前編
☆☆☆冒険者ギルド
「何だ。このクエストは?異世界人、ミリタリーチート能力者、私を殺して下さいだと!」
「はい、タドコロ殿、魔道師ゼノン様からの依頼です。決闘の依頼です」
「よこせ。・・・・・何だと、当方は、ミリタリーチート狩り。勝てば、金貨1000枚渡す。愚かな。場所は、黒森の開豁地」
「田所さん。やりましょう。そろそろ、対人戦闘をやりたかった」
「そうですよ。俺たちは無敵です」
ヒソヒソヒ~~~
「おい、異世界人、食いついたぜ」
「魔道師ゼノン様か、狩り場を荒らす異世界人を懲らしめる魔道師様だ」
「いや、実験したいらしいぜ。どっちにしても助かるぜ。奴ら、助けると称して、人の獲物を横取りする」
【おい!文句があるのなら、はっきりしゃべれや!】
シーーーーン
「フン、このクエストは受けてやる。金はきちんと、支払うのだよな」
「もちろん。ギルマスが証人です。お金は当ギルドが預かり済みです。銃を必ず持って来て欲しいとのことです」
・・・馬鹿だな。ミリタリーチートは、銃だけだと思ってやがる。
俺たちは、銃だけじゃないのよ。
ナイフ術、護身術もたけているのさ。
俺たちは3人、日本人の冒険者パーティだ。日本時代ではサバゲのチームだった。VRゲームも余念がなかった。
日々、国防を憂い。有志を集い。真の護身術を身につけていた。
俺にかなう武道の先生もそうはいない。
近接戦闘も特殊部隊に引けを取らない。
サバゲ界隈では一目を置かれていた。
異世界に転移してから、武器を召喚出来る能力を授かり。連続クエスト達成、獲物を狩り続けている。
まあ、妬みは買ったし、
そろそろ、王国から、呼び出しが来ても良いころだ。
ドラゴン?魔王、王国案件を受けるレベルだぜ。
そんな時、噂を聞いた。
自由都市カサンドラでは、異形の能力を持っている者を募集している。
王国案件の高額クエスト受け放題、地位を保証される。
今は、中小規模の冒険者ギルドを渡り歩きながら、カサンドラに向かっている真っ最中だ。
しかし、
「一応、魔道師だ。ファイヤーボールは、標準装備だぜ。100メートル付近から、狙い撃ちだ」
「え、つまらないですよ。でも、仕方ないですね」
「せっかく、僕のナイフ術を披露できると思ったのに」
「まあ、そういうな」
☆☆☆森
いた。ローブを羽織っていやがる。中年の小太りの男だ。依頼だと、``殺せ``だ。場所と日時、服装、間違い無しだ。
「一応、確かめて見ますか?」
その時、拡声魔法で、ここまで、声が届いた。
【私が、魔道師ゼノンでーーす。ミリタリーチートさんですか?始めましょう。私、一人なので、誤射する心配はないですよーーーー】
「な、何だと!」
魔物と格闘中の冒険者パーティを助けようとしたら、近接で、ノロノロしている冒険者に当たってしまったことがあった。
この世界では、タンク職で、その役割だったとか。
俺たちは、冒険者ギルドに説明し、賠償もした。
金で許されるのが、この世界だぜ。
「おい!ここから、撃つぞ。セミオートで一気に勝負を掛ける。東梅は警戒、俺と山形で撃つ!」
「「はい!」」
ダダダダダダダダ!
ダダダダダダダダ!
射撃よりも早く、魔道師ゼノンの前に、土の壁が創成され、銃弾は吸い込まれるようにし、壁の中に消える。
「あれ!卑怯だ。土の壁が出来た!」
「無詠唱魔法か?」
「あれ、弾が貫通しないのか」
「しかし、防ぐだけでは、勝負にならないぞ!突撃だ。伏兵がいるかもしれないから、一列の隊形を取る。前傾姿勢!銃はいつでも撃てるように、肩まであげろ。俺が先頭、山形は左右。東梅が後方警戒だ」
「「「オオオー!」」」
「やるぞ。初めての対人戦闘だ!」
しばらく歩くと、3人は、突然、地面に吸い込まれた。
ドサーーー!
「「「ギャアアアアーーー」」」
「穴の中に、剣の山が」
「ウゲ、ゲホ、腹に貫通した!動けない!」
☆5分後
落とし穴の周りに10人ほど集る。ゼノンとその弟子たちだ。
「いいですか?落とし穴は、有効なのです」
「「「まさか、こんな単純なワナに」」」
「単純ではございません。ワナ師のスーデンさんの傑作です。スーデンさんに拍手を」
パチパチパチ!
「えへへへ、落とし穴は、塞ぐ時に、気を使います。周りの土や植生と見分けが付かなくするのが大事です。一カ所だけ。土が真新しかったり。植生が違ったら、バレます。
私の魔法は、周りと同じように見せる事ができるのです。ただ、それだけです」
「それだけではありません。スーデンさんは、3人乗ると、落ちるように、素材を工夫しました。さすが、ワナ師スーデンですね」
「へへへへ、ワナ師は、低級と侮られますが、ゼノン様に見いだされて、嬉しいです。グスン」
「しかし、チグハグですね。あの隊形は、周りに友軍がいたり、建物の中とかで出来る隊形ですが、初めてのケースです。生かして、聞いておけば良かったですかね」
・・・近代戦においても、地雷源の処置方法は、確立しているが、地雷の発見は困難である。進軍先を、いちいち手作業で、地雷探知機で探しては、時間が掛かる。
先頭の一台が触雷して、初めて分かるケースが多い。
この三人は、射撃の姿勢を取ったことで、視野が狭くなり。ましてや、地面を警戒する方法を知らなかった。
「復習します。私の無詠唱の土魔法、ソイルウォール、弾丸は土を通しにくい性質があります。異世界では、土嚢を陣地に積んで、弾を防ぐようです」
「教授、ミリタリーチート狩りは簡単ですね」
「侮ってはいけません。武器は強力です。現に、こうして、待ち伏せするしか手はないとも言えます。決闘だからこそ、こちらは、準備を出来たと言えますね」
「失礼しました」
・・・ミリタリーチート能力者は、悪です。
魔力、財産を対価として、異世界から、武器を召喚します。いずれ、この世界の魔素や財宝は尽きてしますでしょう。
だから、私は、こうして、ミリタリーチートを狩っているのです。今回は、狩り場を荒らされ、仲間を殺された冒険者たちからの依頼でした。
「でも、安心して下さい。騎士様の俊足魔法で、翻弄し斬殺、魔王軍でも、対ミリタリーチート戦のドクトリンの開発に成功したと聞きます。魔王軍にけしかける方法もありますね」
「教授!大変です。銃を背負ったミリタリーチートが一匹、こちらに向かっています。銃は木が混じっています。識別不能、どうやら、メスのようです」
「ほお、銃声で、よって来ましたか、三匹の死体をエサにしましょう。今度は、一人用に作り治しましょう。皆さん、剣山に気をつけて死体を取り出して下さい」
「「「はい!」」」
しばらくすると、一人の少女が草むらから姿を現した。
ガサガサガサ!
「!!!異世界人狩り?・・・」
少女の装いは、この世界の一般的な平民の作業用の服、茶色だ。
しかし、黒髪である。
およそ、300メートル離れた岩場から、ゼノン達は様子を伺う。
(異世界人です。歳は15くらいですかね。近づいて、落とし穴にはまりなさい。クククッ)
しかし、
少女の次の行動に、絶句する。
「!!」
少女は、
顔を地面に近づけお尻はややあげる姿勢をとった。まるで、猫が獲物に狙いを定めるようだ。
少女は、ワナがないか。確認している。
(土が・・めくれている)
手でゆっくり地面をなぞりながら、匍匐前進の要領で前へ進む。
そして、落とし穴の前で、ピタと止まった。
伏せた状態で、銃を構える。
「・・・・・・」
・・・・・
(ワナを見つけたのか?後、もう少しなのに・・)
魔道師の一人が、思わず姿を見せ。挑発をした。前へ出れば、ワナにかかるだろうとの目論見だ。
【お~い。こっちに来て戦え。お仲間を殺したのは、俺たちだ!】
「やめなさい!フォルン!」
少女は、ゆっくり、深呼吸する。
伏せた状態から、銃を構えた。
その構えを見て、ゼノンは顔色を変える。
「教授、当たりませんよ。あの状態では撃てません」
「馬鹿!あれは、伏せ撃ち、狙撃の姿勢ですよ!岩陰に隠れなさい!」
・・・距離は、275メートル・・・メモリは、300に合わせて、照星の先端を、やや、上に合わせる。
アサルトライフルの照準器具は、だいたい50メートル単位だ。一メモリがズレれば、当然にあたらない。
実戦の狙撃だと、ピッタリと合わせることは出来ない。
カチャ、カチャ
少女は、弾倉を、曳光弾と通常弾、交互に入ったある弾倉を装着した。
そして、息を強く吐き。
「ハッ」
呼吸を止めた。
バン!・・・・
シュン~
曳光弾が、光を引き。フォルンの頭上を通り。
「ほら、当たらないです。俺のジョブ軽業師で挑発します!その隙に、近づいてきたらおだぶつですよ」
少女は感覚で、修正し、次の射撃で、
バン!
「ギャアアア」
「「「フォルン!」」」
一人死亡・・・あっという間の出来事であった。
「「「・・・・・」」」
簡単に人を殺せる。そこには、何の感情もない。これが、本来の銃の怖さだ。
連戦連勝で、すっかり、忘れていた。
かつて、名も残らないミリタリーチートたちが、無双していた時代は過ぎ去った。
現代は、対策がバッチリ取られているが、この寝たまま撃つ姿勢は、ゼノンは文献でしか知らなかった。
「いいですね。フォルンの仇討ちです。プランBです。立体戦闘です。岩に隠れていれば安全です。さあ、あの少女と戦います!」
・・・フフフ、下に注意を向けさせて、上からのワナがあります。
人は、こういった時、木に隠れたがるもの。木の上に・・・
「弓の準備を・・・えっ」
少女は、草むらの中に消えた。
「・・・臆病ですね。だから、手強い。プランCです。追跡です。いかに、ミリタリートートといえども、距離を保ち。追跡すれば、やがて、食事、排泄、睡眠と必ずスキが乗じます。
その時に、勝負をしかけます」
「「「はい!」」」
「追跡は、この狩人のマンチェスにお任せを」
追跡が始まった。
だが、すぐに、行き先が予想できた。
「この方向は、カサンドラの街に行くつもりですね。愚かな。行き先は、秘匿するものです。もっとも、そうせざる得ませんね」
「こちらは、夜は、交代で、休憩をしながら、追いましょう」
「「「はい」」」
しかし、
☆夜
バン!バン!バン!
「あの女、寝ていません。夜は、ジィと座っています。盗賊のスキル持ちでも近づけません」
「寝ないのか?」
「いいです。今のうちに、こちらは交代で休憩です」
朗報もあった。
「これは、血だ!負傷したのか?」
「生理の血です。流しながら歩いています。フフフ、相手も苦しいのです。追跡が楽になりましたね」
・・・3日ほど、追跡したが、少女は、睡眠はおろか。食事も、排泄もしませんね。いや、垂れ流しているのかもしれませんね。
たいしたものですが、やがて、血で魔獣が集まり。ますます、休めなくなりますね。
追跡は続く。少女が死ぬまで追うつもりだ。
最後までお読み頂き有難うございました。