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太平道の遺志  作者: 悲恋
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遺児、立つ

逃げた先の小屋に住み着いてから9年が経った。


僕は志学(15歳)になった。

従姉の真姉さんはまだ一緒にいる。もう弱冠(20歳)を過ぎていて巷じゃ行き遅れって揶揄われる年齢だけど、僕の面倒を見てくれた。


字は自分で決めた。伯父の事を忘れたくないから「角宝(かくほう)」とした。


いつまでもここで引きこもるわけにはいかない。

僕は太平道の教祖一族の生き残った男児なんだ。誰かの庇護下で静かに広めるか、また大集団にして旗揚げするか、どちらにするかだ。

だけど張角の甥や娘がまだ生きてると知れれば、官軍が必ず追手を差し向けるだろう。武力が無い今、僕や従姉(あね)の名を出すのは危険だ。

こう思い悩むと、僕は必ず従姉に相談していた。

「どうしようか。誰かの庇護を受けるにしても、伯父上の様にかつての信者をまとめあげて再び蜂起するか」

「蜂起はやめておきなさい。私たち2人で何ができましょう。誰かの庇護に入るべきよ。」

「だけど今天下にいる群雄はほとんどが元官軍だ。袁紹、曹操、袁術は僕らを召し抱えるふりをしてそのまま斬ろうとしてくるはずだ。だから各地に散らばった信者をもう一度纏めて蜂起するべきだ」

「その信者の居所が分からない以上、蜂起は出来ませんよ。そもそも私たちの顔を知っているものは皆広宗(こうそう)で斬られているのです。よしんば数百や数千で残っていたとしても『天公将軍』の名を騙る不届き者として首を献じられるのが関の山でしょう」


結局意見は纏まらなかった。

梁翻(りょうほん)という偽名で少し離れた人里の農民たちと物々交換をしていた事で、その農民たちから噂話とはいえ世の中の情勢を知ることが出来た。

情報として大きなことは、「長安に拠点を移した董卓が呂布に誅殺されたこと」「兗州(えんしゅう)を支配している曹操が徐州に侵攻しようとしている気配があること」「呂布は董卓の残党軍に敗れて長安(ちょうあん)を失い、行方がしれない」の3つだろうか。

あれほどの武力を誇り、栄耀栄華(えいようえいが)の真っ只中にいたはずなのになぜか養子にした呂布に誅殺されてしまったのだ。

しかも英雄になるはずの呂布は董卓の配下に敗れて都落ち、つまりは今長安を抑えているのは董卓軍の残党ということだ。誰が牛耳っているかは分からないがあの董卓の配下だ、董卓政権かそれ以上の惨状になっているだろう。


やはり、これ以上の事が分からない。所詮は農民の噂話に過ぎない。限界がある。

外を識るには出るしかない。でなければいつまでも井底(せいてい)(かわず)でしかない。


従姉もついてくることになった。9年も経った以上、(ほとぼ)りも冷めた頃合だろう。

乱の影響で戸籍整備が出来なかった為に潜伏は容易だったようです。

収穫量こそ少ないものの、税租税がかからない隠し畑なども横行していたとか。

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