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4 野球部の襲撃

 二人は全速力で廊下を駆けていた。その後ろには汗臭い野郎たちの姿が。


 その一人がなにかの呪文を唱えた。次の瞬間、廊下が凍結する。


「《スリップ》……!?」


 リーリヤは敵が放った魔法を見て驚く。なぜならこの魔法は自分たちだけでなく、あちら側にも干渉する魔法だからだ。自分たちがやられても捕まえるという意思の現れだろうか。


 それを見ていつの間にか、かばんから杖を取り出していたミレイアが魔法を唱える。


「《ブリッジ》ッ!」


 すると二人の足元に鉄の足場ができる。それを二人は走って駆け抜けていった。というのもこの魔法の有効時間はわずか15秒で、すぐに崩れてしまうからだ。

 氷の床から抜け出した二人は校舎を飛び出して外にある草木に囲まれた道を走り始める。


「しつこいッ!」


 ミレイアはあまりのしつこさに声を荒げる。


 二人の後ろにはまだ野球部員が追いかけてきていて魔法を何回も放っている。


「《ウォール》」


 ミレイアが放ったのは鉄の壁をつくって相手の動きを封じる魔法。


 しかし敵はそれをひょいと飛び越えて二人を追ってくる。


 だがそんなことは予想済。ミレイアは連続で魔法を発動した。

 その魔法の名前は《ハイドロアッパー》。敵単体を地面から噴出させた地下水で攻撃する魔法だ。


 それを連続で敵に放って確実に倒していく。


 アホみたいに突っ込んでくる野球部が下から飛ばされるのを見てミレイアは愉快な気持ちになった。もしかしたらSの素質があるかもしれない、とミレイアは敵を倒しながら思う。


 と、その時。


「《ウォーター・カッター》ッ!」


 ミレイアが瞬発的に魔法を放つ。その水の刃は二人を狙っていた鋭い葉に命中した。


「あ!?」


 リーリヤがなにが起きたかわからないというようにミレイアの顔を見る。しかしミレイアはそんなことを無視してリーリヤに言った。


「もう囲まれてる。リーリヤも杖を持って。私だけじゃ相手できない」

「わ、わかりました」


 リーリヤは頷いてかばんから自らの杖を取り出す。


「行くよ!」

「はい!」


 二人は片手にかばん、もう片手に魔法の杖を手に道を駆けていく。


 そんな二人を横の木々の間から飛んでくる刃物のように鋭く尖っている葉が襲った。


 ミレイアは完全に感覚に頼って攻撃を防いでいたが、飛んでくる方向が草木で覆われているので敵を目視できずにすこし焦り始めていた。


 というわけではない。


 敵から見れば焦っているように見えるのだろうが、まったくそんなことはない。


 ミレイアは待っていた。


 相手が調子に乗って隙を開けるのを。

 自分が見えない敵を倒すことのできるその瞬間を。


「ミレイアさん!」


 リーリヤがミレイアに話しかける。その彼女の指先は右の茂みに向けられていた。

 そこからは数多の砂の弾丸、《サンドスナイプ》がこちらに向けられて放たれていた。


「リーリヤ!」

「はい!」


 ミレイアはリーリヤに一瞥をくれると茂みに向かって走り出した。


 今頃、敵は茂みの奥でガッツポーズでもしているのだろうか、とミレイアは思う。だとしたらその思い込みを壊すことはかなり楽しそうだな、とも。


「《フリーズ》ッ!」


 リーリヤが砂の弾丸を止めている。しかしその有効時間は10秒だけだ。


 その間に決着をつける!


 ミレイアは、かばんを捨てて全速力で茂みに飛び込んだ。そこには嬉しそうに話している二人組が。


 まさか二人だとは思わなかった、と思いながらミレイアは呪文を唱えた。


「《スパークキック》ッ!」


 次の瞬間、足にスパーク(つまり電撃)が纏った。


「あああああああああああああああ!!!」


 片方の男子生徒に飛び蹴りが炸裂する。それを見てもう片方の男子生徒が悲鳴をあげて逃げ出した。


 ミレイアがダンスをするように片手でからだを支え、その足でもう片方の男子生徒のからだをふっ飛ばした。その姿はまるでストリートダンサーのよう。


 男子生徒は綺麗に空中に投げ出され何回かバウンドして地面に着地した。

 二人の生徒はびくびくと痙攣しながら泡を吹いている。


 それを見てミレイアはみっともない、と顔を背けた。そして逃げようと立ち上がろうとした。


 しかし。


「ッ!?」


 足が動かない。というより痺れて立つことができないのだ。


「ミレイアさん! 大丈夫ですか!」


 リーリヤが茂みを抜けてこちらにやってくる。ミレイアが立ち上がれないのを見て駆け寄ってくるスピードが上がった。


「ごめん。足が痺れちゃった」

「立てそうですか?」

「いや、たぶん無理そう」

「そうですか……」


 リーリヤはまわりをきょろきょろと見渡した。誰か人を探しているのだろう。しかし誰もいなかったのかリーリヤは人を探してきますと走り出そうとした。


 あ、ちょっと待って、と口に出そうとしたが声が出なかった。


 そして段々と視界が暗くなっていく。

 ミレイアの意識はリーリヤの掛け声と共に薄くなっていった。

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