表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/3

後編

 追跡が始まり4日目、5日経過した。



 そろそろ、カサンドラの街に近づいて来た。



「不味いですね。街道に出たら、みやみに手出しできなくなります」


 ・・・いっそのこと、矢の集中砲火をさせますか?


 いや、木が邪魔して、効果がないのかもしれない。

 こちらも、確実に、銃の射程に入るでしょう。


 こうして、隠蔽魔法で、遠くから、見守るのがベストです。


 こちらは、交代できます。

 日を追う毎に、移動距離が短くなっていますね。



 ついに、7日目・・・すでに、不眠不休から、6夜7日になった。



「はあ、はあ、はあ」



 少女は、大木の周りを中心に、半径25メートルくらいをグルグル回るようになった。



「ほお、ついに、疲労のあまり。方向感覚を失いましたね。ここまで耐えるとは、ミリタリーチートの分際で、たいしたものです」


 やがて、輪は短くなり。


 ドン!


 大木にあたり。昏倒した。


 気絶したように見えた。


 手から、銃がこぼれ落ちる。



 ガサガサガサ!



「一応、警戒しましょう。ゆっくり、近づいて、奴隷の首輪をつけます。強制契約です。研究します」


「死ぬかもしれませんよ」

「構いませんよ」


「「「はい」」」


 ゼノンたちは、ゆっくり、近づいた。


 しかし、一人の足下で何かが爆裂した。


 バチン!


 決して、爆発は、大きくないが、人が倒れるぐらいの激痛が生じる。


「ギャアアア、足の指先が、吹っ飛んだ!イタい」


「ヒィ、ワナが仕掛けてあります!皆さん、不用意に動かないで!」



 ワシが、ワナにかかるだと、落とし穴とも違う。

 爆裂した。

 何だ。これは?何の条件で発動する。

 探せ。何かあるはずだ。


 ピカ!


 およそ、5センチくらいの細長い金属の物体が、木の周りに、散乱している。

 グルグル回っているときに、少女がばらまいたのだろう。


「これは、興味がありますね」



 バン!バン!バン!・・・・


「「「ギャアアアアーーーー」」」


 突然、立ち上がり。少女は、引き金を引いた・・・


 10名ほど、いた魔道師たちは、次々と撃たれていく。


 最後、ゼノンだけが残った。


 少女は問う。


「はあ、はあ、はあ、ウグ、どうして、私を付け狙う」


 間近で、対峙したゼノンは、初めて気がついた。



「・・・貴女は、異世界人ではない。目が青い。混血・・・ですね。転移者二世ですね」


「そうだ・・」


「やられました。ワナ使いのゼノンがワナにはまる。すっかり、ミリタリーチートは銃だけ。その背後にある工業力と言うのを失念していました。

 こんなに小さくても爆裂する物をつくれるなんて・・」



 少女のばらまいた物は、工業雷管、

 TNT、ダイナマイト本体は、爆破しにくい物だ。

 それを爆発させるためには、小爆発が必要だ。

 砲弾では、信管がその役割を担う。


 雷管自体は、非常に爆発しやすく、踏んだら、爆裂するレベルである。




 少女は、回想を交え。魔道師に話しかけた。



 ☆回想


 私は、アリサ、お母様は異世界から来た。黒髪、黒目の容姿だ。

 12歳の時、教会で、ジョブ、スキルの鑑定の儀が行われた。


『お母様と同じお針子がいい』


『まあ、こればっかりはね。でも、アリサは妙に距離感がいいわね。お針子のスキル、測定があるのかもしれないわね』


『お母様、頭の中に、巻き尺があって、それで、距離が測れるの』


『ほお、じゃあ、期待出来るな』


『お父様のお服を補修するの』


『それは、楽しみだ』




 ・・・・・


『緊急!ジョブ、普通科隊員狙撃手!スキル、現代武器召喚!』

『ヒィ、ミリタリーチートだ!』


 そして、お父様は商会をクビになり。お母様のお洋服は売れなくなった。


『アリサ、自由都市カサンドラに行きなさい。あそこは、異形の力を持っている者を受け入れると聞く。そこで、ひっそり暮らすのだ。これが、最後のお金だよ』


『アリサ!ごめんなさい・・』


『お父様、お母様は?』


『すぐに行きますから、アリサは先に行きなさい!』


 夜、ひっそり、家を出た。丘の上まで来た時、家の方角をみたら、炎に包まれていた。



 ・・・・・



『ミリタリーチートの幼虫が育つ前に、殺せ!』

『親と家畜は殺したが、幼虫はいません!』


『探せ、探せ!』


『親を殺すのは、正義の行いだ!』



 村人たちに、襲われた。


 お父様とお母様は囮になったのだ。


 プチン!


 何かが壊れた。


 空間から、銃が出る。


 カチャ、カチャ!


 銃だ。感覚で使えた。


 バン!


『あれ、俺の胸から、血が・・』


 バタン!


 人が大きく振動し、倒れる。


『ヒィ、寝込みを襲えばって、村役人がいったんだよ』

『そうだ。魔物を狩ってもらえばいい。村長の養子になれば・・・』


 バン!バン!


 最初は、単発だったと思う。



 ・・・・・




「それは、おかしいですね。何故、貴女は、そんな不屈の精神と、技能を身につけていますか・・・大体、ミリタリーチートは、銃を知らない相手にしか無双できませんよ」



「・・・研究した。教本を召喚した。魔道師と同じだ。魔力があっても、力の使い方を知らない者は使い物にならない・・私は、知らないことを知っているつもりだ」



「是非、教本を読みたいです!どうです。ワシは子爵の地位です。養子にしてあげます。貴女は保護されますよ!

 ミリタリーチートの暴虐で苦しんでいる人を助ける人になりたくないですか?」



 バン!


 銃声が一発響いた。


「殺そうと追ってきたくせに」


 バチン!


 と指を鳴らすと、回路付きのTNT爆薬が、地面に等間隔に並ぶ。



「爆破!」


 ドーン!


 死体ごと、地面一面の草や土が飛ぶ。


 彼女の気遣いだ。

 雷管は、踏んだだけで爆発をする。


 人が踏まないために、処置をしたのだ。


 しかし、彼女の気遣いを見た者は、鳥だけだった。






 ☆☆☆カサンドラ


 冒険者ギルド



「ここは、犯罪者でも受け入れる・・・って、208名殺し・・・って記録に出ている」


「そう、正当防衛・・」


「そうか、皆、そう言うのだ。異形の力を手に入れた者、死霊使い聖女・・・、瘴気使い巫女、超能力を持った忌み子・・・そうか、君はミリタリーチートか」


「違う。未熟だ」


「・・・そう言うミリタリーチート能力者は初めて見た。皆、銃を持ったただの人だからな。すぐに、寝込みを襲われたり、裏切られたり・・・」


「無駄口はいい。やりたい仕事がある・・」




 ☆☆☆カサンドラお針子ギルド



「お姉ちゃん。ゆっくりで良いよ」

「うん。有難う」


 少女は、お針子見習いになった。

 ここに来るまで、二年かかった。旬は過ぎた。

 年少の子に交じって、お針子見習いをしている。


「まあ、お母様がお針子だけあって、筋がいいけど、もう少しね。目で覚えるのよ」


「はい、先生」


「先生だなんて、私は、ただのギルド員よ」




 コンコン!


「アリサさん。・・・いますか?冒険者ギルドからの依頼案件です」

「アリサ、行くよ~、ヒック、ピクニックの案件だぜ」


「うわ、貧乏聖女と、酔っ払いダークエルフの魔道師・・・」


「こら、そんなことを言ってはいけません」


「聖女アリス様と魔道師のアリーシャ様、アリサちゃんは、冒険者兼業なのよね。いってらっしゃい。ここは、冒険者至上主義の街、だけど、危険な案件じゃないわよね」


「ヒィ、ピクニックのお誘いなのです」

「ヒック、多分、大丈夫だぜ」


「行く・・・」





 ☆☆☆某国、下町



「困ったね。下町のど真ん中の孤児院にターゲットがいるよ」


「この転生者は何が問題なの?」



「彼は、ユウキ・スズキ、異世界では、高校生だったのです。あ、平民の高等学校なのね。

 一般的な異世界人なのです。

 現世で、武器召喚の能力を身についているのです。ハンドガンやアサルトライフルを孤児に配る危険行為をしたのです」



「ヒック、武器だけじゃないぜ。薬や医療キットも魔力を対価に召喚し、回復術士の職を奪ったのさ。陛下がいくら諫めても、聞く耳を持たない。

 花形職種の回復術士は、破産したり。一家離散になった者もいる・・」


「秩序を破壊する転移者・・」



「そうさ。今はこの王都で一大勢力、子爵令嬢が側に侍り。常に人がいるようにして、暗殺を防いでいる。計画では、ユウキを、王都から脱出させ。領地で囲おうとしているみたいだぜ」



「今では、孤児院の子は、串焼き屋はフリーパスで、串焼き屋を略奪し、毎日、ホロホロ鳥を食べているのです。暴虐孤児です」



「でさ、あたいの瘴気では、街中では、被害が多い」


「王都で、私の死霊術を使うわけにはいかないのです」


「そこで、アリサちゃんの狙撃術が必要なのさ」



「・・・やってみる」



 ・・・曳光弾による目視による修正は、やめた方がいい。逃げられる。一発で仕留める。


 頭の中の巻き尺は、狙撃手のスキルだった。


 430メートル、風を読む。


 カチャ、


 弾倉を切り替える。中には、7.62ミリ弾一発しか入っていない。


 一撃必殺の狙いだ。


 風を読む。





 ☆☆☆王都孤児院中庭



「さあ、これから、何をしようか?」


「フフフフ、これだけ、薬を召喚したのですわ。お休み下さい」


「そう?そうだ。孤児院の状況はどうなっている?」


「ユウキ様は、勇者ですわ。些細な事を気にせずに、お休み下さい」


 パスン!


「分かった。何かあったら、呼んでね・・・グハ!あれ、胸から血が出ている・・」


 ドタン!



「ユウキ様!キャア、薬と、銃が消えて行く・・・ポーションを、ユウキ様がいなければ、薬が作れなくなりますわ!」




 ☆同時刻、王都繁華街



「おい、この鳥を寄付しろ!」

「そうだ。孤児院へ寄付しろよ」


「そんな。商売あがったりですよ」


 ボア~~~


「ヒィ、極悪孤児隊だ・・・あれ、魔法杖が消えたぞ」


「何だ。何がおきた?」

「「「ウエ~~~~~ン」」」


「ウエ~ンじゃねえ。銃のないお前達は、ただのガキだ!」


「殴りつけてやる!!」



 ・・・・・・



「報酬は、金貨1000枚だ、アリサが全部とりな」


「ううん。万が一に、二人いてくれたから、プランBが出来た・・・山分けする」



「ヒィ、助かるのです!」


「でも、端数が一枚ある」


「それをもらう・・・」



 アリサは、街頭に出る。



 兄妹が物乞いをしていた。

 不良孤児院から逃げ出した兄妹だ。



 チャリン♩


「え、金貨一枚!何をさせる気だ!」



「・・・目障りだ。消えろ。紹介状を書いておいた。冒険者ギルドで薬草探しのパーティにでも参加させてもらえ」


「お姉ちゃん。有難う。でも、何で、その態度を取るの?」


 少女は、答えずに、無言で、そのまま去った。


「マリー、よく見とけ。この世界、善人と思われると、付け入れられるから、あのお姉ちゃんは、そっけない態度を取った・・・

 俺たちに教育してくれた。ユウキを見てみろ。ニコニコで、まるで、無邪気な子供のように、物だけを配った。そして、孤児院の仲間は堕落して、人を殺すようになった」


「じゃあ、あのお姉ちゃんは・・・」

「女神の使徒様も、こんな感じだったとおとぎ話であったな。善い人かもな。世の中は捨てたものじゃないって事だ」




 ☆☆☆冒険者ギルド


「いたいた、トムとマリー兄妹、ユウキは死んだよ」

「君たちは、ユウキ一派に反対して、孤児院を追い出されたのを知っている。ずっと、見ていたよ」


「正義の子が欲しい。うちにおいでよ。一から教えてやる」

「薬草探しも再開出来るぜ」


 あの物乞いの兄妹は、引っ張りだこだ。



 銃が消えてしまい力を失った孤児達が、冒険者ギルドに殺到する。



「ねえ。僕たちも雇ってよ!」

「こいつらよりも、役に立つよ!」




「ああ、銃を持って、威張っていた孤児たちじゃないか?」

「クソ野郎、あっちいけ!」


「「「そんな」」」

「貴族のお姉ちゃん捕まって、僕たちのご飯がないよ」


「知るか。シスター様に聞け」


「シスター殺しちゃったよ。乱暴はダメとか。うるさかったから」


「「「捕まえろ!」」」




 ☆☆☆カサンドラお針子ギルド



「アリサさん。お帰り。ピクニック長かったわね。仕方ないけど、あまり、長いと修行が中断するわ。いっその事、冒険者に専業した方が良いのかも」


「先生、ごめんなさい。修行をしたい・・」


「分かったわ。貴女の意思を尊重します」



 まだ、この少女はお針子ギルドにいる。

 ここを安住の地にするつもりだ。















最後までお読み頂き有難うございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ