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放浪探偵の呪詛返し  作者: 紫音みけ@新刊2月中旬発売!
第二章 兵庫県神戸市
22/124

第七話 北野異人館

 

          ◯



 陽翔母たちと病院で別れた後。バスで再び三ノ宮の方まで戻り、そこから歩いて北野方面へと向かう。異人館は山の斜面に点在しており、周辺の道は傾斜が急になっている所が多かった。

 目的のエリアに到達すると、左右には洒落たカフェや教会が並び、異国情緒の漂う風景が続く。そんな中でも一際天満の目を引いたのは、赤レンガの外壁を持つ立派な洋館だった。


「うおおお。風見鶏(かざみどり)(やかた)! いつ見ても美しい!」


 神戸北野異人館のシンボルともいえる『風見鶏の館』。その名の通り、尖塔のてっぺんには風見鶏が立っている。


「おい金ヅル、知ってるか!? ここはな、七十年代に放送されたドラマのロケ地になったんだよ。ほら、そこに説明の看板が」


「はいはい。わかったから、さっさと行くで。俺らが用事あるんは風見鶏の館やない。あの子どもらが社会科見学で訪れたんは『山手八番館(やまてはちばんかん)』や」


 興奮する天満の首根っこを掴み、引きずるようにして兼嗣は進む。急な坂をさらに登っていくと、やがて黒い柵に囲まれた洋館が見えてきた。それこそが山手八番館である。チューダー様式と呼ばれるその建物はイギリスで生まれた建築デザインで、大きな窓に高い煙突、玄関はアーチ状になっている。


「ほほう。これはこれでなかなか」


 天満が満足げに眺めている隣で、兼嗣は敷地の入口付近に貼り付けられた案内の紙に目をやった。


「『サターンの椅子(いす)』か」


「ん、何だそれ」


 天満も同じように紙を覗き込む。『サターンの椅子』という大きな見出しの付いたそれには、二脚の椅子の写真が印刷されていた。どうやらこの山手八番館の中にあるらしい。アンティーク調の赤い椅子で、座面の周りには細やかな彫刻が施されている。


「せやせや。これ見たことあるわ。一時期、話題にもなってん。サターンの椅子に座ったら願いが叶うってな」


「願いが叶う? そのわりには、名前がサターンって。なんだか悪魔みたいな名前だなぁ」


「アホ。『サターン』は悪魔のサタンやなくて、ローマ神話の農耕の神様の名前や。よう勘違いする奴がおるけど、(つづ)りもちゃうから覚えとけ」


「ふうん……」


 どこか腑に落ちない様子の天満には構わず、兼嗣は改めて建物を見上げた。


「とりあえず中に入ってみよか。実物を見れば、何か呪いの手がかりが見つかるかもしれん」


 二人は入口でチケットを買い、美しく手入れされた庭へと足を踏み入れた。

 

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