炎の断捨離7
ついにサブタイトルをつけることを諦め、物語を進行しております。
シリーズ長編です。お付き合いいたただいている方、誠に感謝申し上げます。
感想や評価もお待ちしております。
それを励みにラストまで頑張ります。
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「サナレスあなたねぇ……、自然現象だったとしても、それはそれで問題なのですよ」
サナレスが師と仰ぐリトウは、メガネの柄に指を当てて苦虫を噛み潰したような顔になっている。
サナレスよりは三倍も長く生きているというのに、どこか純粋で不器用な感じがする男は、躊躇いがちに言った。
「リトウ先生、おっしゃっていることの重大性は、わかっているつもりです」
「だったら……、あなた達は兄妹で揃いもそろって、どうしてそんなに浮かれているんですか!?」
地震発生以来、リンフィーナが上機嫌でいるので、サナレスもその横で穏やかに微笑んでいた。相変わらず兄は朝早く公務に出かけ、夜遅くに帰ってきて、頻繁に水月の宮を不在にしたがそうできる然るべき理由もあったのだ。
兄は気がついていたらしい。
アセスが魔導士に落ちたという事実の後も、味方でいてくれること。それが心強くて、そして何よりも、ーーアセスがアセスでいてくれたことが嬉しかったのだ。
「サナレス、貴方が私の講義を聞いて地震という現象を認知してくれていて嬉しくは思いますが、確認しますよ。地震は、地下で起こる岩盤のずれによる発祥だということはお忘れではないですよね?」
この世界が丸ければ、プレートテクニウスに準じて地震発生は頻発するのだとリトウは嘆いた。
「一度聞いた有用な情報は忘れませんよ。先生の仮説は間違いではないと思う。アルス大陸は世界一大きな大陸で、地震とはかつて無縁だった。だから石材の建築物も多く、その文化の歴史も長い」
「そうですよ。地震に慣れていない人の国に、あんな大きな地震が頻発したらどうなると思います? 歴史的遺産が地震で崩壊するかもしれないんです」
窓ガラス以外にほとんど損傷がなかった水月の宮の一室で、サナレスとリトウは話していた。サナレスはこの宮は耐震強度を考えて設計したから、心配ないのだという。
リトウの方が切羽詰まって言葉を紡ぐが、サナレスは困ったように「歴史的遺産の心配をしているあたり、先生らしい」、と肩をすくめている。
「この世界、いやアルス大陸も千年前には崩壊の危機を迎えました。人々は魔女の呪いだとか下らない伝承を残しましたが、実際には大陸が割れるような地層変動があったのだと想像できます」
「史実も大切ですが、先の予測は科学的根拠も必要です。あれほど大きな地震が起こってしまったら、この先余震も起こる確率が高くなる。更なる強い揺れが起こることだってあるかもしれない。ーーサナレス、貯水ダムで電力を賄うダイナグラムは、正直持ち堪えられる気がしない」
三分の一焼き払われて、ジウスの結界により何人たりとも寄せ付けなくなったダイナグラムは更なる危険に晒されているのだとリトウは言った。
「あなたが愛して、ここまで豊かにした王都ですよね」
リトウは焦燥感からサナレスに迫ったが、サナレスは表情を変えずにいた。
「先生と一緒に開発した、あの頃が懐かしいですね。そして今のダイナグラムには水力発電の集大成が張り巡らされた」
二つの大きなダムからの水力発電は、今やダイナグラムにはなくてはならない生活資源だ。
地震によってそれが波状してもいいのかと問われ、サナレスは吐息に笑みが漏れた。
「手放しに喜べる話ではないですが、それも仕方がない話ですよね。技術というのは、壊れてから更に改良され、より利便性を追求していくものだ。人口も増え、水力発電だけでは近頃賄えないようになってきているのも承知している。築き上げた文明だが、自然に壊されるなら、それも一興かもしれないな」
「サナレス!」
リトウはサナレスの名を強く読んだ。
「クラッシュ&ビルドって姿勢、なくはないんですけどね。この大きな地震の後では、済まないことだと思います」
第三エリアの関与を疑うのであればこそ、自然現象には着目すべきだと、リトウは眉根を寄せた。
「そうですね。技術は壊れてもまた作り直せばいいけれど、私も人命を蔑ろにするつもりはないですよ」
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
シリーズの7‘作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」




