第3話 復讐の黒百合
この男、鋼の猛獣。ロディ・ハイドランクと呼ばれた男に連れられて
小さな家に連れてこられたアカネ姉さんと俺とファントムさんの三人は
薄汚れた家の奥へ案内され、ロディは本棚の本を一冊取り出し、その奥にあるスイッチを
押した。
すると、本棚と本棚の間が横に自動で開き始め
鉄でできた扉が現れた。
その扉をロディはスイッチを押して開き、俺たちを中へと案内する。
全員が中に入ったことを確認したロディは、鉄の扉の横のスイッチを押すと
本棚が閉じ始め、鉄の扉も左右から閉まった。
その先には螺旋階段があり、その階段を下りていく。
ファントムさんは荷物を背中に担いでいる。
アカネ
「ファントムさん、持ちましょうか?」
ファントム
「いいえ、大丈夫ですよアカネ君。
優しいんですね」
顔を少し赤らめているアカネ姉さん、やはり可愛い。
赤いポニーテールがゆらゆらと揺れている。
そうこうして階段を下りているうちに
ホワイトガーディアンズの地下施設に到着した。
通り過ぎる途中、団員と思われる人物に何度か出会ったが
とても気さくにロディに話しかけていた。
団員A
「お、団長。出かけてたんですかい?」
ロディ
「ま、そんなとこだ。
それより例のアレ、今度見せてくれよな!」
団員A
「ええ、わかってますよ ウシシ!
おや、お連れさんですか?」
ヒロト
「……」
ロディ
「あぁ、客人だ。
食堂に案内するところだ」
団員A
「わかりました。
御客人、ゆっくりしていってくださいね」
ファントム
「えぇ、ありがとうございます」
団員はそのまま立ち去って行った。
長い金属でできた廊下を歩いていく……。
その先に食堂と大きく書かれた扉があった。
その扉もまた、ロディが近づくと自動で開いた。
俺は上を見る。
何やら小型の四角い箱のようなものに目が付いていて赤い点が緑色に変わっている。
俺たちが通り抜けると、再び赤い色にその色を変えた。
奥の椅子に案内されるアカネ姉さんと俺とファントムさん。
ロディ
「事情を聞きたい、話してくれるか?」
ファントム
「ええ、実は……」
@@@
これまでの出来事を説明したファントムは
ロディの反応を待った。
彼は腕を組んでじっと天井を見ていた。
俺やアカネ姉さんはコーヒーを出してもらって
アカネ姉さんは緊張した顔をして飲んでいた。
ロディ
「そうか、連中の手があんな辺境の村まで……」
ファントム
「はい、しかも直接 ミスターKが出てきました」
ロディ
「そうか……」
コーヒーのカップを手に、ファントムが少し飲むと次の言葉を発した。
ファントム
「どうやら、どこも安全な場所はなくなりつつあるようですね」
音を立てずにコーヒーを飲むファントム。
ロディ
「しかし、そっちのお嬢さんがユグドラシルの巫女だなんてな
驚いたぜ」
アカネ
「あ、アカネです」
ロディ
「おっと、お嬢さん呼ばわりは失礼だったかな
ごめんなアカネさん」
アカネ
「い、いえ。大丈夫です」
軽く頭を下げて謝罪したロディは、アカネに少し顔を近づけて
ロディ
「どうだい? この後、二人でお茶でも」
アカネ
「え、あ、その……」
何故だろう、少しイラッとした俺は気が付いたらロディをにらんでいた。
それに気づいていたのか、ロディの目だけがこちらをギロリと向くと
俺と目が合い、にらみ合いになったが。
ロディ
「ふっ……わかった」
なにがわかったんだ? と疑問を浮かべる俺だったが
ロディが離れると、アカネ姉さんはホッとした様子で自分の胸に手を置いた。
ファントム
「しばらくの間、私たちをかくまっていただけませんか?」
ロディ
「おいおい、水臭いなぁ! 断るわけねーだろ!
それに相手が共和国ならなおさらだ」
ん? 意外といいやつなのか?
ファントムさんはニコニコと笑っていて、アカネ姉さんはこちらを見て
目が合ったのを確認すると微笑みかけてきている。
その一方で、ロディから感じる闘気は消えない。
ロディ
「部屋も用意するからゆっくりしていけよ。
それから、ヒロトって言ったか?」
ヒロト
「なんだ?」
ロディ
「この後、少し時間をもらいたいんだが
いいか?」
ヒロト
「ああ、かまわない」
そのあと、団員から部屋の鍵をもらって
宿舎を案内してもらった。
505号室がアカネ姉さんの部屋、506号室が俺の部屋だ。
ファントムさんの部屋は703号室に決まった。
そのあと、俺はロディに案内されてさらに地下への階段を下りて行った。
@@@
到着した場所は殺風景な場所だった。
広い部屋に白い壁、白い地面。
壁には傷がいくつかあり、鏡もある。
地面も傷だらけで、何かが戦った後としか思えない。
その広く、白い部屋に案内したロディは足を止める。
それと同時に俺も足を止めた。
ロディ
「一対一で、勝負しねぇか?」
ヒロト
「俺と勝負……?」
ロディ
「あぁ、お前を見たとき思ったのさ。
こいつ、強くなれる素質があるってな」
ヒロト
「……」
俺は一度、あのミスターKに一撃で負けている。
あの蹴りはかなり早かった、酒場の前で共和国兵士に蹴りをくらわせた
この男の蹴りの何倍もの威力とスピードだった。
……このままでは俺はあのミスターKに再び会った時、絶対に勝てないだろう。
それなら、このロディ・ハイドランクという男と戦っておくのも悪くない。
むしろ得をするだろう。
ヒロト
「ああ、その勝負。受けて立つ!」
ロディ
「そうくると思ったよ……いくぜ?」
お互いに構えをとり、にらみ合う……。
ロディはブーツからガチャリとナイフを出した、本気のようだ。
俺も背中に背負っている剣を構える。
来るッ!
先手を取ったのはロディ。
前蹴りが飛んでくるが、その一撃を剣で受け止める。
ロディの蹴りの攻撃はブーツのかかとにナイフがついている
素手で受け流したり、足で止めるのは非常に危険だ。
そのままスパッとナイフで引き裂かれかねない。
ヒロト
「せやぁっ!」
蹴りをはじいた俺は剣でロディの首元を狙った
しかし、読めていたかのように背中をのけぞらせて回避する。
それだけじゃない、バク転して俺の下からロディの足蹴りが上へとのぼってくる。
このままでは俺の顔はロディのブーツのかかとのナイフで真っ二つにされる。
仕方なく後方へ引き下がる俺。
ヒロト
「チッ!」
ロディ
「いいね、良い動きだヒロトォ!!」
威勢よくロディが叫ぶと、そのブーツから丸いローラーが出て、
勢いよく炎をあげると、ロディはすさまじい勢いでスライディングしてきた。
驚いた俺はそのスライディングを2mほど飛んで避けた。
今、俺は滞空している。そして相手のロディはスライディングし終わった地点から
飛び上がってきた。
ロディ
「甘ぇよ!」
滞空している俺の真横まで飛んできたロディが右肩あたりまで片足を上げ
かかと落としを俺に決めた。俺は距離が近すぎて剣で防御するしかなかった。
ヒロト
「ぐっ!」
地面に叩き落された俺は、なんとか体勢を崩さず両足で地面に着地する。
しかし、そこへロディの追撃が飛んでくる。
上空から一気に急降下しての膝蹴りだ。
危険を感じた俺はその場から素早く飛びのくと、その場所は大きなへこみができていた。
剣をロディに向け、構える。
へこんだ床の欠片や粉が舞う。その煙の中からロディがこちらを見ている。
ロディ
「俺が、何で鋼の猛獣って呼ばれてるか知ってるか?
この体全体が鋼のように硬くて、全身が凶器みたいになってるからさ」
強い……。確かに強い、だがあの時のミスターKと呼ばれた男よりも
このロディはおそらく弱い……なら、ここで負けていては
アカネ姉さんどころか俺は自分の身も守れないだろう。
負けられない、負けるわけにはいかない。
ヒロト
「そうか、なら壊しがいがあるな!」
ロディ
「ビビらずにそう返してきたのは、お前が初めてだぜヒロト!」
再び、白い煙に包まれたロディのブーツが炎をあげる。
またスライディングがくる。
同じ手に何度もやられるわけにはいかない。
ヒロト
「あぁ、そうかよ!」
白い煙の中からロディのシルエットが煙を引き裂いて
スライディングしてきたとき、俺は地面に剣を突き刺して
スライディングを妨害した。
ロディ
「なに!?」
スライディングを地面に突き刺した剣で受け止めて、その剣の柄を
握りしめながら、ロディの顔面に蹴りを入れる。
避けようとしたみたいだが、もう遅い。
ロディの頬に俺の左足の裏が直撃する。
しかし、にぶい感触。この男、ダメージをあまり受けていない!
後方へと軽くよろけた程度で、ロディは後ろに後ずさった。
俺は少し距離をとり、様子を見る。
ロディ
「へ、へへ……いい蹴りだな。一撃もらったのは久しぶりだぜ!」
全身凶器……どうやら耐久力も普通じゃないみたいだ。
ヒロト
「これでおあいこだな!」
ロディ
「気に入ったぜ、ヒロト! うちに入らないか?」
ヒロト
「ホワイトガーディアンズだったか?
俺は別に共和国に文句があるわけじゃない」
そう返すと、ロディが構えたまま疑問を感じた表情になる。
ロディ
「……なら、なんで戦う?」
ヒロト
「すべては、アカネ姉さんのためだ!」
ロディ
「女のために全てをかける、か……ますます気に入ったぜ!」
それから、どれぐらいの時間戦っただろうか?
数秒が数時間にも感じられる空気の中で、俺たち二人は戦い続けた。
しかし、勝負を終わらせたのはロディだった。
ロディ
「気が変わったらいつでも声をかけてくれ、
うちにはお前みたいなのが必要だ」
ヒロト
「考えておこう」
ロディがブーツからナイフをしまい、構えをといた
不意打ちが来ないように少し様子を見てから俺も剣を背中に背負った。
ロディが俺の手を取って握手する。
ロディ
「いいファイトだったぜ、ヒロト!」
ヒロト
「あ、あぁ……」
いい……ファイト?
殺し合いの間違いじゃないのか?
そんな疑問が俺の頭の中をうろうろしていたが、
疲れ切った俺は、その後、宿舎に戻ることにした。
@@@
さすがに戦いの後、すぐに食事する気になれない
それにもう夜も遅かった。
時計を見ると深夜2時を回っている。
疲れた……。
宿舎に戻った俺は、506号室の部屋の扉のカギを開ける。
このカギは、なんでもかざすだけでいいとのことだ。
ヒロト
「……」
カギの形は四角い長方形、とても小さい。
縦長に9cmの紙切れだ。
どうやらこれも魔石が元で出来ているらしい。
扉の前でそれをかざすと、自動で鉄の扉は開いた。
入ってすぐ左に洗面所、右に木製の扉がある。
どうやらトイレと風呂場のようだ。
奥に進むと、椅子が二つとテーブル。
そして一人用のベッドがあった。
壁には_ようこそ、ホワイトガーディアンズへ_
と書かれている。
なにがようこそだ……と、俺は目を細めて思った。
それより、疲れた……。
剣を壁に立てかけて
ベッドにコートを着たまま飛び込む。
そしてゴロリと転がって、天井を見上げる。
ロディ・ハイドランク……鋼の猛獣。
強かった……。
とてもじゃないが常人が生身で勝てる相手ではないだろう。
もしかしたら、ロディならアーマーギアも生身で倒せるかもしれない。
そう思わせるぐらいの戦闘力だった。
だが、俺はロディと引き分けた。
俺はある程度強いのかもしれない……。
うぬぼれにも感じるが、そう思った。
目を閉じようとしたその時だった。
ふと、あの時のミスターKとアカネ姉さんを思い出した。
たしかに、あの時アカネ姉さんは黒い霧に包まれて
その黒い霧を飛ばしたら、アーマーギアの残骸が消し飛んでいた。
あの力は一体なんだったんだ?
天井を見つめていた俺は、隣の部屋から物音が聞こえるのに気づいた。
扉の開く音、そして閉まる音。
誰か出て行ったようだ、といっても隣の部屋はアカネ姉さんの部屋だ。
考えるまでもない。
アカネ姉さんが出て行ったのだ。
_こんな夜遅くに?_
心配になった俺は、出て行ったアカネ姉さんを追うために部屋から出て、
そのあとを追った。
螺旋階段を上り、開けっ放しになった隠れ家の入り口を抜けて外に出る。
ヒロト
「アカネ姉さん?」
一瞬、暗い影が見えたような気がしたが、その影は何の反応もなく消えて行った
さらに追いかける、なぜだろうか、胸騒ぎがして背筋が凍るように寒くなる感じがする。
@@@
人通りのない街、時刻は深夜の3時ごろだろう。
静寂を破り、悲鳴と叫び声が聞こえてくる。
共和国兵士
「う、うわぁ!! た、助けてくれぇ!」
俺は急いでその声のする方角へ向かった。
???
「……」
声のする現場についた俺は驚愕した、
そこらじゅうに散乱するバラバラにされた死体の山、地面に落ちた抜かれてない剣。
そして黒い和服に身を包み、黒いポニーテールに黒いリボンをまとわせている
20代前後の女性が、血まみれの日本刀を握りしめて共和国の兵士を追い詰めていた。
その女性の周りには黒い霧が漂っている。
俺にはその女性がどうみても……アカネ姉さんにしか見えなかった。
アカネ?
「あの男の臭いがする……」
共和国兵士
「ひいっ!」
アカネ?
「あの男の臭いがするやつは、するやつは……殺すッ!」
血まみれの日本刀は、黒い霧に姿を変え、共和国兵士の首にまとわりついて
ワイヤーのように、ピン! と兵士の首を飛ばした。
共和国兵士
「……あ、が……」
首だけになった共和国兵士の顔が恐ろしいものを見た表情をしたまま
口から血を流し絶命した。
黒い霧はそのまま黒い髪のアカネ姉さんのところへスーッと戻り、漂っていた。
ヒロト
「あ、アカネ……姉さん!?」
アカネ?
「……」
ヒロト
「アカネ姉さん、何を……してるんだよ!」
アカネ?
「クロユリ」
振り向いた黒髪のアカネ姉さんの姿をした人物は
真っ赤に染まった瞳でこちらを見てつぶやいた。
目が合った瞬間、俺は恐怖に背筋が凍り付いてまるで金縛りのような状態になってしまった。
ヒロト
「あ、アカネ……姉さん……」
冷や汗が止まらない、この感覚はいったいなんだ?
動け、ない……。
クロユリ
「私はアカネなんて弱いやつの名前じゃない。
覚えておけ小僧、私はクロユリ」
クロユリを名乗る人物が俺の隣を通り過ぎると、俺の隣に置いてあった郵便受けが
何十にも分割され、バラバラになった。
_あれが、貴方にすべてを託す理由です_
そう、聞き覚えのある声が聞こえた瞬間
俺は……意識を失った。
@@@
ヒロト
「うわああああああ!!」
息が荒い、俺は状況が呑み込めずにいた
周りを見渡してみる、兵士の死体はない。
路上でもない。
ここは、俺の部屋……。
いや、正確には俺にロディが貸し出した部屋だ。
時刻を見る、朝……8時ごろだ。
あの闘いの後、そのまま眠ってしまったのか?
だったら、さっきのは 夢?
そう考えていると、ドンドンと扉をたたく音が聞こえる
アカネ
「ヒロ君!? どうしたの、大丈夫!?」
_覚えておけ小僧、私はクロユリ_
同じ声だ……。
そう考えたが、頭の中をよぎる悪夢を振り払い、
扉を開けたら、赤髪のポニーテールの20代前後の女性が
心配そうにこちらを見ていた。
アカネ
「叫び声がしたから何かと思って……大丈夫!?」
何も言わず、俺は目の前のアカネ姉さんを抱きしめていた。
怖かったからだ、もし扉を開けたらあの黒髪で紅い目をしたアカネ姉さんがいたら
どうしようかと思った。
アカネ
「え、あ、え? どどどどどうしたの!? ヒロ君?」
ヒロト
「よかった、アカネ姉さん」
アカネ
「え……えぇ? あ、わかった寂しかったんでしょ?」
再びアカネ姉さんの顔を見る、ニコニコと笑っていた。
よかった、やっぱり夢だったんだな。
そう確信した。
アカネ
「もー、しょうがないなぁヒロ君は。
さぁ、朝ごはん食べに食堂にいこ?」
ヒロト
「あぁ、ありがとう アカネ姉さん」
そしてアカネ姉さんに連れられて、アカネ姉さんの手を握る。
……? なぜか、アカネ姉さんの手は少し震えていた。
それから俺とアカネ姉さんはホワイトガーディアンズの食堂へ行った。
扉が自動で開き、団員と思われる人々であふれかえっている。
厨房からは焼きたてのパンの匂いやシチューの匂いがただよってくる。
食堂の奥で手を振る人物が二人、ファントムさんとロディの二人だ。
ファントム
「あぁ、おはようございますヒロト君、アカネ君」
ロディ
「よう!」
アカネ
「おはようございます、お二人とも!」
ヒロト
「あ、あぁ……おはよう」
ロディ
「どうしたぁ? 元気ねーじゃねぇか」
ひじでロディが俺をつんつんとつつく。
だが、上手く受け答えできない。
さすがに怖い夢を見た、なんて言えるはずもない。
昨日の闘いから比べると格好悪すぎるだろう。
席に着くアカネ姉さんと俺、四人でテーブルを囲って座っている。
テーブルの上には四人分のパンとハムとシチューがあった。
ファントムがアカネ姉さんにテーブルに置いてあるパンを勧めると
喜んでアカネ姉さんが自分の分として用意されていたそれを食べていた。
ロディ
「そういえば、昨日のアレはさすがにまずいな……」
ファントム
「ええ、たしかに……」
昨日のアレ?
なんの話だろうか。
ヒロト
「どうかしたんですか?」
ロディ
「……それがだな……」
アカネ
「……?」
ファントム
「通り魔らしいです。
共和国兵士が7人ほど殺されたそうで……」
通り魔……?
ロディ
「なんでも死体はバラバラに切り刻まれて見る影もなかったらしい」
アカネが食べていたパンを無言で落とした、そのまま固まる。
_覚えておけ小僧_
通り魔……。
ロディ
「今回の件を理由に、共和国がガサ入れしにくる可能性が高い。
俺たちは移動したほうがよさそうだ」
ファントム
「えぇ」
ヒロト
「え? ホワイトガーディアンズは共和国と戦ってるんだろ?
なんで逃げるんだ?」
ロディ
「何か勘違いしてないか? ここ、本部じゃないんだぜ?
それに俺たちは対立はしてるが全面戦争は避けてるんだ。
関係ない市民に被害が出るし、大義名分をたてられて
市民が共和国の味方をしたら不利だからな」
アカネ
「……」
本部じゃなかったのか、と思って考え込もうとしたとき、アカネを見ると
黙って震えていた。
ヒロト
「アカネ姉さん?」
アカネ
「え、あ、うん……あ! ご、ごめんね行儀悪かったよね!」
あきらかに動揺している、といっても、俺も同じだが。
ロディ
「俺はお前らを預かる約束をしたからな、
俺には責任がある。本部に移動するぞ」
ファントム
「どうやってあそこまで移動するんですか?
かなり遠いはずですが」
ロディ
「へへっ、建造中だった飛空艇があるんだよ」
ヒロト
「飛空艇?」
第3話 復讐の黒百合 終