最初の授業
本日二回目の更新です
ラグナは依頼された通り、さっそく授業に顔を出すべく学院に顔を出す。
最初は全教師を集めた会議が職員室でおこなわれる。
「みんな、今日から新しく人が来たわよ」
レトがそう説明した。
うさんくさそうな視線をラグナは感じる。
金髪に青い目と平凡な容姿で、着ているローブもありふれた普及品なのも一因だろう。
「男性?」
「この学院に男性が?」
批判めいた声にクラリスの声が重なる。
「あの方、『最強』ラグナ・ユニバース様なのよ」
「えっ!? ラグナ様!?」
効果は絶大だった。
懐疑的、あるいは否定的だった視線がまず驚愕し、次に好意的なものに変わる。
『最強』ラグナ・ユニバースを知らない魔法使いはこの世に存在しない。
「本物かしら?」
「本物でしょう。学院長は旧知の仲だから」
「なるほど」
教師たちはすばやく会話をかわす。
レトが何も言わないのは、彼女たちの間で情報と認識を交換させるためだろう。
「初めての男性教師だからとまどったかもしれないけど、理由は説明しなくてもかまわないよね?」
「そりゃあ……『最強』ラグナ様なら、誰も反対なんてしませんよ」
誰かが頬を上気させた顔で言う。
「むしろよく獲得できましたね」
「ラグナ様がその気になれば、誰にも止められないわよ」
『最強』ラグナ・ユニバース。
またの名は『頂上戦力』。
「レト学院長も連邦が誇る極大戦力だから、来てもらいやすかったのかも」
と推測する教師もいた。
「ラグナにはまず三年生を見てもらう。それから二年、一年といくつもりよ」
レトは教職員たちの会話をあえて止めず、連絡事項の伝達をおこなう。
「三年からですか?」
「落ちこぼれちゃった子の救済がメインよ。抜きんでている子もいずれはね」
とレトが答える。
「その子たちはラグナ様の指導を受けられるわけか」
「何の因果か、難しい子たちが何人かいるわね」
「ラグナ様の指導を受けられるなんてちょっとうらやましいかも」
「分かるわ」
教職員たちはいっせいに期待のこもったまなざしをラグナに向けた。
彼女たちも現役の魔法使いたちである。
『最強』ラグナ・ユニバースの指導を受けたいという、個人的な欲望がないと言えばうそになってしまう。
「あなたたちの指導はいずれね。ラグナに無理は言えないし」
レトは牽制する。
彼女は連邦の極大戦力で権限は大きいが、ラグナをどうこうできるはずもない。
友情を期待できるかもしれないが、それだけだった。
「承知しております」
教職員たちはひとまず引き下がる。
公私の区別がつかない愚か者はいないようだ。
(すばらしいことだ)
とラグナは思う。
自分にも他人にも厳しいレトの選抜に耐えただけのことはあるかもしれない。
彼は内心そう評価した。
「ではどこから行く?」
ラグナがレトにたずねる。
「そうね。まずは三年六組からお願いしようかしら。最初の魔法の実技授業があるから」
「私のクラスですね」
と一人の女性教師が言った。
「ええ。案内と説明をお願いね、セイラ」
レトがその女性に告げる。
「はい、学院長」
セイラと呼ばれたのはオレンジ色の髪の、目元が優しい女性だ。
白いシャツに青いパンツスタイルで、女性らしい豊かなふくらみが目立つ。
「よろしくお願いいたします、ラグナ様」
「こちらこそ」
柔和な笑みを浮かべて礼をするセイラに対して、ラグナはぶっきらぼうに答える。
彼の対人関係スキルはそこまで高くないと分かる一幕だった。
それでもみなはセイラをうらやましそうに見ている。
「さあ、授業がはじまるわよ」
しかし、レトが手を叩けばすぐに自分の仕事に戻った。
「周囲に置いていかれている子がいるということだが?」
ラグナはセイラに話しかける。
「はい。アポロニアという生徒と、シギュンという生徒です」
「ふむ。どういう感じなのだ?」
ラグナの問いにセイラは恐縮しながら応じた。
「申し訳ございません。そろそろ移動時間でして」
「それは失礼した。歩きながらでいいから教えてほしい」
ラグナが謝ったことにみなが安堵する。
「かしこまりました」
セイラとラグナは肩を並べて歩き出す。
「アポロニアは通常六属性の適性を持っておりません。いわゆる無属性向きとなるのでしょうが、何が得意なのかまだ分かっておりません」
セイラは悲しそうに話した。
通常六属性は光、闇、風、火、土、水である。
これらに属さないものはすべて無属性という。
「無属性の適性をさがすのは骨だからな。三年かかってもやむを得ないだろう」
ラグナはそう言ってセイラを擁護する。
「ラハムという生徒は?」
「じつはその……」
セイラは少し言いよどむ。
「特異体質の持ち主なのです」
「どんな体質なんだ?」
ラグナは特に驚かない。
彼のような立場にしてみれば、特異体質持ちくらい何度も見てきた存在だ。
「『腐蝕』と我々は名付けました。自分の意思では制御不能らしく、どうすればいいのか私たちでは困難でして」
セイラの声は小さくなる。
自分たちの無力さを恥じているようだ。
「その分、通常の魔法は使えないのだろうな」
「はい」
セイラはうなずく。
特異体質持ちにはよくあることだ。




