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第116話 援軍続々

 有原と石野谷の合体奥義【光明神アポロン虚剣きょけん】が、槙島が展開した氷の障壁を砕いた時、槙島は驚愕せざるを得なかった。


 かつて二人を襲撃した時、その合体奥義は、スキル【極氷神楯アースガルズ・シールド】で展開したこのバリアで防げていたのだから。


「馬鹿なッ! この極限のバリアが貴様らに……ッ!」


「破れるんだよッ! 今の僕たちならッ!」


 氷の破片が舞う中、有原は続けて槙島へ迫る。


(この距離では魔法は間に合わない……)


 槙島は前方にグングニルを放つ。


 有原は一度立ち止まって、グングニルを剣の一振りで弾く。

「【神馬疾駆スレイフニル・ライド】」

 その一瞬のうちに槙島は、氷の馬を生成して騎乗し、それを走らせ有原から離れる。


「逃がすかッ! 【ピュートーン・ブレイカー】ッ!」

 最中、氷の馬は炎の矢により胴体を穿たれ消滅。槙島は落馬して地面に転がった。


 槙島は地面に片手を突き、ゆっくりと立ち上がる。

 そして槙島は有原と石野谷を睨んで叫ぶ。

「貴様ら……! よくも俺にこんな屈辱を……」


 石野谷は彼へ歩み寄りつつ言う。

「だーかーらー、俺たちはお前を馬鹿にしたくてこんなことしてんじゃねーよ。なぁ祐?」


「ああ、陽星……槙島さん、もうここで終わりにしましょうよ。さもないと僕たちはもっと嫌なことをしなければならなくなる……」


「断る……俺はまだ貴様らに屈するほど追いつめられてはいない……ッ!」

 と、槙島が言った途端、既に呼んでいた英霊エインヘリャル六体と、暗黒兵と王国兵士が、王を守るように並ぶ。


 この時、有原と石野谷の側に来た武藤と松永と畠中が集う。


 槙島が固めた軍団を端から端まで眺めて、松永は言う。

「有原さんはずっと手を差し伸べってるってのに……どこまで意地張れば気が済むんだアイツ」


 さらに武藤が頬をふくらませて、

「まったくもう、こんな面倒くさいことばっか続けてると、そろそろ有原さん本気で怒るよー! 槙島さーん!」


 そして畠中は四人の後で、臆病とは違う理由で震えながら言う。

「ところで、ここから逃げるっていう最初の目的はどうなるんで……?」


「ごちゃごちゃ言うな貴様らァ! かかれッ!」

 と、槙島が号令を放つや否や、彼の眼前に並ぶ軍は、六体の英霊を筆頭に従順に突撃する。


 有原は剣を構えつつ、迫りくる軍と向き合い、

「逃げるにしても槙島さんを止めるにしても、ここはある程度敵を倒さなければいけないようですね……!」


 石野谷は弓を構えながら、正面から来る部隊だけでなく、周囲を取り囲む兵士にも目を向けて、

「だな。これはまだまだ結構厳しい戦いになりそうだぜ……!」


「す、すみません……僕、空気の読めないこと言ってました……」


 五人は迫り来る軍を前に集中力を高め、反撃へ向けて意気込んだ。


 しかし、激突の寸前、

「【ヒュドラの喝采】」


 五人の後ろから、八本の極太の水流レーザーが放たれ、最前列の六体の英霊がこれを受ける。


 槙島は六人の英霊の前にグングニルを放ち、高速回転させて水流を遮断する。これにて六体の英霊は大ダメージを受けながらも消滅は免れた。

 

 そして槙島はグングニルを手元に戻し、有原たち五人より奥の空中を睨む。

「貴様までも来たか……海野ッ!」


 そこには魔導書を開き、魔法の発射体勢をし終えた海野が、ゆっくりと地上に落下していた。


 有原はすぐに彼の方へ振り返る。

「隆景! 約束通り来てくれたんですね!?」


 海野は五人の側に歩み寄ってから、

「ええ……約束した物とは少々違いますけど」


「少々、違う……!?」


 有原たち五人が疑問符を浮かべる中、海野は親指で後方を指差す。


 と、ヒデンソル王国の包囲の外には、いくつかのミクセス王国の軍機がはためいており、その辺りから何やら喧騒すらも聞こえた。


「あれってまさか……隆景!」


「ああ、アンタの考える通りだ祐。トリゲート城塞にいるミクセス王国の本軍も連れて来た」


 有原、武藤、松永の先発隊が出撃した後、海野はすぐに、トリゲート城塞の軍をまとめるハルベルトやゲルカッツへ進言した。


 ――あの四人の突入で浮足立っている槙島軍を襲撃しましょう。そうすればきっと奴らの出鼻を簡単にくじけると思います」


 何よりも早く槙島を止め、大陸の騒動を終結させられるのならば。

 と、これを二人の騎士団長はすぐにこの策を、あの数々の逆転劇を生み出した海野であることも加味して採用。

 こうして彼らはここに進撃したのである。


「……というわけでな。あ、勿論アイツらも来てるか……」


「どぉぉぉりゃぁぁぁぁ!」


 さらに海野に続いて、飯尾が敵兵や魔物を殴る蹴るで押しのけながら、有原たち側にやってきた。


「……人の台詞遮るなよ飯尾」


「んなこた知らん! それより……大丈夫か祐!」


「……ああ、大丈夫だよ護! この通り畠中も、助けに来た皆も無事だから」


「そうか! だったらよかった!」


 さらにさらに、飯尾がこじ開けた道を突っ切り、内梨と三好もやってくる。


「お、お待たせしました、皆さん!」


「やっと追いついた……全く、急に飛び出してかないでよ飯尾さん、海野さん!」


 三好に注意された海野と飯尾は言い返す。

「それは皆がヤバそうだからだ。仕方ないだろ」

「だって皆心配だったんだからよ。しょうがないだろ」


「や、やっぱり二人とも、目的が一致すると息が合いますね……」

 と、二人の様子を見て内梨はつぶやいた。


 それからついに揃ったミクセス王国の界訪者九人は、槙島と向き合う。

 その時、彼は顔をしかめていた。自分の手勢に囲まれつつ、突然の大援軍に動揺せざるを得なかった。


 そして代表して有原は槙島へ言う。

「槙島さん……何度でも言わせてください。もうやめましょう、これ以上戦っても貴方はますます嫌な思いをするだけですから……」


「こちらこそ何度でも言ってやる……黙れッ! 俺は止まらない……貴様らのような正義のふりをして俺たちに何一つ同情を寄せない連中にはなぁぁッ!」


 そして槙島は変わらず憤怒に駆られたまま、六体の英霊を、暗黒兵を、ヒデンソル王国の兵士を動かす。


 畠中は槙島の怒りの激しさに引きながら、

「英傑……せっかく祐が寛大でいてくれてるのに、いつまで強がるんだよ……」


 その一方、松永は槙島の諦めの悪さに呆れて、

「もう仕方ない。まずは目先の敵を倒すしかありませんよ」


 松永の言葉に頷いてから、有原は振り向いて、

「……では行きましょう! 皆さんがいれば、きっとこの戦いも明るい未来へと導けるはずですから!!」


「「「「「「「「おう!」」」」」」」」

 

 有原の頼みに八人と、後方で戦うハルベルトとゲルカッツの本隊は声を勇ましく上げて返事する。


 そして九人の勇士たちは槙島の軍勢へと立ち向かう。


 槙島の軍勢の切っ先となったのは【英霊】李書文、全長三メートルもある大槍を振り回しながら九人へ突撃する。


「アイツは俺に任せてください……【一心の世戒】ッ!」

 松永は半径十メートルの半球型のバリアを生成し、そこに李書文と一対一の決闘を強いる。


 李書文は唯一の相手となった松永めがけ槍を突き出す。

 松永はそれを右に跳んでかわす。


 李書文は突き出した槍を勢いのまま地面に垂直に突き差し、それを軸にして左方向にいる松永へ回し蹴りを放つ。


「見切った……」

 対して松永は李書文の顔へ片手を突き出し、そこから稲妻を放つ。


 顔から稲妻を食らった李書文は、目をつむりつつ、すぐさま蹴りを中断して体勢を立て直す。。

 その瞬間、松永は稲妻を帯びた蹴りを返し、李書文を突き飛ばす。


 松永は突き立てられたままの槍を拳でへし折った後、直ちに李書文へ再接近し、もう一度稲妻を帯びた蹴りを食らわせる。


 李書文は二人を囲むバリアへ背を打ち付ける。そこに流れる電気が李書文を痺れさせた。


 その隙に松永は李書文との間合いを詰めて、まず膝を胴に思い切り打ち付ける。

「これからは俺の好き放題にさせて貰うぞ……!」


 という宣言通り、松永は李書文をバリアに押し付けたまま、矢継ぎ早に殴打を繰り出した。

 そうして李書文は一切の抵抗が出来ないままついに消滅した。



 その一方、武藤は【英霊】雷電為右衛門と交戦していた。


「【アガートラム・エンハンス】!」

 武藤は右腕に装甲のような銀色の光を纏わせる。


 愛刀クラウ・ソラスを右手で強く握りしめ、そこから放たれる光属性エネルギーの勢いをさらに強める。

 そして武藤はクラウ・ソラスの鍔の下部から光属性エネルギーを噴射して雷電へ猛烈に勢いづけて突進する。


 雷電はこれをどっしりと仁王立ちして待ち構える。

 それは武藤が間近に迫ってもなおのことだった。


「そんなボケーっとして負けても知らないかんねー! 【トゥアハ・グローリー】ッ!」


 武藤はクラウ・ソラスの刀身にも光を纏わせ刃を延長し、お構いなしに雷電へと振るう。


 雷電はそれを右腕で放った突っ張りで受け止める。武藤の攻撃は、雷電のかかとを数ミリ後ろに動かせたぐらいであった。


 武藤へカウンターを仕掛けるべく、左手を後ろに引いて力を溜める雷電。だが、彼の眼前にいる武藤の目にはまだ闘志が宿っている。


「みんなのためにいっぱい特訓したんだ……ボクの力はこんなもんじゃないんだぞー!」


 武藤はクラウ・ソラスの鍔下部からも刃からも光属性エネルギーを最高出力で解放し、より更なる力を加えて雷電を押す。


 雷電は右手だけでなく左手も添えて、武藤の一太刀を食い止める。

 

 だがもはや武藤のパワーは遥か先を行ってしまった。もはや雷電はどうすることもできずただ衝撃を味わされた。


 そして武藤は雷電を押してヒデンソル王国の包囲陣の端まで爆進し、ついに極大の一刀を与えて雷電を光の塵に変えた。


 その一方、【英霊】アストルフォの相手を三好は担っていた。


「【ルドラ・ブラスト】ッ!」


 三好は両手を突き出し、闇属性エネルギーを放射する。


 アストルフォはそれを開いた本の紙面を向けて防御し、闇属性エネルギーを威力と質量そのままに三好へ反射する。


「やっぱりそうなるよね!」

 三好はこれを五メートルほど垂直にジャンプし回避する。


「【ガルーダ・ストライク】!」

 さらに三好は右足に闇属性エネルギーを纏わせ、重力を味方につけアストルフォへ蹴りを放つ。


 アストルフォは槍を振るって三好の足にぶつけてガードする。

 同時に、槍の効果により三好に更なる重力を与えて地面に叩きつける。


 三好は地面を数回転がり、アストルフォと適切な間合いを取り直したところで起き上がる。

 ここでアストルフォは角笛を吹き鳴らす。


 すると三好は体勢を立て直したばかりにも関わらず、また片膝を地面についてしまう。


 アストルフォの持つ角笛は、『音色を聞いた相手を弱らせる』という効果を持つためだ。


 これをチャンスと捉えたアストルフォは角笛を鳴らしつつ三好へ接近し、槍を振りかざす。

 刹那、三好は一対の短剣を交差させて槍を受け止める。


 三好は、アストルフォの槍を押しながら立ち上がる。

 その時、三好の頭には暗い紫色のヘッドホンが装着されていた。彼女のスキル【ヴェーダ・ジェネレート】による闇属性エネルギー製の物だ。


「アンタの角笛は音を聞かなきゃどうってことない! こうして耳を塞いでおけば大丈夫でしょ普通!」


 三好は一対の短剣に力を込めて、槍を押しのけた後、すかさずアストルフォの顔面を狙って右手の短剣を突き出す。

 アストルフォは頭を傾け紙一重で回避。が、この時、口にくわえていた角笛に刃がかすり、そして壊れる。


「よし、自分で作ってなんだけど付け心地悪過ぎるこれ!」

 三好はヘッドホンを消失させた後、ここからは前のめり気味に、至近距離で連続攻撃を仕掛ける。


 接近戦となれば、本を使って攻撃を反射することは出来ない。

 アストルフォは唯一の頼みである槍を操り、守りを固め続ける。


 だが至近距離となれば、小回りの効かない槍よりも短剣の方が優位。

 アストルフォはガードが間に合わず、三好の連続攻撃を次々と受けてしまう。


 そしてアストルフォはダメージが溜まり、守りがままならなくなった瞬間、

「今だ! 【ターンダヴァ・フューリー】!」


 一対の短剣を怒涛の勢いで振り、アストルフォの槍を破壊し、その身体を幾度と斬りつける。

 そして最後の一閃を繰り出した直後、アストルフォは大の字に倒れ、光の塵と化して消えた。


【完】

今回の話末解説はございません

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