炎の断捨離15
昼休憩に少し書いてみました。
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少女との出会いからしばらく、貧民街に来たときは彼女の家を訪ねるようになった。
ラーディオヌ邸の書庫から、毎回二、三冊の本を持ち出して少女に与えると、少女は子犬が跳ね回るように喜んだ。
「ねけお兄ちゃんはどうしてこんなに沢山、本を持ってるの? お兄ちゃんの家も本屋なの?」
アセスも少女の横で、小さな書店の中の本を片っぱしから目を通していった。貴族の館に置いている本ではなく、実用書も多く、庶民の暮らしが目に見えてよくわかる。
一番面白かったのは、なかなか取れない匂いを拭う消臭法で、靴の中に銅貨を一枚入れるなど、これぞ生活の知恵というものに感心させられた。
少女が野菜を植え出したきっかけになった本は、およそ科学的ではなく、アセスは土の耕し方を少女に少しづつ教えていった。
このような下層の民でも、知識を身に付けようと賢明になっている姿は微笑ましく思えた。飛躍的に生活を改善するために手を差し伸べるのは簡単だったが、アセスはそうはしなかった。
ただ一人、この少女の生活環境を豊かにしたところで、少女一人の時に、逆に物盗李に押し入られるかもしれない。
アセス自身も薄汚れた格好で、身分を隠して生活した。
決して正体を明かさぬようにして、キド・ラインに入るときは用心深く顔を隠した。
「どうして名前も教えてくれないの?」
少女が聞いても、アセスは名前を取られることを嫌う精霊のように、イラズラにはぐらかした。
アセスは小麦を持って少女の家を訪ねていた。
持ってきた本には小麦から作れる物を書き記した本だ。
少女は粉まみれになって、実験のように様々な食べ物を作り出した。
「次に来るときは砂糖を持ってこよう」
「そんな高価なモノもらえないよ」
首を振って遠慮する少女に、アセスは本屋の本を読ませてもらっている礼だと言った。
偽りの神々シリーズ紹介
「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫
「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
「異世界の秘めごとは日常から始まりました」
シリーズの7‘作目になります。
異世界転生ストーリー
「オタクの青春は異世界転生」1
「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」
 




