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炎の断捨離1

『魔女裁判後の日常』を終え、偽りの神々シリーズ、継続中です。

もう一本『オタク異世界転生』と絡むのですが、こちらも継続中です。


感想、ブクマ、ご指摘などお待ちしています。

この回から、後書きにシリーズの順番を記載します。


毎回一作品で過去作品読まなくてもわかるようにしたいと思っているのですが、ーー興味を持っていただける方は後書きの順番通りお進みください。



 悲しいかな、理由あって二重人格を患ってしまった。

 意識が遠退いたと思った直後、自分は太古に生きていた魔女に入れ替わってしまう。

 そして怖いことにその魔女は、自分の兄と密会している。


 今まで何度か怪しいなと思っていたけれど、疑いが確信に変わったのは昨夜の出来事だ。


「ああああぁぁ!!」

 考えただけで、感情が爆発してしまって、リンフィーナは這いつくばって床を叩いた。

 リンフィーナ・アルス・ラーディア17歳。年頃になった彼女の目下の悩みは、別人格の魔女が兄と出来ているかも知れないということだ。


 昨夜目を覚ますと、兄と一緒に眠っていた。

 育ての親である兄サナレスは、赤子である自分をこの歳まで大きくしたのだから、一緒に寝るという行為自体、兄妹の歴史から見れば驚くようなことではなかった。


 けれど慌てふためいているのには別の理由がある。

 その夜不意に目覚めた時、なぜか兄は全裸だった。そして自分もーー。


「なんで!?」

 這いつくばったままの姿勢のまま、拳で床を叩いている自分は、ぜぇぜえと肩で息をする。

 記憶がない自分は、全裸のサナレスと一緒に目を覚まし、どこに目をやっていいものかと動揺を隠せないまま絶句し、咄嗟に被っていた布団全てを全て兄に多い被したぐらいだ。

挿絵(By みてみん)

『おまえさ……、普通自分の裸体を隠すだろ……」

 そう言われても、自分の貧相な裸体など兄に見せることに慣れていて、兄の立派な彫刻のような裸体が目の前にあることの方が恥ずかしかった。

 サナレスが傍に置いた上着を羽織りながら、自分を布団にくるめてくれたけれど、急に兄を異性として意識して、心臓が跳ねて、暴走して、うるさいったら。


 自分とサナレスは血のつながらない兄妹で、最近真実を知ったばかりの自分は、この時初めて兄を異性として認識した。


 子供の頃は、口を開けば『お嫁さんになる』を連呼して、兄に近づく異性を射殺すような視線で睨んでいたが、ーーそんな幼い感情が今では懐かしい。


 やばい。

 兄じゃない。

 家族じゃない。

 異性、ーーつまり、男なんだ。


 昨夜本当に初めて、「生物」ーーつまり兄に付いていて自分には付いていないモノを見て意識したのだ。


 それなのにどうして、そこに至るまでの経緯について、自分の記憶は欠如しているのか!?

 それが問題だった。


 時折別人格に乗っ取られている認識はあり、リンフィーナは憮然として、仏頂面になる。

 どうせずっと憧れてきた兄とそういう色気のある関係になるのであれば、そこに至った甘いシチュエーションくらいは知っておきたかったというのに。


 それなのに兄を口説き落としたのはソフィアという魔女で、自分ではなく、いきなり現実だけが自分の目の前に落ちてくる。


 驚きすぎて、水月の宮の自室で一人になるまで呆然としてしまい、サナレスにはいっさい何も聞くことができなかった。

『行ってらっしゃい』

 朝食を食べ、出掛ける兄を無表情で見送って数刻後のことだ。感情が噴出してきたのは。


 なんで!?

 どういうこと!?

 兄と魔女ソフィアはどういう関係なのだろう?

 記憶が正しければ、サナレスは自分を正妃にしていいと言っていたけれど、兄妹であった頃、サナレスには他に忘れられない女性がいて、自分など鼻も引っ掛けられない存在、ーーいや単なる身内で妹だったのだ。


 正妃にしてもいいと言うのは、まさかの魔女ソフィアの存在なのだろうか!?

 考えれば考えるほど、思考は暗い方に落ちていって、どん底で逡巡するばかりだ。


 手に入れたかった兄を手に入れた。

 いや、でもそれは自分という人格ではないから。

 ……嫌だ、ーーそれはやっぱり嫌だ……。


 一日中住み慣れた水月の館の床を叩いて、叩いて、叩き割ってもすまないくらい、釈然とせず、リンフィーナは荒れ狂う。

「もう姫様……、いつも思うのですけれど、少しは嗜みを持ってくださいな」

 養育係の一人である双見のタキが、呆れたように見下してきた。

 彼女は今結婚し、お腹の中には夫となる人との子供がいる。少しふっくらとしたタキは幸せそうで、彼女が自分に以前の暮らしの懐かしさを与えてくれる。


「サナレス殿下とならいいじゃないですか? 元々お好きなわけですし、願ったり叶ったりでしょう?」

 自分が荒れ狂う様子をバカっぽいと非難してくるタキに事情をわかってもらおうと全て話したというのに、彼女は胸の前で手を打って、「おめでとうございます」と祝いの言葉を口にして目を輝かすだけだ。


「姫様は一時熱に浮かされたようにラーディオヌ一族総帥、アセス殿を慕っていらっしゃいましたけど、姫様のお相手がサナレス殿下でようございました」

 本当に兄妹ではないと知らされた時は驚きましたけれど、とタキは言った。

「サナレス殿下のお相手が姫様ならば、ラディも文句は言えないはずですよ」

 そう言って、亡くなった双見の片割れを思い、タキは目を細める。


「とにかく嬉しく思います」

 ちゃんと二重人格を説明したくても、喜び勇む彼女には聞き入れてもらえそうになかった、

 偽りの神々シリーズ

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常からはじまりました。」

シリーズの7作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」

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