1/3
プロローグ
ががががが────
馬鹿になり始めた一両編成の電車に乗るのは、女子高生の轟鬼紅。田舎にしては洒落た白いセーラー服で登下校をしている。
そして電車はゆっくりと志楽へと向かう。
紅は窓を開けた。
田園風景だけが流れていく。ここのあたりは、大地主の土地だ。
志楽に近づく。
紅は竹刀を仕舞うには少し大きい肩掛けの袋を開く。紫の布に、金色の紐で閉じられているそれは、正しく竹刀の袋にしか思えないのだが。
そこから現れるのは、黒く光る銃身。
『位置情報確認中』
紅が左耳に付けているヘッドホン型の通信機器が、志楽に近づいたため起動する。
紅は窓に脚を掛けた。
風で水色のスカーフが旗めく。
『位置情報確認完了』
『死枯木境界線まで五メートル』
『四メートル』
『三メートル』
『二メートル』
『一メートル』
『死枯木境界線現着、境界線解放』