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炎の断捨離39

少し間が空いてしまいました。

読み返すと、アルコール漬けの小説、「うん、やばい」

この場を借りてお詫びします。


本人的には乗ってる感じで書いて、徐々に直していこうという意気込みはあるのですが、自分で読んでも摩訶不思議ワールドに行ってしまっています。


陳謝!

        米


「冥府を案内しよう。生きた心地はしまい?」

 死んでいるのだから当然だ。

 ヨアズを一瞥したアセスは、ヨアズの館を出て冥府に足を運ぶ。


 どこにいても浮遊感が付き纏った。


 けれど肉体があるように錯覚するのは何故だろう。

 例えるなら、自身の肉体を包む重力が不安定になっているように感じてしまう。


 ーー暗くて、寒い。

 油断していれば瞬時に足元に大きな穴が開いて、吸い込まれそうな恐怖を感じる。


 大理石の荒れ果てた神殿跡地に、時折突風が吹いてヒヤリとした。


「風じゃない、魂だ。あなたも転生の渦に吸い込まれぬように注意されよ」

 アセスが疑問に思うのを横目に、ヨアズは言った。

 そういえば、ヨアズの元を訪ねてくる時に、アセスは一度穴に落ちたように記憶している。その時、別の人生を生きなかったか?


 記憶が朧げだが、よほどコンプレックスがあったのか日系ミャンマー人というレッテルの属性だけは今も口にすることができる。


「転生するとどうなる?」

「だいたいは現時点の記憶を失って、新たな肉体の寿命が尽きるまでは戻っては来られまい。ここには時間の概念がないから、私にとっては瞬く間、お前の姿が消えるぐらいのものだが……。転生する度、転生する魂は何かを失って、何かを得てくる」


 一度落ちたことを口にすると、ヨアズは「何を失って、何を得たのかは、冥府にいてはわからない」と言い、元の肉体に戻れた時に感じるだろうと気になることを伝えてきて目を細めた。


 ぼんやりと青白い炎がいくつも点在し、暗くても僅かに足元を照らす。

「私の庭だ。だが見えているものは全て実在しない世界だから、人によって見える景色も違う。ーー今あなたが見ているのはどんな景色だろうな?」


 言われてみれば、そこは知っている場所のような気がしていた。

 広さなどは、自分の記憶と若干違っているし、実際のそこよりも崩落具合がひどいけれど、星光の神殿のようだ。


「暗い……」

 そう呟いた時、アセスはギョッとして地面を見た。


 一瞬息が止まって、立ち止まってしまった。

 自分の足元から突き出しているのは、白い女体だ。


 見たことがある、美しい人は、腰から下と両手を地面に埋められたまま、不自然な姿勢でこちらを見つめてくる。

 思わず地面に膝をつき、彼女と見つめあった。


 この地面を掘り起こしたくて、硬い地に爪を立てる。


「……マリア」

 女は虚な瞳をしたまま、胸から血を流していた。

 自分が短剣を突き立てたその部分から、生々しく血を流している。


 これは何だ!?

 幻覚か。


 それでも少なからず衝撃を受けた。


「何が見えた?」

 ヨアズが確認してきた。

 アセスは母の顔から目を離すこともできず、自分で自分の左腕を抱いた。

 左腕が徐々に凍えるぐらい、寒い。痛い。


 地を掘ろうとする指には感覚がなく、身体が凍えていきそうな錯覚に囚われる。


 雪?

 アルス大陸では滅多と見られない光景が目の前に広がっていた。

 吹雪が視界の半分を隠そうとする。

 神殿は凍てついて、氷の幕を張っていく。


「ここは地獄、そう面白いものは見えていないだろうな……。それもその者自身にとっての地獄が目に映る。転生せずに滞在すると、その地獄が庭になって、一生そこに囚われる」

 だから見たくない光景なのだろう、とヨアズは言った。


 そうだ。

 目を背けたくて、体の芯が震えて、硬直する身体のまま心ごと震えていた。

 母を殺した時にその血を洗い流すためにたどり着いた古井戸が、目に入った。


 必死で井戸に近づいて、桶を落としては水を汲み上げた。

 その水を全身に浴びせる。


 けれど寒い。

 吹雪いているというのに、自分は体温を奪われることにも構わずに水をかぶり、手を洗う。


 一方のマリアは自分そっくりの容姿をして、なんて綺麗なんだろう。

 こんな美しい人をーー。


 こんな美しい人に産んでもらった自分は、母親であるマリアを殺してしまった。


「ふふっ……ふ」

 確かに、ここは地獄だ。


 紛れもない、自分が見た地獄だった。

 笑いが込み上げてたまらない。


「ここにずっと留められたら、確かに地獄でしょうね。けれど、私には次の訪れる時間があって、ここには留まらない」


 アセスは母の頭に足を乗せる。

 必要とあれば、何度でもマリアを殺そう。


 母である彼女との忌まわしい暮らしを断ち切って、その後に出会った人の顔を忘れることなんてできずにいる。やっと柵という貴族が買い殺していた人形が住まう館から逃げることができた自分は、この地獄から一歩、また一歩踏み出してきたのだ。


「ほう。なかなか豊富な経験値だ」

 ヨアズはどこか楽しんでいるようだった。


「私の景色より、私は貴方が見てきた景色を見たい。そしてソフィアという、貴方が体神にまでして留めておきたかったソフィアのこと、お聞きしましょうか」

 アセスは母の屍を踏みつけ、過去を払って、ヨアズの庭を散歩していた。

 偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

シリーズの7‘作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


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