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ユグドラシルストーリー  作者: 森のうさぎ
16/19

第16話 切り裂きジャック


家の壁にべったりと付着した血。目の前に転がるバラバラにされた銀髪の子供の死体。

あまりの衝撃的な光景に、俺もアカネ姉さんも絶句していた。



アカネ

「あ……ああぁ、あああああああああああ!!」


ヒロト

「……」


アカネ

「プリム、ちゃんじゃない、よね……違うよね……」


ヒロト

「いや、この死体は」


アカネ

「いや、嫌だよ!」


転がっている腕を握りしめながら、泣き崩れるアカネ姉さん。

俺は近くに置いてある絵日記を、アカネ姉さんに手渡した。



 @@@



『プリムの日記』



日記1日目


あたらしいパパとママができた。

あかねママとひろとパパ。

もうパパはいないし、かなしいけど

これからのことをかんがえたほうがいいってひろとパパがいうんだ。

なんだか、やさしくてあったかいママとパパ。

わたしはかなしいけど、でもうれしいな。



日記2日目


パパがわたしのためにえほんをかってきてくれた

ママのひざのうえがわたしのいまのとくとうせき

いつもえがおのママをみてると、かなしいきもちもすこしだけ

なくなったきがする。



日記3日目


パパとママとかいものにつれていってもらった

そこでパパとママがわたしのつくえをかってくれた。

すごくうれしかった

これでいっぱいえほんがよめる。



日記4日目


今日は字のかきかたをママからおそわった

少しずつだけど文字がかけるようになった

それにいっしょになわとびもしてくれた

ママがへたっぴなので私がママになわとびを教えてあげた

えっへん!



日記5日目


いつも私一人だけ違うベッドなのがちょっとさびしかったから

今日は思い切ってパパとママに川の字でねたいっておねがいしてみた

少しこまってたみたいだけど、一緒にねられた。

このままこんな日がつづけばいいのにな、嬉しいな

きっとあしたもこんな日がつづきますように。




……日記はここで終わっている。



 @@@



アカネ

「うあ、ああああ……あああ……」


日記を抱きしめて泣き崩れるアカネ姉さん。

よく見ると、テーブルの上にスペードのジャックのカードが置いてある。

その横に紙が貼られていて、昼の12時にファーストカルコスの裏通りに来いと書かれていた。


……これもマフィアの報復だろう。

マフィアに逆らった代償はあまりにも大きかった。

おそらく殺し屋か何かの仕業だろう。


ヒロト

「………」


アカネ

「こんなの、こんなのって……ないよ」


ヒロト

「……あぁ」


アカネ

「どうすれば、どうすればよかったの……私……」


ヒロト

「アカネ姉さん、これを」


そういって紙を見せる。


俺とアカネ姉さんは遺体を外の土の中に花を添えて埋めると

ナッシュの墓に俺は「世話になった」と告げ

プリムの墓に「守れなくて、そばにいてあげられなくてごめん」と

アカネ姉さんは謝罪していた。


もうこの街にはいられない。

だが、このままでは済ませるわけにはいかない。


俺たちはファーストカルコスの裏通りへ向かった。


そこで待っていたのはラジオで音楽を聴きながら踊る

ピエロの仮面をかぶった男だった。


ミスターKではなさそうだが……。


ジャック

「俺はジャックよろしくぅ」


アカネ

「……」


ジャック

「ようやく来たかぁ。時間としては、まぁ早いほうだな。

 お前らの思ってる通り、あのガキを殺したのは俺だ。

 あのガキ俺に脅されてもずーっと言いやがるんだ

 『パパとママが助けに来てくれるから怖くないもん~』ってなぁ」


アカネ姉さんから感じる強い殺気。俺は感情を抑えるのがやっとだ。


ジャック

「小娘とヤるのは初めてだった、楽しい体験だったぞー?

 なぁ、レイプされる女の叫び声って聞いたことあるかぁ?

 牛のような悲鳴だ、ブタじゃなく」


アカネ

「……」


アカネ姉さんは拳を握りしめて歯を食いしばり、その目からは涙を浮かべている。


ジャック

「バラバラにする前にあのガキなんて叫んだと思うー?

 『ママぁ助けてぇー!』だってさ

 ヒャハハ!」


その言葉の途中、アカネ姉さんは怒りをあらわにしてカタナで斬りかかっていた。


アカネ

「ぶっ殺してやる!!」


素早い動きでその一撃を回避するジャック。

ゲラゲラと笑い、そしてその場から逃げ出す。

アカネ姉さんが追いかけようとするが、その先には『何かがある』と察知した俺は

アカネ姉さんの体を後ろから抱きしめて止めた。


アカネ

「離せ!!」


ヒロト

「アカネ姉さん、落ち着いて! よくみて、あの先……」


一匹の猫が、ジャックの逃げた方向の地面を歩くと……

大量の爆薬が勢いよく爆発する。


ヒロト

「もしヤツを追っていたら、アカネ姉さんはあの爆発の中だ

 読まれてたんだ」


アカネ

「だからって……だからって、どうすればいいのよ……」


どうやら相手の方が一枚上手のようだ。

このままだと罠にハマってアカネ姉さんは殺されてしまうだろう。


アカネ

「……! ペンダントがない!」


アカネ姉さんが胸元を見ると、あの青く輝いていた

プリムからもらったペンダントがなくなっていた。

スられたか。


ジャック、抜け目のないやつだ。

ヴァイスフローラに変身するためのプリムの形見は奪われたようだ。


こうなったらやるしかない。


ヒロト

「アカネ姉さん、一度、家に戻ろう」


アカネ

「……」


俺はそのままアカネ姉さんを連れてナッシュの家に戻ることにした。

しかしそこで見たのは、炎と煙をあげて燃えるナッシュの家と

キャンピングカーだった。


しまった、次の手を読まれている。

慌ててキャンピングカーの前まで駆けつけるアカネ姉さん。

そしてそのあとを追う俺。


アカネ

「車が!」


ジャック

「よぉよぉ! 遅かったなぁ。

 これ、なんだと思う?」


そういってちらつかせたのは、プリムからもらった青いペンダントだった。


ヒロト

「キサマっ!」


アカネ

「許さない、許さないっ!」


刀を抜くアカネ姉さん。

剣を構える俺。


ジャック

「じゃーん!」


ジャックが叫ぶと、懐から鏡を取り出した。

そう、この街に来るときにあった_あのソウルイーターの鏡_だ。


その鏡に映し出されたアカネ姉さんが一瞬にして吸い込まれる。


ヒロト

「アカネ姉さん!」


ジャック

「ひっひひ! じゃあ、俺も今の生意気な女が

 どんな悲惨な死に方をするか見てくるよぉ!」


ヒロト

「待て!」


鏡の中に手を入れて、吸い込まれたアカネ姉さんを追いかけるジャック。

俺はその後を追うために鏡に近づいたが、その時だった。


周囲から漂う殺気と、地面の振動。

一歩ずつ近づいて来る……この振動はアーマーギアだ。


ラッセル

「ヒロトさん、すみませんね。

 今回はスイーパーズ全体に連絡が入りまして」


ヒロト

「ラッセル、お前係員だろ」


ラッセル

「ええ、でも今回は仕事で来ました。

 貴方たちを殺せという命令でね」


廃墟を踏みつぶして、茶色や灰色のアーマーギアが

こちらに近づいてくる。


もし鏡を割られたら、アカネ姉さんがこちらの世界に戻ってこれなくなる。

相手のアーマーギアは、数十体はいるだろう。


ヴィントカイザーで鏡を守りながら勝てるかどうか怪しい。


???

「ちょっと待ったぁ!」


唐突に敵のアーマーギアの足元を抜けて走ってくる人影。

青い髪に青緑の衣服をまとい、緑に輝く槍を背中に背負った少女が現れる。


ノウラ

「話はすべて聞かせてもらったっ!」


ヒロト

「お前はたしか、ノウラ」


ノウラ

「加勢させてもらうよ、いっとくけどアカネさんのためだからね!」


ヒロト

「そうか、だがお前が一人で来ても……」


言葉にしようとした瞬間、ノウラは緑の槍をかかげて叫んだ。


ノウラ

「エメラルダス!」


上空に魔法陣が現れ、その中から青緑のアーマーギアが召喚される。

膝をついて着地するそのアーマーギアの手には緑の槍が握られている。

ノウラはそのエメラルダスと呼ばれたアーマーギアのコアに吸い込まれていった。


少し驚いた俺だったが、この状況は好機だ。


ヒロト

「なるほど、そういうことか……。

 ヴィントカイザー!」


こちらも魔法陣からアーマーギアを呼び出す。

鏡を守りつつ、俺とノウラは戦闘の構えをとる。


砲弾を撃ってくるアーマーギアに対しては、俺が突風を起こし

軌道をそらす。

そして、エメラルダスが槍をかかげると、電流と火花が散り

周囲のアーマーギアに電流が流れ黒焦げになる。


ヴィントカイザー

「その力、いったいどこで?」


エメラルダス

「へっへー、ダールさんの発明だよ」


なるほどね、あの時の科学者が作ったアーマーギアか。

たしか次世代の機体と言っていたな。


俺は剣のイメージを念じると、空中に小さい剣が数十本現れ

周囲のアーマーギアに飛んでいく。


その攻撃を武器ではじく者もいれば、心臓を貫かれるものもいた。


ラッセル

「私は、あの鏡を回収させていただきますよ」


ラッセルが足元の鏡を奪おうとした時、エメラルダスの放つ雷が

ラッセルの全身を駆け巡った。


叫び声とともに、黒焦げになるラッセルは

その場でピクピクと動き、絶命した。


正面を向いた俺は、剣で斬りかかってくるアーマーギアの攻撃を

軽く回避しながら、脇腹を薙ぎ払った。

次に斧で頭を狙ってくるアーマーギア。

盾で受け流しながら、剣で切り上げて首を落とす。


緑の槍を振り回し、次々と周囲のアーマーギアを貫いていくエメラルダス。

かなりキレのある動きだ。


臆したアーマーギアたちが逃げ出す。

俺とノウラ。ヴィントカイザーとエメラルダスの手によって

俺たちを取り囲んでいたアーマーギアは殲滅できたみたいだ。


敵がいないのを確認した俺たちは変身を解く。

後はアカネ姉さんだけだ。



 @@@


__ここからアカネ視点となります


 @@@


鏡の中に吸い込まれた私が最初に見たのは

何の異常もないナッシュさんの家だった。


火事にもなっていなければ、車も燃えていない。


鏡の中?

それともここは夢の中?

現実?


ヒロト

「どうしたんだ、アカネ姉さん?」


アカネ

「え?」


ヒロト

「え? じゃないよ、ぼーっとして」


アカネ

「あ、いや、なんか嫌な夢を見てたみたい」


ヒロト

「どんな夢?」


アカネ

「……その、プリムちゃんたちが……」


プリム

「アカネママ!」


ヒロトに状況を説明しようとして、ふと後ろを振り返った私が見たのは

元気そうなプリムちゃんの姿だった。


アカネ

「ぷ、プリムちゃん!?」


プリム

「どうしたの、アカネママ?」


アカネ

「……う、うぅ……ううん、なんでも……なんでもないんだよ」


私の瞳から、涙がこぼれる。


プリム

「えー? 変なアカネママ」


ナッシュさんの家から、誰かが手を振っている。


ナッシュ

「あぁ、二人とも帰ってきたのか。

 食事ができてる、冷めないうちにおあがり」


アカネ

「ナッシュさん」


なんだ、さっきまでのは夢だったんだ。

嫌な夢だった、怖い夢だった。

私はなんであんな夢を見たんだろう。


アカネ

「今、行きますね」


ナッシュさんの家に上がると、テーブルがあり

そのテーブルの向こうに、巨大な黒い猛獣が口を大きく開けて待っている。

私は足を止める。


プリム

「アカネママ? どうしたの?」


振り返ると、ヒロトの姿もナッシュの姿もない。


アカネ

「魔物!?」


刀を抜いた私は、黒い猛獣に対して構えをとる。


プリム

「アカネママ、ご飯だよ?

 アカネママがご飯になるんだよ?」


アカネ

「あなた、誰!?」


プリム

「私は私だよアカネママ。

 そう、アカネママの所為で私、死んじゃったんだよ?」


そのプリムの胸には青いペンダントがついている。


アカネ

「……そうだ、私の所為で……」


プリム

「そうだよ、アカネママ。

 責任をとって」


アカネ

「私が、責任を……」


刀の構えをゆっくりととくと、私は脱力した状態で

プリムの手を握った。


プリム

「そうだよ、一緒に行こ? アカネママ」


アカネ

「そうだ……私が、死なせて……」


プリムの青いペンダントが光り輝いている。


「アカネママ、ダメだよ」


アカネ

「!?」


声が確かに聞こえた、プリムの首から下げられているペンダントから聞こえた。


プリム

「どうしたの、アカネママ?」


アカネ

「違う……」


プリム

「何が?」


私はプリムちゃんの姿をしたそいつから、ペンダントを奪い返して

その場から飛びのいた。


アカネ

「あなたはプリムちゃんじゃない」


刀を再び構える私。


プリム?

「ふひ、ふひひひひひひひっ。

 あと少しだったのに何故気づいたんだぁ?」


銀髪の少女プリムは姿を真っ黒く変え、そしてピエロの仮面の男に変身した。


ジャック

「なーんでバレたのかなぁ、催眠術かけてたから

 そのままソウルイーターの口へバクりっ! だったはずなのに」


アカネ

「よくも!!」


「アカネママ、憎んじゃダメ……」


声が聞こえる、どうやら私にだけ。

この声は、プリムちゃんの声。


アカネ

「でも、そんなこと……」


ジャック

「なぁにひとりでぶつくさ言ってやがる!

 お前を殺して、Kさんに報告したら

 俺は大金持ちにしてもらえるんだ」


アカネ

「……Kさん?」


思い当たる相手は一人しかいない。


アカネ

「まさか、ミスターK!?」


ジャック

「今回の依頼主さ、お前らを殺せば

 たんまりと金をくれるんでな。

 しばらく遊んで暮らせるほどの……ふひひっ」


汚く笑うジャック、金目当てのようだ。

金のために人を殺すクズ。


アカネ

「この場所……まさか、この街に来る途中にあった鏡も」


ジャック

「あー、あれ壊したのお前だったのか。

 ソウルイーターの育成中だったのに

 よくもやってくれたな!」


アカネ

「そうやって人間を食べさせて成長させてたのね」


私はジャックをにらみつける。


ジャック

「あぁ、そうだ。こいつもお前を食えば20人目達成ってわけ。

 そろそろ進化するんじゃないかなぁ」


アカネ

「……」


「アカネママ、落ち着いて。そして、あの名前を呼んで」


目を閉じる。

暗闇の中から青い光を感じる。


ジャック

「んん? なんだ、諦めたのかぁ?」


アカネ

「ヴァイス、フローラ」


私の後ろの壁のある場所。

空間を突き破って、ヴァイスフローラの腕が出てくる。

その手のひらに乗ると、私はヴァイスフローラと一体化した。


ヴァイスフローラ

「あなたには聞こえないのね、プリムちゃんの声が」


建物を壊して立ち上がる白と茜色のアーマーギア、ヴァイスフローラ。

天使の翼を広げる。


先ほどまで大人しく口を開けていた黒い猛獣が巨大化して

建物から出てくる。


ジャック

「ほら、ゲーン。大きな餌だよ」


魔物

「グルルルル」


ヴァイスフローラ

「私はあなたたちと戦う気はない、

 自滅すればいい」


私はそう言い放つと、両手に力を込めた。

集中する……。


すると、空間の裂け目ができる。


ジャック

「まさかお前、逃げるのか!?」


ヴァイスフローラ

「プリムちゃんは、私の心で生きてるから……

 あんたなんかに手をかける必要なんてない!」


空間の裂け目に入る私。

それにたいして追いかけてくるジャック。


「よかった、アカネママ……ありがとう、さようなら」


かすかに聞こえた最後の声、ペンダントから聞こえた最後の声だった。



 @@@


__ここからヒロトの視点に変わります


 @@@



鏡の中からアカネ姉さんの体がペンダントをつけたまま

ゆっくりと出てきた。

その手を握りしめる俺。


ヒロト

「アカネ姉さん! 無事だったか!」


アカネ

「ヒロト! それにノウラさんも」


ノウラ

「こっちのトラブルは片付いたよ、それより……」


その鏡の中から、ゆっくりとピエロの仮面をかぶった男が出てこようとしている。

ジャックだ。

ジャックの頭を思い切り踏みつけて、鏡の中に戻そうとするノウラ。


ノウラ

「お・ま・えは、帰ってくんな!」


ジャック

「お、おい……早く出してくれ! ゲーンに喰われちまう!」


ヒロト

「くたばれ」


ノウラ

「知るかぁ!」


ジャックの頭を踏みつけ続けるノウラ

するとジャックの頭が鏡の中に引きずり込まれて

中から叫び声が聞こえてきた。


ジャック

「ママぁ助けてーー!!」


それと同時に鏡を突き破って巨大な黒い影が姿を現した。


アカネ

「ノウラさん、離れて!」


ノウラ

「お……っと、なにこのバケモノ?」


鏡の中から20mはある黒い眼玉だらけのバケモノが現れる。

その姿は先ほどの獣ではなく球体だった。


ヒロト

「こいつは、あの時の」


アカネ

「ヒロト……乗り越えよう、二人で!」


ノウラ

「あーん、アカネさん。私も混ぜて!」


ノウラが甘えた声でアカネに語り掛けているが

そんな状況じゃない。


目玉の魔物は空中を浮遊し始めて

こちらを狙っている。


ヒロト

「ちっ……ヴィントカイザー!」


ノウラ

「エメラルダス!」


アカネ

「ヴァイス……フローラ!!」


俺たち三人はアーマーギアを魔法陣から召喚して同化する。

黒い球体、ソウルイーターの完全体から大量の刃物が触手のように生えている。

その刃物は、周囲の廃墟を破壊し始める。


エメラルダス

「雷撃っ!」


緑色の槍をソウルイーターに向けて電撃を放つノウラ。

効果はあまりないようだ。


刃物が飛んでくる、このままだとエメラルダスとヴァイスフローラに当たる。

瞬時に、俺が盾を構えて防ぎに入る。


ヴィントカイザー

「風よ……」


ヴィントカイザーの左腕の盾に風の魔法が付与され、盾の周りに旋風が起こる。

ソウルイーターの飛ばしてきた大量の刃物の攻撃を防ぐ。


エメラルダス

「サンキュー、ヒロト!」


ヴァイスフローラ

「大丈夫、落ち着いてやれば……」


何かをヴァイスフローラが詠唱し始めている。

そんな中、ソウルイーターに風の魔法を付与した剣で斬りかかる。


傷はつけたが、その傷は見る見るうちにふさがっていく。

打撃も電撃もダメか……。


ヴァイスフローラ

「世界樹ユグドラシルよ、その力を我ら弱き者へ今この瞬間だけ……」


詠唱が……終わる。


ヴァイスフローラ

「グラビティ・プレス!」


アカネ姉さんの声でヴァイスフローラが魔法の名前を叫ぶと

ソウルイーターの周囲に六芒星の魔法陣が発生し

地面に落下した。


ヴァイスフローラ

「今だよ、ヒロト!」


俺は瞬時に察した、この隙を逃す手はない!


下段に剣を構えて上段に切り上げ、そして再び下段に切り下げる。

そして最後に回転切りを放つ。


ヴィントカイザー

「スラッシュブレイカー!」


ヴァイスフローラ

「インパクト!」


重力魔法のかかったソウルイーターの球体に、さらに空間を切り裂く強力な一撃が入る。

まばゆい光と共に、切り裂いた空間へソウルイーターが吸い込まれていく。


その20mの巨体がすべて吸い込まれて、小規模な爆発を起こした。

周囲の廃墟が吹き飛ぶ。

砂煙の中、立っていたのはヴァイスフローラと、俺とエメラルダス。


エメラルダス

「なに……今の一撃……」


ヴィントカイザー

「アカネ姉さん、今の一撃は……」


ヴァイスフローラ

「私にもわからない、でも頭の中に聞こえてきた」


足元のソウルイーターの入っていた鏡は割れているが

さらにその上から踏みつける俺。


グシャリと音を立てて、地面ごとへこんだ。


ヴィントカイザー

「さて、これからどうするか……」


ヴァイスフローラ

「そうだね、帰る場所がもうないもんね」


エメラルダス

「なんなら、ウチにくる?」


親指を南のほうに向けてクイッと指さすエメラルダス。


ヴァイスフローラ

「ノウラさんの家ですか?」


エメラルダス

「うん、ハイランディアの里」


ヴィントカイザー

「そうだな、行く当てもない。

 アカネ姉さんもそれでいいか?」


ヴァイスフローラ

「うん」


エメラルダス

「えー、ヒロトも来んの?」


ヴィントカイザー

「いけないかよ?」


エメラルダス

「別にー……」


そして三体のアーマーギアはその体を元の姿に戻して

ハイランディアの里へ向かうのだった。




 第16話 切り裂きジャック 終

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