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炎の断捨離66

こんばんは。

最近は不定期になりましたが、週に3日は書いています。


日記のようなものなのですが、お付き合いよろしくお願いします。

評価、コメント、励みになりますのでよろしくお願いします。


        ※


「あのさ、ラーディオヌ一族の総帥が不健康だってことは分かったんだけれど、和木くんは何でこんなにこの世界の政治の中枢に関わっちゃっているの?」

 異世界転生前から自分の意識に大きく影響を与えてくる存在として刻み込まれている、和木ヨースケーー日本のヤクザ、つまり893の跡取りであった彼に、思い切って質問してみた。


「おまえさ、俺らの寿命って知ってるだろ?」

 リトウは神妙にうなづいた。

「三百年くらいだって倭の国に行った時に、倭の国の殿に聞いたよね……」


 ワキは寿命を全うできそうなことに拍手しながら、自分に向かって説明してきた。

「俺たちは異世界転生して巧くやってきたよなぁ? 一文なしからはじめて、ほんと三百年近い年月が経って、それぞれの進路を掴み取ってきた」

 それには100%同意する。食料がなくて飢えるところから、まるでわらしべ長者みたいに、この異世界にーー迎合、違うな適応してきた。


「おまえもわかるよな? 俺たちが生まれた時代で名前を残す存在って、色々いただろ?」

 歴史の教科書に名前を残す人、個人的には夏目漱石が好きだったけれど、歴史に名を刻む数多くの偉人について、記憶に残っている。


「ラーディオヌのアセスと、ラーディアのサナレス、二人はそんな存在なんだよ。興味を持って悪い?」

「いや……」

「それにさ、歴史好きなお前なら日本の古事記とか知ってるだろ? 神々から文化が生まれていった過程わかるんじゃない?」


「西洋なら、ギリシャ神話だよね。日本じゃ古事記は面白いけど」

「俺はこっちの神子って存在が、古事記に書かれた神々に思えてならないんだ。サナレスとアセス、神の氏族の王像であるそんな二人が同時に求めるものが、同じ少女とか、現世だったらスクープでしょ?」

「スクープって、そこ面白がっちゃう? 確かにめちゃくちゃ気にはなるけれど……」


 ヨースケは軽く舌なめずりして悪い顔をする。

「おまえ、どっち派?」

 リトウは回答を分かりきっているヨースケに、不承不承会話をつなぐ。


「僕ははサナレスを応援するよ。僕の人生の行き着いた先がラーディオヌ一族だったって理由じゃなく、もっと単純な私的な理由なんだけどさ、あの人、僕以上に恋愛遍歴こじらしてて、真っ白なところあるから」

 

 なぜか得意げにヨースケは笑う。

「そうかーー。だがこっちのアセスという綺麗な人形も、相当こじらせてる。どちらが彼女をものにするのか知りたいよなぁ?」

「拗らせてる勝負必要? それ単なるワイドショー的なノリじゃない?」


「悪い?」

 こんな異世界にいきなり転生させられた俺たちの最後の娯楽なんて、そんなものしかないじゃないか、とワキは頬を歪めて苦笑した。


「悪くないけどさ。僕たち前の世界で生きてても、こっちの世界で生きてても、多分たどり着いた先はそう違わなかったとおもう。樫木くんは、神社の神主で神に使える存在になるべく存在だったけど、イドゥス大陸の神官になったし、和木君もさ、893の跡取りが裏社会のボスになってる。たぶんーー、僕も……完全に学者肌だよね?」

「それは俺も感じてるよ。ただ俺達に突然起こった不条理な異世界転生の意味は、たぶんこのワイドショーのゴシップ記事になりそうなところに見出せる気がするんだ」

 ヨースケなりに真剣に考えているようで、リトウは言葉を呑んだ。


「わけがわからない話をーー」

 聞かれないようにと、ヨースケと話していたつもりが、その会話はラーディオヌ一族の総帥にきかれていた。


「あ、スクープの皇子様だ」

 ヨースケがふざけて嘲笑うが、彼は表情を柔らかくして、「こいつには、ーーいや総帥様には全て伝えていいと私は判断している」


 和木ヨースケはそういう人間ではなかった。

 いつの間に彼はラーディオヌ一族総帥のアセスという人を信頼したのだろうか。

 自分でも長年勝ち取れなかった彼からの信頼の重さに、それを勝ち取ったアセスという人の存在に驚いてしまう。


「おまえたちが仲間同士で使用する言葉は、ずいぶん外来語が多いな。書物で読んだから理解はできるが、おまたちは何者だ?」

 いや、とアセスは首を振った。

「転生者なのだな?」

 質問というよりも確信からくる確認の言葉だった。


 まだ二十年も生きていない若い総帥は、冥府に行ったことで全てを把握してきたようだ。

「私はおまえたちの娯楽に付き合う義務はないが、ラーディオヌ一族の総帥としての役目を把握している。つまり歴史に名を残す人間としての責務を承知しているし、ーーサナレスも……、ラーディオヌ一族を背負うサナレスもそれは同じだろう」


 アセスは表情を変えずに理由を述べる。

 だからこそ。


「無茶もするし、無理もするのは当然の立場であるということだな」

 美女と見紛うほどの美しい華奢な男は、冷静にそう言った。


「樫木のやつも、アルス大陸に渡って来ているらしい」

「え、ほんと?」

 ワキの情報網は、今やアルス大陸に張り巡らされた電波のようだ。


「何だが戦乱の時代がもう一度来るみたいだーー」

 リトウは思いを口にしたが、それよりも世界にとって重大な凶事が起こる予兆のように思えた。

 異世界転生した、あの日のような。いや、もっと前の世界とも関連するような何か悪いことが起こるような、気がしてしまった。


 リトウはため息をつく。

 らしくもない。


 自分は樫木アキとは違って、直感というものや、摩訶不思議な世界に縁遠い人間だ。全ては科学、コンピュータの人工知能の先に不可思議が解明するのだと、どれだけおかしな出来事を経験しても、それは科学で証明できると言ってきた人間だ。


「君たちの価値観は理解しよう。この世界だろうと、違う世界であろうと生命体が本能で望むのはまずは生命の維持、そして精神の平和だ。ーー私も先ほど、魂が彷徨って転生した気がする」


 アセスの言葉に、ヨースケとリトウが同時に反応した。

「え?」

「マジか!?」

 ワキと自分は眉根を寄せて、涼しい顔をしているアセスを複雑な思いで凝視する。


「おそらくな……。だからこの世界ではない理を少しは理解していると想う」

「僕たちの生きた世界に行ったの!?」

「お前達が口にする情報から察するに、私が行ったのは、もっと先の未来だろう。お前達のように、人と人が簡単に群れることのできない先の世界に行っていたと、かろうじて覚えている」

 アセスはその記憶を少しでも長くとどめていられるよう、自分の中で反芻しているようだった。


「最後まで、付き合うって決めたからよ」

 ワキはアセスにそう言った。その様子は決してゴシップ生地の先のネタを気にしているようには思えず、アセスに対して真剣に向き合うワキに対して、リトウは息を呑んだ。


「そんな大そうな私ではない。私はーー」

「いいって言ってるだろうが。一族とか世界とかそんなの背負わなくていいから、単にゴシップ記事として忘れられるようなことになってもいいから。あんた、思うように勝負しろよ、サナレスと!」

 偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

シリーズの7‘作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


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