炎の断捨離36
感想、ブクマお待ちしています。
長編なので気長にお付き合い頂けるとありがたいです。
これ修士論文以上のボリュームですね。
一応、異世界転生ものです。
※
自分は元ボスのヨースケ・ワキのことを信頼していない。
今の自分のボスである、ラーディオヌ一族の総帥であるアセス・アルス・ラーディオヌは絶大な力を持ち、彼の努力は目を見張るものがある。
ーーけれど総帥アセスは、並々ならぬ努力をし、そして高い知能があっても非常に不安定な存在であることは変わりなく、彼の周りには人生の猛者が集まっているようだと、幼い頃からスレている自分は肌で感じ取っていた。
そんな状態で無防備に肉体を飛び出して、どうして冥府へ行くなどという決断をしたのか。ナンスには合点がいかない。
ヨースケ・ワキは総帥アセスの味方であると、どうして断言できるだろう。そして彼が連れてきたリトウ・モリも得体が知れない。見た感じでは頼りなさが全面的に前に出て、親和感のある性格は印象的ではあるが、裏社会のボスーー、ヨースケ・ワキの旧友ということで油断はできない。
ナンスにとってラーディオヌ一族で信頼できるのは総帥アセスだけで、その他自分が頼れるところは不思議なことにラーディア一族の次期総帥であるサナレスと皇女リンフィーナだけだ。
「モリ殿はラーディア一族を生業にするのに、サナレス殿下の許可を取ってこちらにいらしたのですか?」
「それが……、許可は取れていません。サナレス殿下にお伝えしたかったのですが、殿下と妹姫がラーディア一族の地を離れておられ、ーー急ぎの要と聞き及んで馳せ参じた次第です」
結局はラーディオヌ一族の使者として水月の宮に行った自分の勅使だけで、こちらに出向いてきたらしい。
ナンスも焦っていた。総帥アセスの、冥府へ行くという乱心を止められるものなのであれば、リトウ・モリを一刻も早くラーディオヌ一族へ連れて来たかった。
けれどリトウ・モリは今アセスが下した自殺行為という到底信じられないことを、ヨースケ・ワキに言いくるめられて容認してしまい、総帥アセスが戻れるように手配するだけの役割になってしまっている。
一族の未来を考えた時、リトウ・モリが頼りになるかどうか信憑生が薄かった。
ナンスには、どうにも裏社会のボスであるヨースケ・ワキとの因縁も気になるところだ。
「総帥アセスの容態は安定しています。このまま管理すれば期日の三日以上、生命維持することは可能です」
ーーそれでも、一刻も早く目覚めて欲しいと狼狽えている様子に、ナンスは不確かさを感じずにはいられなかった。
「アセス様は、三日といえばそれを違えることはない」
憮然という自分は、いつの間にか絶対的にラーディオヌ一族の総帥アセスの支持者になっていることを気付かされた。
約束を違える時には、おそらく総帥アセスは自害する。
それくらい潔癖なのだと、ーーいや純粋なのだと今の自分はアセスを語ることができる。
冥府に行くという一見馬鹿げた行為にも、アセスには意味があると、それだから盲目的に納得せざるを得なかった。
時に彼は、自らの命の重みを軽んじるから、心配で仕方がないのだけれどーー。
ナンスは土気色になるアセスの側を片時たりとも離れられずにいて、その上でアセスが口にした約束を信じる姿勢を決めていた。
そう。この方は一度口に出したことを違えることを何より嫌うし、ラーディアの皇女リンフィーナとの縁も断ち切れておらず、サナレス殿下に対して拘っている。
だから絶対に、今生に帰ってくる。
ナンスはそう信じて疑わなかった。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
シリーズの7‘作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」




