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太平道の遺志  作者: 悲恋
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燃える広宗と逃げる少年

物心ついた時から、僕は追われていた。


お父さんも、その兄弟も、お母さんもみんな消されてしまった。

僕は残された従姉と一緒に逃げていた。

もうどこにいるか分からない。どこに向かっているのかも分からない。だけど、もう広宗には戻れない。今じゃあそこは火の海だ。


分からなかった。だけどお父さんが戦っているのは分かった。

お国は荒れてるのに上は何もしない。伯父さんが言うには「上は下を見ず、隣で働く仲間を蹴落として、更に上に行こうとしている。今の中央はそんなところだ。最早、生半可な事ではこの国は正せない」とのことだ。


黄色い布を見ると安心した。みんな伯父さんが立ち上げた集団の人達だ。自分の食べるものもそんなに無いはずなのに、伯父さんたちを拝んで、物を置いていってくれる。

みんな優しくて好きだった。みんなが遊んでくれるのは楽しかった。


だけど戦いには負けた。

僕たちの黄色い旗はそこかしこに燃えて転がり、掲げられているのは見たことの無い旗ばかりだった。

伯父さんは既にお空に向かって旅立っていて、必死に色んな人に声をかけていたのは小伯父さんだった。


「烈、私たちは負けてしまった。敵はもうすぐここに来てしまう。早く逃げるんだ。小伯父さんたちが戦ってる間に早く」

「いやだよ!何で逃げるのさ!逃げるのなら小伯父さんも父さんも一緒に逃げようよ!」

「私たちは逃げられないさ。敵に顔がばれてしまっているから何処に逃げても追いかけられる。烈、お前が私たちにとっての希望なんだ。私だって烈のお父さんだってそれなりに強いんだ。ほら、早く」

「分かったわ。ほら烈、悲しいけど行くわよ。生きるためには逃げるしかない」


泣きながら暴れる僕を、従姉ちゃんは手を引いて、少しの食べ物を持って出た。僕に優しくしてくれた人たちは、いろんなところに寝そべっていた。3人ぐらい揺すってみたけど誰も起きなかったから、みんな死んじゃったんだって分かった。


逃げる人たちに紛れて従姉ちゃんと一緒に逃げてた。街から少し離れて休んでいたところに


「居たぞ!張角の娘だ!捕まえろ!」


遠くから僕たちを指さして大声をあげる人に見つかってしまった。

頭に黄色い布を巻いていないし、立派な鎧を着ている。


僕たちは逃げた。必死に逃げた。

僕が足を怪我すると、従姉ちゃんは僕を背負って逃げた。


どこまで来たか分からない。だけど他の人たちの姿も見えない。多分僕たちは逃げきれた。従姉ちゃんは張角の娘だって叫ばれてたけど、敵は張角伯父さんや張宝伯父さんと違って顔や服装を覚えてなかったから、激しく追いかけられることは無かったのかもしれない。


たまたま、小屋を見つけた。

人の気配はしない。この小屋の持ち主は既に逃げたか死んでしまったのだろう。

従姉ちゃんと一緒に、僕はこの小屋に住むことにした。


街からは遠いから、狩りをしたり、木の実を取ったりしながら暮らしてた。


みんないなくなっちゃったのは悲しいけど、まだ従姉ちゃんが居てくれた。木の実をとることも、狩りをすることも初めてだったけど楽しかった。

主人公の名前は張烈、従姉の名前は張真といい、どちらも架空の人物です。


張烈は張梁の息子、張真は張角の娘という設定です。

劉備や曹操などの実在する人物もちゃんと登場します。

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