炎の断捨離52
こんばんわ。
「うっ」(涙)
最近の投稿、仕事帰りの自宅、くつろぎタイムだけにアルコール混じりで猛省。
何か重なるシーンが多発。
てことで先ほど見直しました。
すみません。
※
最上級の宿に泊まった宿泊費。
いや、いくら最上級だとはいえ、その価格に目玉が落ちそうになる。
あくる日、王族の元を訪ねる予定があり、朝早くに宿屋を出ることにした自分達一行は早々に荷物をまとめていたのだけれど、たまたまその支払額を目にしたリンフィーナは絶句した。
通貨の単位が違うから、一瞬自分の計算間違いかと思ったが、そうではない。
「ーー兄様!」
リンフィーナは兄の服の端を引っ張って確認した。
「なんかぼったくられてるみたい」
ギロダイが率いてきた臣下が支払う金額を目の当たりにして、サナレスに耳打ちしたが、サナレスは少し笑って「適正価格だよ」と言った。
「だって兄様、あんな大金ラーディアの高級宿屋で一月以上泊まれるような金額だよ。私達一晩しか泊まってない」
ラーディアの物価は他の一族に比べ、そして人の子の領地に比べてはかなり高い方だった。本の少し前までは一族の外に出たこともなかったリンフィーナは、ラーディア一族の豊かさを知らなかったが、土地によって物の価格や価値が変わることを学んでいた。
「おかしいよ兄様」
サナレスは微笑ましいものを見るような眼差しになって見下ろしてくる。
「いや、これでいいんだよ」
ーーそれって……?
「お前も色々と世界のことが分かってきたんだな。お前の考え通り、キシル大陸は私が知る限りの世界で、最も物価が高い大国だ」
リンフィーナは目を見張った。
「ラーディアより? ううん、ラーディアの十倍も物価が高いなんて……、一体どうして?」
「インフレとかデフレとか、私が教えた内容を覚えてる?」
リンフィーナは困惑する。横文字に弱くて、経済に疎いのは今に始まったことではなく、どうしても自分が置かれている狭い範囲の生活圏にしか興味を持つことはできなかった。
言葉を無くしていると、サナレスは苦笑した。
「簡単に説明するとね、ラーディア一族でのりんご一個の値段は、おそらくキシル大陸では6から7倍ぐらいの金額で取引される」
「人の国でもそんなことあったのは覚えている。貴族の所持品はやたらと高額で取引されてたから……。そんなにこの大陸は差別化されているってこと?」
「いや」
サナレスは肩をすくめて、否定してきた。
「ラーディア一族と人の国で物価が違うように、キシル大陸とラーディア一族も貨幣価値が違う。それって簡単に説明すると、キシル大陸に比べて、ラーディア一族の経済はデフレが始まっているってこと。つまり、物の価値と給与がキシル大陸に比べて低くなってるってことなんだ」
それって住みやすいってことなのかな……?
けれど人の国を旅したリンフィーナは、人の国が貧しかった印象が深く、貨幣価値が下がっている人の民の暮らしがいいものとは思っていなかった。
そしてその中で、ラーディアの貴族であるリンフィーナは、全てのものを安くて貧しいと感じていたのだ。
「それって兄様……、この大陸の民よりラーディア一族が貧しいってこと?」
分からなくて素直に聞いてみると、サナレスは少し眉を上げて、半分正解で半分は不正解だと言った。
「未だ、格差が生まれるほどの交流もない。だから不正解。ーーけれどお前は勘がいい。いずれもっと交流が深まれば、そういう未来はそう遠くない」
キシル大陸とアルス大陸を隔てる海は、塩の流れにより渡るのが困難だと言われていた。だからサナレスは造船技術の開発に力を入れ、ラーディアの製造業の人材育成を計画していた。
「じゃあ交流しない方が、いいってことかな?」
「それじゃ負けっぱなしだな」
「戦争!?」
戦をしていたのかと顔色を変えると、サナレスはおかしそうに腹を抱える。
「違いないな。人の血は流れてはいないが、国と国は常に経済という戦争をしている。国の長はよりその国を豊かにするかという戦をしているようなものだ」
自分には難しくて、頭の中は疑問符だらけだった。けれど人の国で、調味料すら整わない少ない食材の夕食を目の前に出された時、なんだか悲しくなったのを思い出した。
「ラーディア一族は、キシル大陸より劣っている?」
「そうだな。アルス大陸ではラーディアは最高の栄誉を誇ってはいても、こちらに来てみれば未だ発展途上国という扱いになる。キシル大陸から大型の船がアルス大陸に年間何百と渡ってきていても、こちから……、自国の船で渡ることができる民は、ーーおそらく自分達が初めてだ」
衝撃的な内容にリンフィーナは戸惑ってしまう。
「でも……、私達そんなに不自由はしていなかったと思う」
「目に見える部分ではね。でもアルス大陸の人材はキシル大陸の帝国に買われ、それだけではない、開発された技術も買われている。つまり今のところ負けているんだよ、この帝国には」
サナレスが敗北宣言をしたので、リンフィーナは生唾を飲んだ。
それはどれほど、このキシル大陸が優れているのかという圧力からだ。
「お前は覚えているだろう? 私がこの世界の全てを旅してまわりたいと言っていたこと。実は幼少期にキシル大陸の民に出会ったことがきっかけだった。この大陸の民と出会うことで、どれほどラーディア一族という王族でいることが井の中の蛙大海を知らずだったのかと気付かされたんだ」
「……そんなに、すごいの?」
サナレスはうなづいた。
「電気は当たり前にあるな。それに、どれほど離れていても、小さな端末で連絡を取り合える。電話というものらしいが」
サナレスから発せられる言葉の内容は、まるで呪術だ。
自分の想像を遥かに凌駕していことだった。
「それは科学?」
「ああ、正解。この帝国は優秀な科学者が集う国なんだ」
サナレスの高揚感を見るのは珍しいことで、リンフィーナもそれに感化されて鳥肌がたった。
「帝国の王に会うのは午後を予定しているから、午前中はこの街を充分散策できるな」
「うん!」
未知の世界への期待度が高まり、リンフィーナは浮足だった。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
シリーズの7‘作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」




