表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様になりたかった  作者: ラフレシア
3/3

2.死枯木の『死神』

 ────アザレア。


 境界線防衛部隊の人間で、躑躅(つつじ)色を冠するその名を知らない者はいない。

 どんな戦闘でも圧倒的な戦果を挙げる死神。

 アザレアの名の通り、美しい躑躅色のボディースーツを着ている。男なのにも関わらず、桃色にも近い赤い色がよく似合っている。

「アザレア⋯!」

「腕が振るわなくなったのも頷けるな、死神のアザレアさん」

 つか、と紅が近寄る。


「だって、腕が自分のモノじゃないもんな」


「⋯そうだな」

 アザレアが無愛想に返す。

 新宿に配属されていた時に、右腕を切り落とされているのだ。

 アザレアは、その天才的な銃撃のセンスから『死神』という二つ名が付けられていた。一度狙った獲物は外さず、高所から飛び降りながらの空中戦もお手の物、誰もがその才能を欲していた。

 しかし、ボディースーツの技術から、失った右腕を回復させることは出来なかった。義手でどうにか凌いでいるが、その能力はすっかり落ちていた。

「まぁ、よろしくお願いします。私は隊長代理のカーマイン」

「新宿から異動のアザレアだ」

「私は高校二年。ウチの年齢順でいくと、大学二年のアイボリーと一年のウィスタリア。高校三年のアンバーとジェイド、二年のサルファー、一年のエクル。それから最年少オペレーターの中学二年のチェリー」

「⋯覚えておく」

 アザレアが無愛想に呟いた。

 チェリーは相変わらずハイエナの目で情報パネルを見つめている。

 紅は境界線の前に立つ。

 ここから先は、異邦人の楽園と化してしまった人類の土地である。

 必ず取り戻さなくてはならない。

 紅は誓った。

 なぜなら、ここは、紅の生まれ故郷だからだ。以前集落があったのは、この境界線の向こう側、つまり異邦人の楽園と化した土地なのだ。


「まもなく、死枯木境界線解放します」


 チェリーが情報パネルを見つめる。

 紅は銃を構えた。

 各々が、境界線の前に立つ。


「オペレートシステム、起動します」


『オペレートシステム起動』


『死枯木境界線解放まで十秒』


 金属が絡み合う音が響く。

 アザレアが、銃を握る。

 オペレートシステムが秒数をコールする。

 チェリーが情報パネルを素早く操作しながら、死枯木境界線解放までの十秒の内に、境界線の先の機械の起動や視覚情報共有を済ませる。

「大丈夫、いつでも解放出来る」

 ここまでの間、たった数秒である。

 チェリーは、色んな意味でヤバイバケモノだ。これが中学二年とは思えない。


『五秒』


『四』


『三』


『二』


『一』


『死枯木境界線解放、戦闘開始』


「⋯行ってくる」

「了解、こっちは任せて」

 紅とチェリーは、目も合わせずに息の合った受け答えをした。


 境界線の向こう側は、異邦人の溜まり場だ。

 紅は銃で一掃する。

 アザレアの戦闘スタイルが気になるが、取り敢えずそれは置いておく。

「カーマイン、担当地区、殲滅完了」

 紅とは真逆の地区で、異常なまでの銃の狙撃音が響き渡っている。異邦人が多すぎるのだろうか、その地区担当の視覚情報を共有する。

 それは、アザレアの地区だった。

 双剣を自由自在に操り、周りに潜む異邦人を容赦なく殲滅していく。


 まるで『死神』だ。


「これじゃあ、腕が振るわなくなったって言えねぇ⋯レベルが私達とは格段に違う⋯」

 紅は見つめる。

 アザレアは、芸術のように双剣を使っている。


『背後より異邦人確認、殲滅せよ』


 紅も銃を構える。

 背後から、数体の異邦人が確認された。

 遠距離攻撃を得意としないタイプの異邦人だ、近距離戦に持ち込むのは危険である。

 紅は一体に撃ち込む。

 別地区では、近距離戦を得意技とする双剣のアンバーとジェイドが戦っている。素早い動きと斬り付けは、彼らの持ち味だ。

「私に当たって残念」

 遠距離攻撃が得意な紅にとって、遠距離攻撃が苦手な敵は最高だ。

 物陰に隠れて、素早く撃つ。

 異邦人がこちらに近づく。

 紅は静かに後退し、別の物陰に隠れる。その間、チェリーに視覚情報を背後にまで拡大してもらう。背後からの異邦人に対応するのは、今は面倒だ。

「他地区の殲滅が終わってる」

「援軍はいらない」

「分かってる」

 息の合ったチェリーと、素早く会話する。

 無駄に手出しされるくらいなら、一人でカタを付ける方が楽だ。


「背後から来てる」


 チェリーから伝達が来る。

「挟み撃ちなんて⋯!」

「援軍要請、近隣に配置されている隊員は、すぐにカーマインの地区へ援軍に向かって」

 しかしこの距離だ。

 もし間に合ったとしても、この距離で遠距離攻撃など受ければ、紅諸共黄泉行きだ。


「だから女は嫌いだ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ