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第80話 ヒデンソル王国の槙島

 紆余曲折あって集ったミクセス王国とファムニカ王国の要人たちが襲撃された日の夜。


 ファムニカ王国とヒデンソル王国の国境間際の平原に広がる闇夜を切り裂くように、青白い煌めきを湛えた八本足の馬が、東から西へと疾駆する。


 その騎手の名前は、先日の襲撃事件のたった一人の首謀者、槙島まきしま英傑ひでとし


 自分をいじめた加害者である石野谷と、その仲間たちに復讐するため、槙島はその二国の一団を襲撃した。


 しかしそこに居合わせていた有原たちは石野谷を擁護。槙島の復讐から彼らを辛くも守った。

 そして一同は梶が足止めを引き受ける中にトリゲート城塞へ退避し、槙島から逃れた。


 この間、有原と石野谷たちは槙島に勝つことは出来なかった。そして、多数の犠牲者を生むという相応の被害を被るという悲惨な結果に終わった。


 無念に思っているのは槙島もだった。

 有象無象を除いて、この襲撃で殺せたのは、初手で射殺できた逢坂と、自分が使える最強魔法【界樹理啓ユグドラシル・オーダー】で葬った梶の二人のみ。『いじめた連中へ復讐する』という目的には到底届かなかった。


 おまけに梶がイタチの最後っ屁の如く、搭乗していたロボット【プロメテウス・メサイア】を自爆させたことにより、槙島もそれなりの傷を負ってしまった。


 槙島は【英霊顕現ヴァルハラ・アドヴェント】で医療関係の【英霊エインヘリャル】を呼び出してすぐに回復できたものの、その時既に本隊はすっかり遠くに逃げてしまっていた。梶の抵抗は嫌なほどに功績を上げていたという訳だ。


 この結果を踏まえて、槙島は『現時点で石野谷と有原に完全勝利することは無理』と悟った。

 故に、槙島は、かつてトリゲート城塞にいる魔物を狩り尽くしてレベルアップしたように、別な土地で力を蓄えることにした。


 槙島が今目指しているのはヒデンソル王国。


 未だに倒されていない最強の邪神獣【邪悪のテラフドラ】。それに打ち勝ち、己の壁を超える――この手近な目標を果たすべく、そこで情報収集を行う。それが今の槙島の目論見だ。


 一日一分一秒でも早く本懐を遂げる。槙島は夜が暮れていることも気にせず、西へ西へと氷の馬を走らせた。


 沈んだ日が再び昇り掛けた時、槙島は、薄暗い空の下で絢爛に輝いている大都市を目前とした。

 それは紛れもなく、ヒデンソル王国の王都だ。


 槙島は氷の馬を消滅させた後、街に入るため、王都内に通じる門へ行く。


 その時、手荷物検査や身体検査、それからステータスの開示があった。彼はヒデンソル王国では指名手配されていないため、すんなりと門を通らせてもらえた。


 そうして槙島は壁の中に入ると、まず、一直線に伸びたなだらかな坂を辿り、二重に構えられた防壁を超えた先にある、山と見紛う程の荘厳で巨大な王城が目に入る。

 それから彼の瞳に写ったのは、王城へ至る道の両脇の外観を色とりどりに彩る、平均五階ほどの建物が均一に立ち並ぶ様だ。


 同じ王都でもミクセスのそれとは遥かに比べ物にならない、とても戦時中とは思えないその光景に、槙島は――『美しい』や『見事』などの、そういう感性故のものではないが――釘付けになった。


 そんな中、一人の兵士が道に棒立ちする彼へ声をかける。

「そこの貴方、ヒデンソル王国にいらしたのは初めてでしょうか?」


「……ええ、そうだけど」


「やはりそうでしたか……豪華ですものね、この街並み。ヒデンソル王国に初めて来た人は大抵この光景に見とれて立ち止まってしまうものです。

 そうそう、私はこの国の衛兵でございます。国民の平和を守るだけでなく、このように来訪者にガイドをする務めも担っております」


「そう、じゃあ早速聞いてもいいですか?」


「ええ、どうぞお構いなく」


「では、この国の中で近況や噂話などの情報が集まりやすい場所はありますか?」


「情報が集まりやすい……であれば、集会場はどうでしょうか?」


「集会場……」


 ファンタジー系統の作品への関心が高い槙島は、説明されなくとも何となく意味がわかっているが、念のため衛兵の話を聞き続ける。


「集会場とはなんですか?」


「はい、こちらは国内の魔物討伐の依頼を提示し、そこで傭兵に討伐を依頼したり、義勇兵を募るなどをしている施設です。そこでなら王都外に行ったり来たりしている方が多いので、そういう類の情報は集まりやすいかと」

 と、衛兵は言った後、槙島に簡単にその行き方を伝えた。


 やはりそうなるよな。と、槙島は内心思いつつ、

「わかりました。行ってきます」


 その集会場へ向かっていった。


 しかし衛兵は一瞬彼を呼び止めて、彼へ一つ注意をする。

「ああそれと、ここに入る際に言われたと思いますが……あちらの区画には行かないようにしてください」


 槙島は今いる地点から、兵士が指さす王都の内側にそびえたつ二重の壁を一瞥して、

「わかってますとも」


 槙島は教えられた道を通って、この区画内では頭一つ抜けて大きな建物――集会場の広場につく。

 建物の周りとの溶け込み具合といい、そこを出入りする者たちが傭兵らしい荒くれものが全く見えないことといい、ヒデンソル王国の隙のない、整然たる雰囲気が感じられた。


「さて、では始めるか」

 槙島は聞き込みをするため、建物の中に入る。


 その直前、一人の少女が剣を抱えて入口を飛び出してきた。槙島は反射的に横に移り、少女との激突を避ける。


(なんだアイツは……)


「待て! 待つんだ!」


 数秒置いて、集会場から鎧姿の男が出てきた。その男は既に遠くに走って行ってしまった少女を見つけるや否や、

「待て……俺の剣を返せ!」

 その少女を追いかけ始めた。


(そうか、なるほど……)


 二人の様子からして、建物内で何がおこったのかは十分に理解できた――あの男は、少女に剣を盗まれたのだと。


(俺は関係ないんだが、ないこと言われるのも嫌だから、一応追いかけるか……)

 そして槙島も、男とは別のルートを使って少女を追いかけることにした。


「【神器錬成:グングニル】」

 槙島は錬成したグングニルの上に立ち、少女を追跡する。


 少女は持ち前の俊足で傭兵からより遠ざかる。さらに彼女は街道を複雑に曲がることによって、追跡を巻こうとしていた。

 浮遊し地形の影響を受けない槙島はそれをもろともせず、彼女に追いついていく。


 最終的には、もはや逃げることは無理と判断したのか、少女は街中にあるごく普通の五階建の建物の中に隠れた。


「だったら引っ張りだすまでだ」

 槙島はすかさず建物の前に着地し、遠慮なく扉を開けて中へ。


 するとそこに少女の姿はなかった。


 開けてすぐに上階に行くための階段が見えたが、上からは音もなければ気配もない。

 さらに言うならば、この階段は、一段一段に埃が均等に積もっており、ここを登った痕跡も見当たらない。


 なので少女はこの一階に潜伏している――と、槙島は推察し、そこを捜査する。


 すると何気なく積まれていた木箱の下の床に、意味深な扉がついているのを見つけた。


 それを開けると、地下に通じる、形作った土に木の板をはめ込んだだけの粗末な造りの階段があった。

 槙島は最大限の警戒を払い、その階段を降りていく。


 そして、粗末な割に非常に冗長な階段を降りた先、空は黒い岩肌に閉ざされ、ベニヤ板やヒビ入った煉瓦などで構成された家が立ち並ぶ、まさしく貧民街と呼ぶべき光景が広がっていた。


【完】

話末解説ではない

■作者のコメント

【更新頻度について】


 ここ最近、更新を一、二日間隔を空けてしまったり、予定時間(午前8時)通りに更新できなかったりと、更新日時が不安定になってしまい申し訳ございません。


 しかし今現在、作者自身が異様なスランプに突入してしまった関係で、その傾向が続いてしまうことをこの場でご報告・謝罪いたします。


 スランプの理由は、私の手腕(主に文章力)が無いせいで、話を書くたびに『これでいいのか』と不安になってしまい、思うように筆を進められなくなったことだと自覚しております。


 まだこの作品で本当に書きたいことをかけていないことと、私の信条として、未完のまま放置することは決してしないと断言いたします。

 ですが、このスランプが続く限り、ますます更新日時が不安定になってしまうことは、残念ながら否定できません。


 ただでさえ、連載開始時の『毎日二話更新』の約束を破っているにも関わらず、このようなルーズな執筆をしてしまい、大変申し訳ございませんでした。


 なんとか立て直して、あと半分を切った今作のストーリーを書き上げたいと思います。


 以上、長々と失礼いたしました。


 作者より

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