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5話 久しぶりの外!

 そして次の日。まずは庭を散歩することになった。さすがに久しぶりの外出がいきなり外では、体への負担が大きいだろうとのこと。どのみちすぐには町には行けないだろうから、少しでも外に出れるなら嬉しい。


 でも、それもじゃあ行こうか、とはいかなくて。


「イベフィラ・トークラナと申します」


 ぺこ、と軽く頭を下げるのは、近衛兵であることを示す黒のかっこいい騎士服を着こんだ不愛想な男性。ただの散歩に近衛兵? と思わなくもないけれど、聞けばこの方、もう一人と交代でずっと部屋の前で警備をしてくれていたらしい。


 やっぱりお礼を言った方がいいのかな。でも、仕事だからと気分を悪くしちゃうかもだから言わない方がいい?


 いや、やっぱり。


「いつも守っていただき、ありがとうございます」


「……いえ」


 あれ、顔を背けちゃった。でもお礼を言えたから満足。早速カナリアに庭を案内してもらうことに。


「こちらの方ではきれいに花が咲いておりますよ」


「こちらの方?」


「ええ。

 どの季節でも花を楽しめるように、それぞれの季節の花でまとめた庭が数か所あるのです」

 

 お茶会なども行われますから、というカナリアの説明に納得。私はまだそういう交流、はやっていないから全然知らなかった。いや、知りたくもないけれど。


「……あ、こんなとこでなにやってんの?」


 げ、第二王子。なんでこんなところで会うかな……。久しぶりの外にワクワクしていたのに、一気に気持ちがしぼんでいく。もう、何でここにいるかな。王子なんだから忙しくしていてよ。


って、返事しないとまずい感じ? でもしたくない……。


「ごきげんよう、イーサンテリア殿下。

 こちらには散歩で参ったのです」


「散歩か。

 この僕が、案内してやろうか?」


「カナリアがしてくださるので大丈夫です。

 お気遣いありがとうございます」


 二コリ、と自分なりの最上の笑顔で殿下をあしらう。だが、と言いつのろうとした時、また新たな人がこちらへと近づいてきた。少し歩いただけなのに、今日はなんだかたくさんの人に会うな。


「また人に迷惑をかけているのか?

 ……あれ、あなたは」


 誰、だろう。すらりと伸びた体は細身なのに、弱弱しい感じは一切しない。それどころか、堂々としたたたずまいには王者のような風格すらあって。それがその方の美貌には良く似合っていた。


「もしかして、聖女様……?」


 また、聖女様。そう思いながらも、私は自然にうなずいていた。


「ああ、ご挨拶が遅れて申し訳ない。

 私はグルフレティア王国、第一王子であるアルクレッドと申します」


「アルク、レッド殿下……」


「あ、兄上……。

 っち、いくぞ」


 ついてきた取り巻きを引き連れて、殿下が去っていく。おお、すごい! 一瞬でこの場を収めてくれた。助かった、あの人と散歩とか心が休まるわけがないもの。


「愚弟が迷惑をかけて申し訳ない。

 散歩をしていたのでしょう?」


「い、いえ。

 ありがとうございます」


「いいえ、お礼を言われることは何も」


 そう言いながら、ふっと笑みをこぼすアルクレッド殿下。う、何それかっこよすぎる……。それでは、と去っていく後姿すらかっこいいとか。


そのあと散歩は再開したものの、あの人のことが頭から離れない。うう、また会えるかな……?



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