第十一話 取り引き
──その頃、カケイたちは玄関からみて直ぐ左右へとある廊下を左側へと進んだ。右手側には草木が生えた広い庭があって左手側には部屋が並んでいた。
「じゃあまず歩きながら説明するね。本家と分家の関係性とか諸々」
そう気楽そうに言うアキヒロは玄関から左の廊下を歩き出す。その後を楽しそうについていくカケイと、警戒を怠らずについて行くタナカ。
「俺たち兄弟の父親、その父親の兄弟の仲は凄く悪いんだ。まぁ例外はいるけど……それで早くに当主を降りた父様じゃなくて、19歳で当主になったアリマ兄様を345年間も敵視してるとか。あんま本邸にも帰らないからね」
「最初から重いな。つまり自分たちじゃなく、子供に当主を渡したのが気に食わないんやろ?」
「んー、少し違うかな。正確に言うとアリマ兄様は当主の座を実力で取った」
その言葉に不思議そうな表情を浮かべてカケイは小首を傾げる。
「ん? つまり?」
「それは俺から説明しよう! 多分俺の方が知ってるだろう!」
「いや、知ってても何もかも適当だろ。アツト兄様は。話を続けるよ」
アツトが口を挟むもアキヒロが一蹴しアツトは俯いて落ち込んでいる。だがアキヒロは何事もなかったかのように気にせず話を進めた。
「アリマ兄様は生まれつき人を辞めているほどの規格外の強さだったらしい。魔力の量だけじゃなくて練度も含めてね」
「…………」
「絶対五感とかもあるし……記憶力もいい。一度聞いたり見たものは忘れることが出来ないらしいんだ。優れた頭脳と思考速度、単なる力もそれに伴う不気味さと絶対的な存在感。それから最初はアリマ兄様を慕う者も多かった」
その説明はどこか他の人から聞いたようにも聞こえることにタナカは少し違和感を覚えた。
「アリマ兄様も誰に対しても優しかった。だけどアリマ兄様に取り入れようとする者、陰口を叩く者、気味が悪いって避ける者、アリマ兄様は既に8歳の頃には既に人の醜さを知ってしまったとか。そう亡くなった父様が昔に言っていたんだ」
それにカカケイは想像するだけで目を少し見開いて言葉を喉に詰まらせた。
「俺たちはアリマ兄様もアリト兄様もとても尊敬しているんだ。でも人情を奥に閉まったアリマ兄様に着いて行くのは俺達兄弟と一部の人だけだから」
アキヒロは常に背中を向けながら言い少し俯いて歩いている。
「で、本題だね。俺たちがアリマ兄様に敵対したのは言ってた通り建前、分家に成る可く目をつけられない保身だよ。アツト兄様以外は」
丁寧に説明できているアキヒロを見てアツトは不服そうな表情を浮かべていた。
「俺らと居るのは不味いんとちゃう?」
「大丈夫だよ。それにフラブさんだけは元からシラ家の当主って肩書きがあるから死んでも危害は加えられないと思う。安心して、カケイ」
アキヒロは左後ろを歩くカケイの方を振り返りながら優しい表情でそう伝えた。
「そっか、良かった……タナカは強いけどフラブさんは違うから心配だったんだ!」
カケイは安心から笑顔になるも無自覚に心無い言葉を放っている。
「カケイは仲間想いなんだね。そろそろ2階に行こっか、アリト兄様に会いに」
アキヒロは左手側にある階段に歩き出し。カケイ達もそれに着いて行った。
そして一方その頃、──フラブとアマネは玄関から左右に広がる廊下を右側に進んだ。
左手側にはガラスの窓があって草が生い茂る広い庭が見える。右手側には部屋が並んでいた。
フラブがアマネの左側に横に並んで車椅子にのって前に進んでいた。
「それで話の前に自己紹介をしましょう。俺はヨヤギ・アマネ、本家の四男です」
アマネは優しい表情で歩きながらフラブの方を見て詳しく自己紹介をした。
「あ、そう……ですか……私はシラ・フラブです……その……えーっと……」
フラブは緊張して目を泳がし、それにアマネは見守るように優しい表情を浮かべた。
「緊張する必要はありませんよ。俺は女性と話すのは不得手なので至らぬ点があれば教えて欲しいです」
「あ……それなら……私に敬語は必要ありません……私の方が年下でしょう? それにシラ家の当主は肩書きでしかないので……」
余所余所しくそう言うフラブは恐る恐るアマネを見上げる。それにアマネは驚くも直ぐに再び優しい表情を浮かべてフラブを見つめた。
「それならフラブ様……フラブさんも俺に敬語は不要だ。偉さは生きた年で決まる物ではないからな」
「ふふっ! 名言みたいですね……あっ」
フラブは敬語を使ってしまった事に気がついて「こほんっ」と一度咳き込んで切り替える。
「……名言みたいだ」
フラブは恥ずかしそうに微かに頬を赤くしながら前を見ながらそう言って。それにアマネは驚くように目を見開くも直ぐ様に切り替えて前を向いた。それにフラブはアマネの方を見て小首を傾げる。
「それより本題に入りましょうか。……初めに俺たちの本家と分家の関係性について説明をしよう」
敬語しか慣れていないのかそのアマネは真剣な表情にどこか深刻そうな表情が混ざっていた。
「ヨヤギ家が全く機能していない理由にもなるんですが……本家と分家、正直に言うと仲が悪いんです。元々お父様が持病持ちで分家の人間が当主の座を狙っていたとか。だが19歳のアリマ兄様が当主に着いたんだ」
敬語が混ざっているアマネだが、フラブも深刻そうな表情に変わって黙って説明を聞いている。
「アリマ兄様、当主様は生まれつきの才能が幾つも備わっていて人望も厚かったらしい。19歳でも分家の人間以外は強く否定しなかった」
「…………」
「だがお父様の兄弟は多いんだ。分家はそれなりの人が集まっている。俺たちも7人兄弟だからな、とても多いだろ?」
「大変だったんですね……」
驚きを隠せないでいるフラブはそう言葉を溢し、それにアマネは少し優しい表情を見せる。
「ああ。もちろん俺もアリマ兄様の味方だし、アリマ兄様……当主様を尊敬している」
「何で名前で呼ばないんですか?」
気になっていた事をフラブは首を傾げながら恐る恐る問う。それにアマネは微かに悲しそうにも前を向いては少しだけ下を見る。
「……俺は昔に酷い事を言ってしまった。許してはくれたが俺は俺を許せては無いからな。話を戻そ……」
「アリマさんは多分、名前で呼んで欲しいって思ってると思いますよ……?」
フラブは恐る恐るそう言葉を溢すと、それにアマネはフラブの方を見て少しだけ目を見開く。
「良いのだろうか……俺ごときが軽々しく名前で呼んでも……」
「馬鹿なんですか?」
急なフラブから発せられた罵倒にアマネは驚きを隠せずに「は…?」と言葉を溢しつつ大きく目を見開いた。
「馬鹿では……」
「確かに今のは失言です。すみません。ですが名前で呼ばれて嫌な人なんて居ない、逆に兄弟に名前で呼ばれない方が寂しいでしょう」
いつに増してもフラブは真剣な表情を浮かべながらアマネを見上げていた。
「すまない、これからは名前で呼んでみよう」
「それで怒られたらすみません。本当にすみません、喧嘩に口出しする気はなかったんですが……話を戻しましょうか」
フラブは申し訳なさそうにするも優しく微笑みながらアマネの方を見ながらそう言い。それにアマネはフラブの方を見ながら少しだけ頬を赤くして再び目を見開いた。
「……っはい」
微かに照れているようにも見えてしまう反応に、フラブはきょとんとして小首を傾げる。
「アリマ兄様を化け物の領域の人間だと色んな人が言い始めて、アリマ兄様に対する険悪な雰囲気にのまれた他の人たちが次第にアリマ兄様を強く敵視していったとか……」
嫌そうに説明をするアマネ。それを聞いていてフラブも少しだけ表情が暗くなった。
「2階に行きましょう。1階は宴会場以外、殆んど物置ですので」
そう優しく言うアマネは足を止めて右手側ある階段を掌で示す。
「はい……わかりました」
その不安そうなフラブの答えにアマネは颯爽とフラブを車椅子から持ち上げた。持ち上げると言っても背中と膝の後ろ腕を回しているお姫様抱っこだ。
「……え、あ……?」
フラブは困惑するも確かに魔動の車椅子でも階段を登る機能は備わっていない。
「すまない、怪我してるのはアリマ兄様から教えられてるから心配はしないでくれ」
そう優しい声色で言うアマネは少し恥ずかしそうに頬を赤くしながらフラブを見ている。
「え、いや、車椅子は痛みを和らげるもので痛いですが歩けはしますよ……!」
咄嗟に焦りながら説明するフラブは恥ずかしそうに顔を耳まで赤くする。
「そうか、だが痛いのなら無理は駄目だ」
優しい声色でそう言うアマネだがフラブは何とか冷静に戻ってアマネは階段を登り始める。
「……アリマさんが私達をヨヤギ家に招いた理由をもし知ってたら教えてくれませんか?」
フラブはご厚意に甘えながらもアマネに軽く凭れて真剣な表情を浮かべた。
「ああ、それはアリト兄様にお願いされたのが理由の1つだとアリマ兄様が言っていた。あ、アリト兄様はアリマ兄様の双子の弟だ」
その頃、──アリマとアオイとアユの3人はアリマの簡易型の転移魔法でアリトの自室に着いていた。
アリトの自室は病院の一室の様な有りさまで白く奥側の壁にある風が気持ちいいくらいに吹いている。
アリトは灰白色の長い髪を左肩から前の胸部辺りで緩く結んでいて、左目が微かに前髪で隠れている。そして灰白色の着物に白色の羽織物を着ている。そしてドアから見て横になっている病室のようなベッドの上に座ってベッドの左右に繋がっている長い小さな机にスイーツを置いて食べていた。
「アリト……スイーツは体に良くないぞ」
アリマはアリトが軽く凭れて座ってるベッドの右横で立ち止まり。続いてアオイとアユもアリマの右横で立ち止まる。
「もう来てくれたんですか。久しいですね、兄様」
アリトは冷静にアリマの方をみながら言い、関係なしにスイーツを再び食べ始める。
「まぁ良い。体調は?」
「内臓の働きは日に日に落ちてます。本当に頑張っても寿命が400歳なんだと実感してしまいますよ」
そう言うアリトは右手に持つスプーンを止めて、悲しそうな表情でスイーツを眺めていた。
「アリト兄様……」
アオイは悲しそうにアリトを見て溢すと、重い空気にアユも少し俯いている。それに気づいたアリトは困ったように暖かく優しい表情を浮かべる。
「こら、そんな悲しい顔をしない。私はちゃんと幸せだから! もっと明るく考えてよ」
「……2人とも、少し席を外せるか?」
アリマはアオイとアユを見てそう問うと、何かを察したアオイは「わかったわ」と言いながら軽く頷いた。そんなアオイの返事にアユもおどおどしながら軽く頷いて2人はドアから部屋を後にした。
「ありがとうございます、兄様。弟の前で私が弱音を言えない事への配慮でしょう」
微かに震えた声で溢すアリトは俯くと涙を一滴頬に伝わせる。それを見たアリマは表情を一つとして変えずにアリトの背中を左手で優しく摩り寄り添う。
「余はアリトを病気で死なせはしない」
「ありがとうございます。正直、死ぬのは怖いんですよね……とても……」
「余の前で泣くのを堪えるな。絶対に余より先に死なせたりはしないからな」
真剣ながらも淡々としているアリマの言葉にアリトは涙を溢しながらゆっくりアリマを見上げた。
「兄様はやっぱり優しいままですね。ですが来客もするでしょう。弱音はここまでにしときます」
優しい口調でそう言うと深く目を瞑って徐々に涙を引っ込めて頬に伝っていた涙も羽織物の袖で拭う。
「覚えてますか? 兄様。100年前、父様が亡くなって沢山泣いてる私や弟達を兄様はずっと寄り添ってくれて。私も弟も兄様を尊敬しているんですよ」
優しい声色でそう言うアリトは悲しそうにもアリマを見て優しく微笑んだ。アリマはアリトの背中から手を離して腕を元の位置に戻した。
「そうか。余はやるべき事をやっているだけだ。だが確か父様はアリトと同じ病だったな」
アリマは無表情ながらどこか少しだけ悲しそうな表情を浮かべた。すると突然、部屋のドアが開いてアユとアオイが部屋へと足を踏み入れた。その後からタナカとカケイ、アキヒロとアツトが部屋に入ってくる。
そのドアの音でアリマとアリトはドアの方に目線を移動させた。
「連れて来ましたよ〜! アリト兄様」
アキヒロがそう言いながらアリトの方に歩き。タナカとカケイも後ろをついて行く。
「客人は3人じゃなかった? あと1人は?」
「んー、シラ家の当主さんはアマネと一緒にここに来てる最中じゃないかな?」
面倒くさそうなアキヒロの言葉にアリトは理解が追いつかずにきょとんとする。
「……アマネって女性苦手じゃなかった? 大丈夫?」
「ああ。故に心配してたんだが……フラブ君だから大丈夫だろう」
そのアリマの言葉にアリトはアリマの方を見ながら首を傾げる。
「フラブさんも確か女性って言って……」
「女性ではあるが……190年も前に会っているし見た目はともかく……性格と言うか考え方というか……ハジメを強く引き継いでいる」
「なるほど。ハジメさんと話してるって考えたら大丈夫ですね……」
すると話をすれば開いてるドアからゆっくり歩いて入ってきたアマネにお姫様抱っこをされているフラブが確認できる。ただフラブは顔を耳まで赤くして恥ずかしそうに顔を隠していた。
それに全員の視線が恥ずかしそうにしているフラブと優しい表情を浮かべているアマネに移動する。
「噂をすればだね……アマネが……」
「車椅子では階段は登れませんので」
アマネは平然とそう言いながらドア側の壁の部屋の奥隅に移動してアオイが部屋のドアを閉めた。
「……まぁこれで全員揃ったね。客人も居るしまずは自己紹介だよね。私はヨヤギ・アリト。兄様…アリマ兄様の双子の弟だ。是非私とも仲良くしてほしい」
アリトは優しい表情で皆んなの方を見て優しい声色でそう言うとタナカは真剣な表情を浮かべた。
「貴方がアリトさんか。俺はタナカ、こっちの小さいのがカケイや。一応は指名手配されとるんやけど……よろしゅうな」
タナカはドア側の壁に軽く凭れてアリトの方を見ながらそう言い。右横にいるカケイはタナカの方を見上げながら怒りを表情に表す。
「俺ぁ小さくねぇぞ! タナカ! 格好良いんだ!」
アリマは歩いてベッドの左側、ドアから見て奥側に移動した。
「今回、ヨヤギ家の内争に巻き込んでしまう形になるけれど客人方と取り引きをしたい」
「内容は?」
アリトの真剣な表情の言葉に、タナカは少し訝しむような目でアリトを見て問う。
「それは至って簡単。居る間だけ丁重に持て成すし要望があれば出来るだけ聞こう。その代わり、ヨヤギ家の中に処刑課に兄様の情報を売った馬鹿を探し出すのを協力してほしい」
その言葉にアリマは驚くように少し目を見開いてアリトの方を見る。
「待て。其れは通信機で話した内容と違うだろう、アリト……そもそも……」
「私は兄様を凄く誰よりも尊敬しています。他の弟も例外なく」
「……成る程、余抜きで話していたのか。それで、取り引きには応じてくれるのか?」
そう淡々して問うアリマは表情を変えずにタナカとカケイやフラブの方を見る。
「私は応じますよ。人助けは好きなので」
フラブの声色は明るく、真剣な表情でアリマを見てそう言ってカケイも表情を明るくする。
「俺も! 友達を助けんのは当たり前だろ! な、ヨヤギさん!」
カケイがアリマを見て笑顔でそう言うとアリマの弟たちや妹も全員がカケイの方を向く。
「カケイ君、ここでは名前で呼ぶんよ。でもまぁ、カケイ君が助ける言うとるし、ここで断るのもちゃうやろ。俺も取り引き応じるわ」
「そうか。ならば感謝を言おう、ありがとう」
アリマは優しく微笑みながら皆んなの方を見て感謝を告げる。
「良かったてすね、兄様。でも微笑むのは人の前では止めましょう。一瞬で恋に落ちちゃいますから」
アリトはアリマの方を見ながら優しい表情でそう伝えると、それにアリマは呆れるような目をアリトに向ける。
「アリト…………まぁ良い。それより本題に戻れ」
それに機嫌が良さそうなアリトは優しく微笑み、左手側を覗き込むように自身のベッドの下にある引き出しを漁る。そして暫く経つと体を元の位置に起こし、手に大きめのビニール袋を持っていた。
「好きなアイスを1人1つ食べていいよ。私は甘党だから買い溜めしてるんだ」
突然の言葉に、その場にいる全員が困惑して微妙な空気が充満する。
「え……?」
「アリト……」
アリマはそう言いながら再び呆れ疲れたような目をアリトに向ける。
「…………まぁ良い。今は遠慮しておこう」
「兄様と食べようって思って何個か買って置いたんですが……」
「いつかな」
アリマは単調にそう言って終わらせると、アリトは優しい表情で視線を皆んなの方に移動させる。
「ほら、皆んなも。大勢で食べるアイスは特別、もっと美味しいよ」
「私も貰うわ。ありがとう、アリト兄様」
目を輝かせるアオイはそう言いながら袋の前まできて袋の中を探してチョコアイスを手に取りつつ着物の中にしまう。ただあと一つだけ盗み得ていて二つのアイスをゲットしていた。
それにカケイも目をキラキラさせて適当にアイスを取るとタナカに見せびらかす。
「なんか冷たくて凄いな! タナカ!」
そんか子供らしいカケイを優しく見守るタナカは少しだけ冷たい目をしていた。
「俺は甘いのが苦手だ。フラブさんは?」
優しい口調でアマネがそう問いながら、自身がお姫様抱っこをしているフラブの方を見る。
「私も大丈夫です。腹部の怪我で内臓にかなりダメージが入ってるので」
「……大丈夫か? フラブさん、無理があったら俺を頼ってくれ」
寄り添うように言うアマネは焦り気味にフラブを心配そうな表情で見た。
「……ねぇ兄様……やっぱりあれってさ……」
アリトは近くに居るアリマにだけ聞こえるような小声で言い、だがアリマには上手く伝わっておらず不思議そうな表情を浮かべてアリトの方を見る。
そのアリトとアリマのコソコソ話をしてる姿を見たカケイは小首を傾げた。
「……まぁそれより状況が脱線し過ぎたね。それぞれ2人で主に動いてもらいたいんだ」
アリトは皆んなに聞こえる声でそう言いながら皆んなの方を見る。
「と、言うと?」
そう冷たい口調で問うタナカはカケイの代わりにアイスのゴミを部屋の隅にあるゴミ箱に袋を捨てながら警戒するような目つきでアリトを見ていた。
「私と兄様は分家と使用人の大まかな動きを見る。アキヒロとカケイさんは1階全体の見回りを頼みたい」
それにカケイは笑顔で目を輝かせながら「任せろ!」と答えると、それを見守るアキヒロも優しい表情で軽く頷いた。
「次にアオイとアユで厨房の人間の監視と宴会場の監視を」
それにアオイは優しい表情で「ええ」と言い、アユはおどおどしながら軽く頷いた。
「アツトとタナカさんは2階の右半分の見回りと人手が足りてたらアキヒロ達の手助けを」
優しい声色で説明をするアリト、それにタナカは真剣な表情で頷いた。
「りょーかい。任せときぃ」
「ああ!タナカさんともっと仲良くなれる良い機会だな!」
「それで最後にアマネとフラブさんに2階の左半分の見回りと、屋上の監視を頼みたい」
それにアマネは軽く頷いて、優しい表情でフラブの方を見る。
「俺1人で充分だ。フラブさんは俺の側に居てくれるだけでいい」
「私も手伝いますよ…」
優しいアマネだが、そう言うフラブは呆れるような目でアマネを見ている。
「決まりだね。協力に感謝をしよう」
そう言うアリトは皆んなの方を見ながら優しい表情を浮かべている。
「任せて欲しいわ。私、気配消すのが得意だから」
アオイはそう言いながら無口なアユとドアから出てその場を後にした。
「俺達も行くか!1階を案内してくれ!」
カケイはアキヒロを見てそう言い、ドアノブを掴んで部屋のドアを開けた。
「んー、りょーかい!」
そして元気が良いカケイとアキヒロもドアを開けて部屋を後にした。
「では俺達も行こう」
「あ、少し待って下さい。屋上ってここ和風な城ですよね?」
不思議そうなフラブの問いにアリトは察して優しい表情でフラブの方を見る。
「和風と洋風で中途半端なんだ。外観は結界系で変えてるだけ。説明は面倒だからいつか兄様から聞いてよ」
「…わかりました。失礼します、アリマさん、アリトさん」
フラブがそう言い終わるとアマネが転移魔法を使ってその場を後にした。
「じゃあ行きますか?タナカさん!」
元気良く楽しそうにアツトがタナカを見て問うも、タナカは真剣な表情ながらアリトの方を見る。
「いや、ちょっと待ってな。アリトさん、俺も聞きたい事があるさかい、答えてもろてもええ?」
「うん、勿論良いよ。私が答えられるものならね」
「──魔力人形、アルフェード教会、その2つ。どんだけ知ってます?」
「兄様から聞いた情報だけ、と言いたいところなんだけどね。──独自で使者を使わせて魔力人形は複数の施設で作られてる事とアルフェード教会は施設の人間が機能させていた事を知ってるよ」
アリトのその言葉にアリマとタナカは驚くように少し目を見開いた。
「それは本当か?」
アリマは直ぐ様に無表情に戻ってアリトに問い。タナカは想像以上には驚かず、疲れたような軽く溜め息を溢した。
「……聞きたい事はもうあらへん。行こう、アツト」
タナカがアリトに背を向けて部屋を出ようとした時、アリトが口を開く。
「私は事件に大きく関与する気は無いよ、必要が無いからね」
アリトの言葉には無反応でタナカとアツトはドアから部屋を出てドアをゆっくり閉めた。




