僕と僕
なんてことない。
なんにもない。
平凡って、どこにありますか?
そんな、僕(女)の、人生の一部のお話。
・
・
・
最初の最初
僕は、とても平凡な漁師町で生まれた。
母がいて、父がいて、兄弟がいて、祖父がいて
一見、なんてことのない、平凡そうな。温かそうな。
なんてことない家族
そんな、僕の家庭内環境は、一人の悪魔に犯されていた。
前置きとして、現在のぼくについて、少し話そう。
僕には、小学六年生までの記憶が、ほとんど無いのだ。
ないと話すには、少し違う気もするのだが、僕は、ほとんど覚えていない。
医者が言うには、記憶障害。心因性記憶障害と言うのだそうだ。
なので、ここから話す事は、母や兄弟。ほんの少しの僕の記憶を寄せ集めた話である。
・
・
話を戻そう。
僕の、僕たち家族を犯していた、悪魔
悪魔なんて、まだ可愛いかもしれない
その、悪魔の名前は、父だった。
表向きは、優しく、子煩悩。愛妻家で、人思いの頼れる人。
だが、内側の父は、そんないい人では、なかった。
「なぜ産まれてきた?」
「なぜ生きている」
「お前はなんにもできないな。約立たず。」
父は、僕にそう言っていた事は、覚えている。
僕が笑わないと、母も、兄弟も殴られる。
僕が楽しそうな話をしないと、母も兄弟も罵声を浴びせられる。
僕が皆を守らないと、楽しい家庭ではいられない。
笑わないと。泣いちゃダメだ。
恐怖を見せてはいけない。感情を出してはいけない。
逆鱗に触れてはいけない。
何故なら、僕の行動一つで、家族が家族ではなくなるから。
一番覚えているのは、父の不敵な笑みだ。
小学中学年の頃だろうか
犬の散歩に父と出かけた時、父に階段から突き落とされた。
骨が軋む。痛い。息ができない。涙が止まらない、苦しい、辛い・・・痛い・・・痛いよ・・・
泣いてる僕を見て、父は言った。
「なんだ。生きてるのか。死んでないのか。じゃあ、大丈夫だな。」
父はそう言って、僕を取り残してどこかへ行ってしまった。
僕を助けてくれたのは、母でも、兄弟でもなく。
通りすがりの人だった。
そして、僕は悟った。僕は、家族の付属なのだと。
僕は、望まれて産まれてきたわけではないのだと。
僕は、兄弟と母を守るために産まれた、ただの付属品で、僕の役目は、家族を守る。ただそれだけなのだと。
階段から突き落とされた後、警察の調べで、父が述べたのは、
"気がついたら居なくなっていた。心配して探し回っても見つからなかったんです・・・多分、滑って階段から落ちたのでしょう・・・本当に、可哀想で・・・"
事実は小説よりも奇なり。
まさに、この事だろう。
皆は、幼い僕の話より、父の話を信じた。
そして、僕は、感情の一部を欠落してしまった。
・
・
・
友「この間ね!お母さんとお父さんとディズニーランドに行ったんだ!」
友「この間、お父さんに怒られたから、反抗したら怒られちゃったー。本当にうざいよね」
僕の素直な反応は、"羨ましい"これだけだった。
この子達は、親に殴られても平気なんだ。
それなのに、僕は、殴られた"くらいで"泣いている弱い、生きていても価値のない人間なんだ・・・。
この時の僕は、皆の家庭でも、僕と同じ事をされていると、思っていた。
それなのに僕は・・・。
「100点も取れねぇのかよ。お前本当に何も出来ないな。なんで、生まれてきたんだよ。」
父が言う。
「僕なりに、勉強したんですけど・・・ごめんなさい。次は、100点をとりますね。」
僕は、また、失敗をしてしまった。
100点を取れなかった。たった一点を間違えてしまった。怒られても、殴られても仕方ない。
「なんで飯が食えねぇんだよ!!!」
押し入れに引きずられる。
ああ、僕はまた、失敗した。お野菜を食べられなかった・・・。また、暗闇で過ごすのか。今回は3日で終わるといいなあ。
「おじいちゃんの世話もできねぇのかよ!!なんのためにお前は居んだよ!!」
また、勘に触ってしまった。また、僕のせいで、誰かが傷つくのか・・・いっそ、死んでしまいたい・・・。
怯える母と、