いつのまにか異世界転移~盲目の杖術師~
僕は今どこを彷徨っているのかはわからない。
白い杖を地面にあてた音を頼りに舗装されてない道を歩いている。
いつもの道とは違う道を延々と歩いている。
すこし前に、透き通るようなきれいな女の人の声を聴いてから、空気がガラッと変わっった。
いつもの散歩コースとは違う足の感覚、周りの音、肌に感じる空気の感触が今の僕にわかることだけ。
一寸先は闇とはよく言うと先人達の知恵を借りるとすると今まさに足に杖の先に何かが当たった。
杖からわかる感触、聞こえる息遣いからすると人であろうことはわかった。
「もし、こんなところで寝てしまっては風邪をひいてしまうぞ。」
声を掛けてみたけれど、一向に返事をしようとも、起きようともしない。
もしかしたら心筋梗塞、または事故で倒れているのかもしれない。
僕は急いで胸ポケットの中の携帯を探して、ポチポチとボタンを押して耳に当てるが、プープープーっと繋がらない。
こんな時に限って電波が悪いなんてあるのか!
と絶望してあたふたしていたところに声が聞こえた。
「だれか…助けて…」
そんな声を聴いてしまったら、なんとしてもこの人を助けなければと、急いで倒れている人を背負う格好でズルズルと歩みを進めた。
何分か歩いたところで人の気配がしたので安堵しながら声をかけた。
「もし、助けてくれ。倒れている人がいたので背負ってここまで来たのだが病院なり医者なりのところまで案内してくれないか?」
声を掛けたが返事はなかった。
現代の社会では他人は親切ではないとわかっていたが、ここまで困っている人に手を差し伸べないのはどうかしている。
怒りが心の中で渦巻いていくと、金属が擦れる音が聞こえた。
すると強烈な痛みを胸に感じた。
「くそ!こいつ胸になにか装備してやがる!背負っている美人のねーちゃんは高く売れるし、こいつの着ている物も高く売れる!さっさと始末してしまえ!」
と下卑た声が聞こえてきた。
胸ポケットの携帯は壊れてしまったのだろう。
それよりも、こんなに困っている人に対して刃物を振るうなんて犯罪者集団なのだろう。
僕は背負っている人を丁寧におろし、持っている白い杖を正眼に構えた。
「そんな細い棒きれで俺たちに勝てると思っているのか!」
と右から何かを振りかぶる音がしたので、右を向いてその音のするほうに一歩踏み出し杖を振るう。
さらに後ろからも音がしたのでその対処もする。
様々なところから音が聞こえては対処する。
すると音は鳴りやみ、倒れている人の息遣いだけが聞こえた。
「何とかなったけど、これからどうすれば…」
しばらく歩くとまた人の気配がした。
「もし、助けてください。倒れている人がいたのでここまで背負ってきたのだが病院なり医者なりのところまで案内してください。」
と言おうとしたら、周りからはやかましく声が聴こえた。
「姫様が…」「助かってよかった…」「早くお連れしろ…」とか聖徳太子でも聞き分けられないような人数のさまざまな安堵とも怒りとも憤りとかの声を浴びせられながら、背負っている人を注視する目線の気配を感じた。
「これはいったい…」
というやいなや背負っている人を無理やりはがされ、どこかに連れて行ってしまった。
別段悪い感情を感じたわけでもないので、そのままあれよあれよとなすがままにしていたら固い床のところに僕は投げ込まれてしまった。
一体ここはどこなんだろうと、目の見えない僕には到底理解できなかった。