカさんが殺されたわ」


「……そうか。タナカはアマネと同じ4段だった筈だ、嫌な予感がするな」


「まだ戦いは続いてる。敵の段位が読めない以上、あんたは早く結界から出る事を優先しなさい」


「不可能だ。出るだけなら可能だがアリトを巻き添えで殺してしまう」


「あんたの魔力で覆えばいいでしょ。アリトを」


「…………盲点だった。あと10分持ち堪えろとフラブ君とカケイ君に伝える事は?」


「無理。通信機も交換してないしそんな機能無いわ。情報だけ説明するとカケイはあんたが居る部屋の右横の部屋で戦ってる、フラブは屋上」


「分かった」



 ──その頃アマネは鞘ごとカナデに斬りかかるも避けられ、その隙をフラブが木剣で斬りかかる、だがそれも避けられる。だがカナデは避けたり受け止めたりする事に全集中をして一向に攻撃して来ない。そこでフラブは何かを察するように違和感に気がついた。


 ─ これは時間稼ぎ……?


 だが違う場合も考えて剣を振るう手を絶対に止めなかった。


「フラブ、魔力の消費は抑えろ! 何か嫌な予感がするッ!」


「同感だ」


 フラブとアマネは互いに連携をとりながら勢い良くカナデに剣を振り続ける。


「……シラ・フラブ、貴女と敵対するのは残念だ」


 カナデは右手にアマネが持つ刀の鞘を握り、左手にフラブの木剣を受け止めて握る。──それにアマネは険しい表情でカナデを睨み、アマネとフラブが力を込めるも微動だに動かない。


「は……? 急になんだ……」


「もう時間稼ぎは終わったから」


 カナデがそう言った瞬間フラブは上空から溢れる殺意を感じ取った。その殺意はカナデから向けられるものじゃない。


 ──咄嗟の判断でフラブは魔法を解除し地面を蹴ってアマネに突進し後ろへと退かす。

 するとアマネが元々居た場所に、アマネにだけに的確な殺意を持って一直線の光線が斜め上空から撃たれていた。──だがそれはフラブの右足の脹脛辺りに命中して貫かれそこから血が流れ始める。


「──っ!」


 フラブは痛々しい表情を見せるが、決して大きい悲鳴はあげない。


「──ッ何で傷ついてまで俺を庇う!」


 それにアマネは驚き目を大きく見開いくも、フラブは気にせず直ぐ様に立ち上がる。


「君ごときが僕の妹に好意を持つとか、あまり巫山戯るな。ヨヤギ・アマネ」


 その男は深く白いフードを被っており、アマネに向けていた光線を出した右手の人差し指を下ろす。


「……嘘……ですよね……その声……変わらない? なんで……お兄、様……?」


 フラブは隠せない驚きもついていけない状況で目を大きく見開いて男の方をゆっくり振り向いた。


「嘘じゃないよ。久しぶり、フラブ」


 白いローブを着ている男はそう言いながら自身が被っているフードを脱ぐ。髪は短く黄色に毛先だけ黒の髪色。青年程の見た目の男性で目は黒色。身長は175センチ。──フラブはその姿にただ唖然として白いフードを被っていた男性を見上げている。


「で、今回僕は来る予定なかったんだよ。でも可憐な花につく蛆虫の駆除をしなきゃだから」


 白いフードを被っていた男性、シラ・コウファは殺意を込めてアマネを強く睨みつけている。そのアマネは異常なまでの殺意を感じ取ってフラブを横に座らせて急いで立ち上がる。コウファは右腕を自身の前に出してアマネに向かって右手を翳した。


「許してね、愛しいフラブ」


 アマネはコウファからの異常なまでの殺意を感鞘から刀を勢い良く抜いて刀を右手に持つ。コウファは電光石火の如く光を混ぜた電気をアマネに放った。


 ──刀術奥義「刀芯」


 アマネは強く構えるわけでも無く刀を横に持ち左手を刃に添える。



 ──その頃、アリマは左手をアリトに翳してアリトの周りを自身の魔力で囲う。それにアリトは目を輝かせて嬉しそうに優しい表情でアリマを見上げた。


「……兄様の魔力、暖かいけど鋭くて好きです」


「感想など聞いていない」


 アリマは通信を繋げたまま部屋中をアリトとは別で自身の魔力で覆い、右手をドアがあった壁に当てる。


「ねぇ、アマネの刀術って何処の流派なの?」


 突然、無言だったカミサキがアリマに問い。アリマは壁を触って確かめていた。


「アマネは流派など所属していない」


「え……それ弱いんじゃ……4段あったわよね?」


「ああ。アマネは異常なんだ」


「あんたに異常って言われるなんて……」


「故にアマネの刀は毒流魔法を重視してのものだ。初見で対策出来る者などそういないだろう。2回目は別としてな。俺はまず毒など効かないが」


「つまり初見殺しの技ね……高みの見物と行きましょうか」


 少し暗い声色でそう言うカミサキはどこか悲しそうにも聞こえてしまう。



 ──そして屋上ではコウファがアマネに放った、光を混ぜた電気は逸らされる事なく直撃し、霧のよう煙が立つ。風で煙が晴れて来たときアマネは無傷で悠々と変わらず刀を横にしてそこに立っていた。

 ──だが何故かコウファの左腕の前腕の服が一直線に破れ擦り傷が出来る。


「へぇ……僕の魔法を喰らって無傷なんて凄いね。僕に傷もつけちゃうか。でもフラブの前で格好つけなくていいよ。お兄ちゃんがつけるから」


 カナデは足手纏いを避けているのかアマネたちとは距離をとったまま攻撃して来ない。


「貴方がフラブのお兄さんですか。挨拶が遅れました。俺はヨヤギ・アマネ。心の底からフラブを愛しています」


「……は? 巫山戯るなよ。愚物が。お前みたいな完璧な奴、裏があるって相場が決まってるんだよ」


 コウファはアマネに対して物凄く怒りを込めていて強く睨みつけている。そしてフラブは脹脛から血が出てるが、痛みを堪えてアマネの右前に立ってコウファを見上げる。


「お兄様、どうやってまだ生きていたのか今は問いません……ですがアマネに謝って下さい! 人を見た目で決めつけるなど……っ! それに私は少なくともアマネに好感は抱いています!」


 フラブは恥ずかしそうに少し顔を赤くしながらコウファに向けて大きい声でそう発言した。ただそれにアマネは嬉しそうに頬を赤らめてフラブを見つめている。対にコウファは嫌そうな理解できないような焦りを交えた表情を見せる。


「フ、フラブ? 相手を考えろ……? そんな優男みたいな奴……そもそも何処が良いんだ…?」


「何やってるんですか……コウファ様……殺しに来たんでしょう……」


 それにカナデは呆れるような表情で右手で軽く頭を抱えた。


「……っ優しい所! 一緒に戦ってくれる所! 私をあ、愛してるって言ってくれる所です……!」


「それならお兄ちゃんも当てはまるもん!」


「もん……?」


 カナデだけ変に進む状況に訳も分からず取り残されており。フラブは恥ずかしそうにするも真剣な表情でコウファを見上げている。


「お兄様は家族馬鹿なだけです!」


「そんな……僕、帰るよ……もう」


 コウファは1人で勝手に落ち込み、カナデは右手に火球を出し怒ってコウファに魔法の火球を豪速球で投げる。だがコウファは簡単に火球を左手の甲で弾いて消し去り、号泣していた。フラブは切り替えて真剣な深刻そうな表情でコウファを見上げる。


「フラブ、そんなに俺の事を想ってくれていたのか」


 急にアマネが嬉しそうにフラブを見て言い、フラブは勢い良くアマネの方を振り返った。


「……っち、違う! これはその……え〜っと……」


 フラブとアマネが顔を赤く染めてる間にコウファは我に返り涙を止める。


「そうだ、僕は最悪フラブも殺しに来たんだった。おい愚物! ──僕は6段を所持している、その上で僕と戦える覚悟はあるのか?」


「6段……っ? ……っ俺の2つも上か……受けて立とう、俺は逃げない」 


 コウファはそれに優しく微笑みゆっくり屋上の地面へとカナデの右横に降りる。アマネは真剣な表情で右手に持った刀を構えて強く地面を蹴りコウファに向かって颯爽と走り出した。


「心意気は良い、でも君じゃ僕に勝つのは無理かな」


 アマネは柄を両手で持ち、右上からコウファに向けて刃を振り翳す。だがそれはコウファの左手の甲で悠々と受け止めた。


「……っ流石だな!」


 ──毒流魔法「血走」


 アマネはコウファに先手を撃たれない様、先程つけた擦り傷に魔法を使う。コウファの左腕が切り傷を起点に次第に紫色に変色し、それに気づいたコウファは刀を悠々と弾いて振り払った。


「……毒か」


 コウファはそう言って切り傷から自身の左腕内部に電気を流し毒を相殺した。それにアマネは険しい表情でコウファを睨みつける。


「……僕等はヨヤギ・アリマが結界から出たら逃げなきゃなんだよね。君は確かにフラブに見合うくらいには強い。だからやっぱり面倒なのは避けたい。カナデ、本気を出して良いよ」


 コウファが優しい口調でそう言った直後、カナデの空気が冷たく変わった。


「っカナデ姉……?」


「僕はフラブと話したい事があるんだ。アマネの相手は頼んだから」


 直後、コウファがアマネの前から消えてフラブの背後に現れてフラブの左肩を右手で掴む。


「──なっ! お兄様……!」


 フラブは急いで振り返るが、何事もなくそれにコウファは優しく微笑んでいた。


 アマネはカナデの空気が異常だと感じてカナデに刀を構えながら強く睨みつける。それでもカナデは無表情で、それでいて実力が読めない。


「こうして話すのは久しぶりだな。カナデ姉」


「なら刀を下ろしても良いよ。殺すけど」


 ──神聖魔法「纏鎧」


 カナデが魔法を使うと、カナデの全身が神々しい鉄の鎧に包まれて剣が握られる。カナデの魔力量が人間の力で測定出来ない程にまで膨れ上がり、アマネは無意識に片足退がり冷や汗を流した。


「この魔力量……ずっと隠してたのか……」


「だって最大魔力量が多かったらカミサキ姉様にこき使われる。私は分家も本家もヨヤギ家が大嫌いだから」



 ──200年前、ヨヤギ・カナデまだ幼い頃。


 3畳の自室、床に敷かれた布団に勉強机と椅子にあとは棚しか無い素朴な部屋。

 夜遅くまでカナデは机に向かって勉強していて、横から気配がなく急にカミサキがカナデに声をかけてきた。


「好きなの? 勉強、毎日してるわよね?」


「──っびっくりしたわ……姉様、気配消すのやめて下さらない?」


 肩をビクッと震わせながら頼むカナデだが、カミサキは真剣な表情を浮かべた。


「似合わないわ」


「え?」


「あんたの口調の話よ。無理してない?」


 その言葉にカナデは目を見開きながらカミサキの方を振り向く。


「し、してないわよ……それより夜遅くから何のようかしら?」


「良い? 私はカナデの味方よ。カナデやカナトの為なら父様や母様だって、もちろんあのアリマだって敵にする覚悟はあるの」


「……姉様に何が分かるの? 最初に私に淑女として生きろって言ったのは姉様じゃない……」


「そうじゃない……違うのよ……!」


「何が違うの……? 姉様はいつもそう! 手を差し伸べるわりにはずっと保身ばっかり!」


 カナデはそう言ってカミサキを突き飛ばして、勢い良く走って部屋を出た。


「──っ言い返せないのよ、それは」


 カナデは気付けば分家の門、鳥居まで走っていて、門の外の階段に座って蹲って涙を流す。


「本当の私は……いつだって男勝りだっ」


 すると夜遅くから分家に用があったのか、1人の白い羽織物に深くフードを被った女性が階段を登って来て居た。その女性はカナデに気づいた様にカナデの前で立ち止まる。


「君、どーしたの? 人間ってこんな夜遅くに外に居るものだっけ?」


「貴女こそ……夜遅くに私の家に何か用ですか?」


 カナデが出会ったのは幸いにも災いにも自由奔放に生きる感情がある魔力人形、ココアだった。


「僕? 分家をぶっ壊すタメの偵察。あれ、これ言っちゃダメなヤツだっけ?」


「な、分家を……? 当主が黙ってませんよ……?」


 ココアはカナデのその言葉に微笑みながらカナデの左側に座る。


「心配するのそこ? 君の家なんじゃねーの?」


「…………」


「そこで黙るんだ。なんか面白いね、君」


「面白い……? 私のどこが……かしら?」


「まぁまずは君が思い詰めてる事を話してよ。僕聞き上手だから、弟とよく話してんだよね」


「……くだらない事よ。家に感情を縛られてるだけ、本当にそれだけ……」


「意味わかんねーな。自由ってダメなこと?」


「そこまで言われる筋合いは無いわ。他人にわかるわけがない。話しても絶対に理解出来ないわよ……」


「……僕さ、弟がいるんだ。それはそれはとても笑顔が似合うヤツで太陽みたいな存在」


「それが……?」


「僕はその弟の絶望した表情が見たい。笑顔が似合うヤツの絶望はとても気持ちが良い」


「……っ! そんな……自分の弟ですよ……?」


「僕は自由に生きてる。周りもそれを肯定して褒めてくれるんだ。だから周りのかんきょーだよ。環境次第で自分は悪にも正義にもなれる」


 そう言うココアの目はどこか怖く、優しい表情ながら微かに絶望が混ざっている。


「──っ家に縛られた私には無縁ね」


「自分は悪くないのに自分を殺すなよ」


「……なら貴方が助けてくれるんですか? 私を……淑女として居たくない、家に縛られた自分を……」


「もちろんいいよ。利用できそーだし。面白いし。今から100年後、僕は君を連れてあの方に会いに行く。それで認められたら分家に内通してもらおーかな」


 眠たそうに言うココアは立ち上がり、疲れたように大きく背伸びする。


「試すのか、わかった。約束は守るから存分に使ってほしい」


「うん。でも今すぐじゃなくてごめんね。もう行かなきゃ、本家の当主サマに見つかちゃう」


 ──分家にはアリマの結界が張られており、悪意を持ち込んだり、中の住人が持つだけでアリマに伝わって悪意を特定される。


「またね、元気で居ろよ」


 明るい声でココアはそう言って目的を忘れて転移魔法で分家を離れた。目的を忘れていたココアだが収穫はあったため然程怒られることはなかったとか。

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