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ユグドラシルストーリー  作者: 森のうさぎ
18/19

第18話 緊急事態


ハイランディアの里で

カンカンと鐘の音が鳴り響く、

俺は屋敷の窓から顔を出した、

遠くの森の奥から姿を現したのは

8mほどの頭が三つある巨大な狼の魔物、

それに続いて小型の黒い波動に身を包んだ狼も数十体いる。


ヒロト

「何の音だ?」


屋敷から緑のロングコートを着て外に出る俺は

目の前を通り過ぎようとしたノウラに声をかける。


ノウラ

「魔物の襲撃だよ!」


ハイランディアの里を取り囲むさくの周りには

各地に魔石が置いてあり、それが結界の役割を果たしているようだ。

小型の魔物は入ってこれない。


しかし、8mの狼の魔物はそれを喰い破った。

小型の狼の魔物が波のようになだれ込んでくる。


エルフの弓兵たちが応戦するが、相手の数が多い

既に何人かのエルフの兵士が狼に喉をかみちぎられて死んでいる。


エルフの兵士を殺した黒い狼が、数体ノウラにとびかかる。

だが、ノウラが槍を地面に突き刺すと衝撃波が発生し

黒い狼の群れは吹き飛ばされる。


ノウラ

「邪魔っ!」


再びとびかかろうとしている黒い狼を、俺は剣で二匹同時に薙ぎ払う。

二匹の黒い狼がバラバラになって吹き飛んだ。


ノウラ

「ヒロト!」


ヒロト

「ザコの相手をしてる暇はないだろ?

 見ろ……」


8mの巨大な黒い狼がハイランディアの里を食い荒らしている。

それを止めようと、ハイランディアの魔法部隊が魔石を使って

氷の槍を飛ばす魔法や風のかまいたちを飛ばす魔法で攻撃しているが

いっこうに歯が立たない。


アカネ

「魔物の群れ……!」


ヒロト

「ノウラ、一晩の宿と茶の代金だ。手を貸す」


ノウラ

「あ、あんた……ふっ、ありがとさん!」


そして三人で各々のアーマーギアを召喚して、周囲の黒い狼を蹴散らす。


エメラルダス

「雷撃っ!」


周辺の黒い狼に雷を落として感電死させるノウラのエメラルダス。


ヴァイスフローラ

「アイス・スライサー!」


魔法。ヴァイスフローラが左腕を掲げ、振り下ろすと

コマのように回転する刃が数個、魔物たちを切り裂く。

そしてその一撃は、8mの巨大な黒い狼にも当たった。


ヴィントカイザー

「始末する!」


俺は足元をうろうろしている黒い狼を数体踏みつぶした後

その視線を8mの黒い狼に狙いをしぼり、剣で斬りかかった。

しかし、その硬い体によって剣ははじかれてしまう。

体当たりで反撃してきたが、左腕の盾に風の魔法を付与させて

受け流す。


チッ、素早い上に硬い。

面倒な相手だ。

外は暗く、視界も悪い。

時間的には朝方だ、この眠いタイミングを狙ってきたのは偶然か?

もし意図的だとしたら、かなり狡猾な相手だ。


8mの黒い狼は、現状を察したようにその場から離れて

他の黒い狼を連れてその場から撤退していった。


エメラルダス

「逃がすかっ!」


ヴィントカイザー

「ノウラ、これはワナだ」


ヴァイスフローラ

「えっ?」


ヴィントカイザー

「森の奥へ俺たちを誘い出して、その隙に里をつぶす魂胆だろう」


エメラルダス

「じゃあ見逃すの!?」


ヴィントカイザー

「いや、ノウラはここに残って迎撃しろ

 俺とアカネ姉さんが後を追う!」


エメラルダス

「で、でもさ……」


ヴィントカイザー

「この里を守りたくて、アーマーギアを用意してもらったんじゃないのか?」


黙り込むノウラ。

俺とアカネ姉さんは追撃、ノウラは里に残って防衛。

もし全員が外に出たら、里はもぬけの殻になってしまう。


エメラルダス

「……わかったよ」


破られた柵の方へ走っていくエメラルダス。

さて、俺とアカネ姉さんもさっきの魔物を討伐しに行かないとな。


ヴァイスフローラ

「ヒロト……」


ヴィントカイザー

「行こう、アカネ姉さん!」


ヴァイスフローラ

「うん!」


ハイランディアの里の柵を飛び越える二体のアーマーギア。

黒い魔物の後を追う。



 @@@



それと同時に、魔物の群れがハイランディアに押し寄せたようだが

エメラルダスの雷撃でほとんどが黒焦げに焼かれていく。

やっぱりな……。


森の奥の足跡を追って、黒い魔物を追いかける。

足には風の魔法を付与して、スピードを上げる。


アカネ姉さんのヴァイスフローラは魔法でニードル・バリアと叫ぶと

俺のヴィントカイザーに見えない光が発生する。


そのまま奥に進むと、もう日の出だ。

黒い魔物を追い詰めた先にあったのは、紫色の岩でできた遺跡だった。


遺跡の壁まで追い詰められた黒い魔物はこちらを見て敵意をむき出しにしている。

窮鼠猫きゅうそねこを噛む、といったところだろうか。

だが、ネズミに風の帝王は倒せない。


8mの黒い魔物の巣で、戦うことになる。

口を大きく開けてとびかかってくる8mの黒い狼だったが

左腕の盾で顔面に体当たりをかけ、よろけさせる。


お互いに距離をとった、こいつは打撃をほとんど受けない。

外部からの攻撃を受け付けないなら、倒す方法はただ一つ。


ヴィントカイザー

「アカネ姉さん、俺の剣に爆発する魔法を付与できるか?」


ヴァイスフローラ

「………」


ヴィントカイザー

「アカネ姉さん?」


ヴァイスフローラ

「世界樹ユグドラシルよ、弱き我に今だけその力を貸し与えたまえ……」


人の話を聞いている感じではない、まるで操られているように

呪文を詠唱しはじめる。


よそ見をしていた俺は、黒い魔物の一撃に気付かなかった。

だが、先ほどアカネ姉さんが付与してくれたバリアが

その一撃を妨害し、黒い魔物の体に傷がつく。


その傷を狙って、アカネ姉さんのヴァイスフローラは

魔物の傷に腕を突き刺して叫ぶ。


ヴァイスフローラ

「エクスプロージョン!」


その瞬間、黒い魔物の傷口に腕を突き刺して魔法を唱え終わったら

黒い魔物は小規模の爆発により、バラバラになって破裂する。


一撃……ヴィントカイザーの刃を通さなかった硬い体が

ヴァイスフローラの一撃で吹き飛んだ。


最強のアーマーギアというのは伊達じゃないらしい。


紫色の壁の洞窟の前で、ヴァイスフローラはゆっくりと

その穴の中へ入っていく。


ヴィントカイザー

「アカネ姉さん!? どこへ行くんだ?」


ヴァイスフローラ

「……会いたいって聞こえてくる」


夢遊病者のように、ゆっくりと歩みを進めるヴァイスフローラ

その遺跡の先には巨大な鎖をしてある壁がある。

人工的に作られた物で間違いなさそうだ。


後ろから警戒しながらゆっくりついていく俺は

巨大な壁の前で止まっているヴァイスフローラを見る。


ヴァイスフローラ

「この先に、兄さんがいる……って」


ヴィントカイザー

「……」


ヴァイスフローラの兄、おそらくジークフリートのことだろう。

おそらく今、アカネ姉さんを突き動かしているのは本人の意思ではなく

ヴァイスフローラの心だろう。


ヴァイスフローラ

「……え、私なにしてたの?」


ヴィントカイザー

「アカネ姉さん、ここにはもう用事はない。

 戻ろう?」


ヴァイスフローラ

「う、うん」


魔物の巣である洞窟周辺を焼き払ったヴァイスフローラと俺は

その場から立ち去り、来た道を戻っていた。

途中、足元をすり抜ける黒い獣が何体かいたが、

逃がす訳がない。


俺は風の剣を召喚すると、逃げられないように

その剣を黒い小さな獣に当てて、串刺しにしていく。


そうして、森を抜けた俺たちは

ハイランディアの里まで戻った。


戻ってきたときに魔物の巣をつぶしてきたことを伝えると

ハイランディアの里の住民たちは歓声を上げた。


変身を解いたころには、朝日が昇り始めていた。



 @@@


その朝方、長老の屋敷の居間で座りながら話をはじめる。


長老

「そうか、お前さん達が魔物の巣を……」


ノウラ

「今まで、魔物の巣までいって帰ってきた人はいなかったんだ。

 二人のおかげで助かったよ……その、ありがと」


ヒロト

「俺は特に何もしてないさ。

 活躍したのはアカネ姉さんだ」


アカネ

「いいえ、私は何も……」


長老

「ヴァイスフローラを使いこなす者、アカネさん。

 あなた、巫女だろう?」


アカネ

「わ、私……ですか?」


長老

「ほかに誰がいる?」


アカネ

「私は、巫女じゃないですよ。

 ただの人間です」


ノウラ

「そうなの?」


長老

「ごまかすでない、私にはわかるよ

 強さ、優しさ、そしてこの感覚」


ヒロト

「……、アカネ姉さんは巫女の結晶をミスターKに奪われているんだ」


長老

「……!? なんと……」


しばらく沈黙が続いたが、その沈黙を破ったのは長老だった。


長老

「巫女の結晶が人の手によって奪われた今、非常に危険な状況だ。

 それがいかに大切なものか、おぬしはわかっているのか?」


アカネ

「……」


長老

「ユグドラシルの結界は巫女しかくぐることができない。

 だが、巫女の結晶を持っていれば、中に入ることができる」


ヒロト

「じゃあ、ミスターKがアカネ姉さんから巫女の結晶を奪った理由は……」


長老

「ユグドラシルの結界を抜けるためだろうな」


ノウラ

「じゃあ、今、ユグドラシルは?」


ヒロト

「ミスターKの私物になっている、ということか……

 だがそれがどんな結果を引き起こすんだ?」


エルフの男

「大変だ!」


居間に走り込んでくるエルフの男、汗まみれのその男は

緊急事態を知らせるためにここまで走ってきたらしい。


エルフの男

「えと、えと……飛空艇がきて、空が割れて……」


長老

「落ち着け、一つ一つ聞こう」


ノウラは水をエルフの男に渡すと、男は語り始めた。


エルフの男

「ホワイトガーディアンズとかいうやつらが

 巫女が来ていないかってたずねてきて、それから……」


アカネ

「それから……?」


エルフの男

「空が、紫色に染まってヒビが!」


ヒロト

「ホワイトガーディアンズ!?」


長老の家から外に出た俺たちを待っていたのは

ホワイトガーディアンズの鋼の猛獣、ロディ・ハイドランクだった。


ヒロト

「ロディ!」


ロディ

「よう、ヒロト。アカネさん」


ノウラ

「この男だれ?」


アカネ

「ホワイトガーディアンズの団長さんの、ロディさんです」


アカネ姉さんがノウラに紹介する。

空を見上げていた俺は、雲の色が白から紫にかわっていることに気付く。


ロディ

「話は飛空艇でもできる、とにかくお前らの力が必要だ

 ついてきてくれないか?」


いつも以上に険しい表情のロディ。

どうやら何か大変なことになっているようだ。


飛空艇に乗ることを同意すると、ノウラにハイランディアの里の森の外まで

案内してもらうことになった。


途中でダール博士にすれ違う。


ダール

「大変なことになってしまった」


ヒロト

「その、大変な事というのは?」


ロディ

「……」


ダール

「ユグドラシルの結界が突破されたらしい」


アカネ

「結界が、突破……?」


ロディ

「共和国の連中が、何らかの方法で結界を壊したらしい

 もしユグドラシルが破壊されるようなことがあれば……」


_この世界は魔物に埋め尽くされて滅亡する_


その話を聞いた俺たちは、

森の外に着陸している飛空艇に乗り込むと

共和国の首都まで向かった。



 第18話 緊急事態 終

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