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炎の断捨離6

最近では仕事の都合上、毎日の投稿が難しくなっています。

ですが週に三作くらいは投稿できるかなとペースを掴めるように頑張っています。

自転車にハマったのもあるかも。

応援よろしくお願いします。

        ※


 高次脳機能のない生物であればもっと単純だったのだけれど。

 人の脳が本能を占める割合は高い。

 多分、高すぎるのだろう。


「兄様!」

 今夜も皆が寝静まる時間に帰ってきた兄の背中に、リンフィーナは呼びかけた。

 振り返るサナレスはここのところ痩せたと思う。

 

 元々鍛錬によって筋肉質で、長身痩躯の体ではあったのだけれど、おそらく気概が加わってより際立ち、目つきも鋭くなっている。

 それはサナレスの仕事の延長線上にあり、「遊び」をどんどん奪っているように見え、リンフィーナは心配していた。


「どうした? 遅くなるから、待っていなくてもいいといつも言っているだろ?」

 いつも自分がサナレスの帰りを起きて待っていることについて、サナレスは不思議そうにしている。


 ただ遅くなるだけであればこれほど心配はしない。

「兄様! ちょっと……」

 この日の兄は見た目にもボロボロだった。衣服が局部的に破れ、よく見ると体の腹部から血を流していた。

 ジウスの代わりに動いているだけではなく、物騒な状況に身を置いているとしか思えない様子に、リンフィーナは堪らずにサナレスの手首を掴んでいた。


「兄様、何してるの!? 何でそんな怪我しているの?」

「擦り傷だろ? また全裸を見せて確認する?」

 サナレスは自分が記憶にない夜のことを、怪我がないか確認していてそうなったのだと説明して笑い「脱げばいいの?」と自分に聞いてくる。


 違うし。

 サナレスは絶対に無理をしている。


「はぐらかさないで兄様」

 リンフィーナはサナレスのにの腕を掴んで、正面に向かい合う。


 真剣に問いただそうとした時、ドンッと大きな音がして、夜中だというのに地面が揺れた。

 縦にあり得ないほどの力で地中を持ち上げる人外の力に、一瞬足元をとれてサナレスの腕の中に体制を崩した。


「攻撃されてる!?」

 激しい地面の揺めきにサナレスの腕の中に支えられながら、リンフィーナは敵襲を気にしていた。

「ちょっと待って……」

 サナレスは揺れが止まるまで安全な体制を確保して、部屋の中央に移動した。

 その瞬間、館の窓ガラスに亀裂が走り、部屋の中に割れた破片が飛び込んできた。


 眠りについていた者たちが、驚いて悲鳴をあげ、にわかに館中が騒がしくなる。

 時間にしてほんの数秒のことだったのだと思うが、リンフィーナは兄の側で身を固くした。

 自分を襲ってきた敵だとしたら、また巻き込んでしまう。

 ラーディアの民と水月の宮を危険に晒してしまうかもしれないという恐怖で、兄の衣服を掴む手が僅かに震えた。


「大丈夫これくらいの揺れじゃ館は潰れない」

「隊長、無事ですか?」 しばらくして近衛兵副長が大きな揺れで僅かに固くなった扉を破るように飛び込んできた。


「大事ない。館の周囲の様子は? 新設している宿舎にいるものは無事か?」

「はい。周囲に敵は見えず、沈静化しています。宿舎の方の天井がいくつか崩落しましたが、兵士たちは皆無事のようです」

 そうか、とサナレスは安堵の息をついた。


「呪術の類でしょうか?」

 未だ警戒体制のまま、ギロダイはその手に大剣を握っている。

 サナレスは割れた窓の方に近寄って、外の様子を確認し、顎に手をやって少し考えた後に質問に答えた。


「ーーおそらく自然現象だ。地震っていうのだけれど、ーーアルス大陸では、ここ数百年は起こっていなかったんだけどな」

 ギロダイと自分は絶句した。


 そこへ次に部屋に到着したリトウ・モリがぜぇぜぇ言いながらも、「正解です」とサナレスの意見を肯定する。

「驚いた。やっぱり自然の力はすごいな」とサナレスはリトウの方を向いて苦笑した。


「でも魔導じゃ……?」

「違いますよ。そんな不確かな現象じゃありません」

 未だ心配を払拭できずにリンフィーナが聞くと、リトウはキッパリと答えた。


 サナレスを見ても、リトウが正しいと返答される。

 ーーただ地の属性を持つ、例えば高位の呪術者であれば、これくらいのことができるので、ギロダイ以上にリンフィーナは戸惑っていた。


 自分の嫌な想像が顔に出ていたのか、サナレスはくすっと笑う。

「お前これ、アセスがやったことだって?」

「そんなこと言ってない! アセスはそんなことはしない」


 地の属性を持つ術者なんて、他にも沢山いるだろうから。

 ただ天道士の頭数は、そういないだろうけれどーー。


「仮にこれが高位の呪術者、つまり地の属性の天道士の力だったとする。ーーでも不可能なんだよ」

 解せない顔でサナレスを見ると、サナレスはなぜか得意げに答えた。


「私たちがよく知っている心配性の、地の属性を持つ天道士が、この界隈に結界を張っているからね。そんな強大な力に守られているのに、他の術者は手出しできないだろう」

 だからこいつは自然現象だ、とサナレスは言い切った。


「アセス……?」

「ああ。お前が魔導士に落ちたと案じているあいつが、お前の住まうこの水月の宮、いやラギアージャの森をずっと護ってくれているよ」


 おかしいとは思ったのだ。

 義兄セワラの腹いせで取り壊されていても不思議ではなかった水月の宮は、リンフィーナがここを出て行った時のまま、誰の侵入も許していないようだった。

 戻ってきた時の違和感と同時に感じた安堵感は、アセスに与えられたものだった。


「お前を奪い合う恋敵としては、強敵だな」

 言葉とは裏腹に、サナレスは喉を鳴らして嬉しそうに笑っていた。

 

 偽りの神々シリーズ

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

シリーズの7‘作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」

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